ヘリオロスVSドラゴン
ミュラの頬にすり寄っている僕に、
「そうか、シルフィーは不死だものね、スライムもドラゴンも長寿なんだっけ……エリカは……人間だから……この中では一番早く別れが来る……のだよね……」
そこに居た皆は考え込む。
「そんな事考えて来なかった……違う……よね……考えたくなかったんだ……でも……いずれ……その時は来る」
スライムは言う、
「人間の命は儚い、いついかなる時も、その事実は永遠に変わりはしない……だから、美しいんだ。エリカは眩しい位にその魂を輝かせている。皆でエリカを守り助けてやろう、それが出逢ってしまった私達の宿命だ」
皆で頷く。
エリカが帰って来た。
「ヘリオロスは随分と近くまで来ているみたい……? どうしたの……そんな優しい眼差しを向けないで、私はいたって元気だし、何も問題ないわよ?」
「そうだよね、エリカは凄い冒険者なんだから!」
ちょっとわざとらしかったかな?
「さあ!行くわよ!ヘリオロスを討伐する」
宿を皆で出る。
雪は止んでいるがかなり積もっている。これでは雪に足をとられて前に進めない。エリカはグリフォンを呼ぶ、ミュラーはフォレストウルフを召喚する。エリカはアリーナとグリフォンに乗る。ミュラーはフォレストウルフに乗りヘリオロスのいる場所を目指す。
「居たわ! 見つけた。シルフィー、ミュラーに伝えて。ここまで来れば誰にも見られないからアリーナに相手をしてもらう」
「解った」
僕はその事をミュラーに伝える。
「エリカこれを預かって」
「見ていてエリカ」
とブレスレットを渡す。
「貴方の力を見せてもらうわ、アリーナ」
にっこりと笑顔をエリカに向けた後、アリーナはドラゴンへと姿を変える。
ヘリオロスはドラゴンのオーラに一瞬たじろぐが、氷のブレスで攻撃してくる。アリーナはそれをかわす。
ヘリオロスは、体当たりをする様にアリーナに向って突進してくる。アリーナはヘリオロスに炎を吐く、が氷のブレスで届かない。次にヘリオロスは前足の鋭い爪で攻撃を仕掛けて来た。ドラゴンのアリーナの爪とぶつかり力比べになっている。すると、ヘリオロスの尻尾がドラゴンのアリーナを攻撃する!
バシッとその尻尾を掴むエリカ、そして、その尻尾を切り落とす。
「アリーナ! そいつを焼き払って!」
アリーナは答えるように炎を吐く、先程より威力のある炎だ。ヘリオロスは灰になった。
「よくやったわ、アリーナ! 貴方炎を吐く事が出来るのね。ドラゴンは退化して炎は吐けないと聞いていたのだけど使えるじゃない!」
「炎なんか吐かなくても力で相手を押さえる事が出来るもの、でも……私も初めて炎を吐いたわ……喉が変……」
と自分の喉を摩りながら言う。
「もう人間に戻ってもいいのだけれど……そのままじゃあマズイわね……はい! コート!」
「ありがとう! うーーん! 温かい!」
と人間に戻ってコートを羽織る。薄着にコートは寒いよね。そういえばドラゴンの街に行った時の服装じゃなかったなあ?
「ねえアリーナ、ドラゴンの街に行った時の服装じゃなかったけど、いつもはどうしているの?」
「あれはドラゴンのオーラで作った服よ。皆同じだったでしょう? あれしかないのよ、ダサいでしょう? だから普段は人間と同じ服を着ているの。だって沢山あってオシャレ出来るもの。その方が楽しいじゃない」
成る程‥‥‥
「本当に温かいのねえ! ダイアウルフの毛皮のコート、最高だわあ! 高級品なのも納得よね」
嬉しそうに話すアリーナに
「そのうちダイアウルフもやって来るから楽しみね、今日は帰ってギルドに報告ね」
と、ヘリオロスの尻尾を掴んでいるエリカが言う……かなり大きいよね……その尻尾……エリカより大きいよ…‥。
グリフォンはそれを銜えて飛ぶ、街へと帰る。
ギルドの受付のお姉さんに報告して鑑定してもらう。
「これは、確かにヘリオロスの尻尾ですね、驚きました……これは、エリカ様が?」
「そうね、切り落としたのは私だけど、仲間達が助けてくれたわ」
「僕は見ていただけだけどね……」
とミュラーは小さく呟く。そして笑顔でエリカに言う
「エリカってミノタウロスの時もそうだったけど、力持ちだよね」
そこで、アリーナがその尻尾を持ち上げようとするが……持てない!
「エリカ‥‥‥貴方本当に人間?」
「失礼ね、正真正銘人間の女性よ」
アリーナ……少しはエリカの凄さを解って来たかな?
 




