冬のモンスター
街へ皆と出かける。アリーナはミュラーと腕を組む、当然それでも街の女性達の視線はミュラー
へ集まる……わざと流し目を送る女性もいる。そんな視線を気にしないミュラー……慣れたの……かな……? 違うな、天然ってやつだ。一緒にいるアリーナは面白くないみたいだ。
一緒にお店を回って色々買う。エリカもアリーナも嬉しそうに服を選んでいる。エリカの楽しそうに服を選んでいる姿に心が温かくなる……だっていつも、戦闘用の服しか着ないエリカが……普通の服を買っているんだ。それは、本当に嬉しいよ。アリーナが率先してエリカの服選びをやっている。
「エリカの黒い髪に服は何でも似合うのね!」
ここは既成の服も沢山売っている、ミュラーの服もアリーナが選んでいる。おお流石だ、ミュラーかっこいいよ!
「うふっミュラーって何でも似合うのね……腕や足が長いから、何を着ても素敵」
「アリーナ近い近い……」
アリーナがミュラーの腕をガッチリと捕まえて引き寄せる。
宿に戻り買った物を整理していく。
「こんな所かしら? そうだわ……はい! アリーナ」
とエリカのダイアウルフのコートを渡す。
「着てみて」
渡されたコートを着る。
「わあー! 温かい! それにこの手触り……ふかふかねえ」
「これは一番柔らかい毛の部分を使って作っているのよ」
アリーナは満足そうだが、エリカはその姿を見て、
「アリーナにはもう少し長いほうがいいわね、私の丈だと足が全部出てしまうから」
「えっと……これ位でも問題ないわよ?」
エリカは考える。
「そうねえ、今回は戦闘用と普段着用と両方作りましょう。私は戦闘用しか持っていなかったから短いの、足のブーツの内側にはダイアウルフの短い毛を張ってあるから温かいのよ」
「凄いわね、それなら雪の中でも平気ね」
と女子トークを聞いていると仲間の妖精がやって来て僕を呼ぶ。
「僕ちょっと妖精達に合って来るよ」
仲間のシルフィー達に案内された、そこには他の妖精も居た。
どうやら『ムーリオッシュ』『ヒドン』この妖精等が人間達に悪さをしようとしているらしい、悪戯ならまだしも命を脅かす様なものは決して見逃してはいけないしさせてはいけない。これらも妖精達は人間を崖から落としたり、雪崩を起こし生き埋めにしてしまう……。
もうすぐ雪が降り積もるだろう、白の貴婦人やホレも心配してくれている。どうしたらいいか相談していた、そこにセルヴァンも加わり対策を考える。
段々と寒さも増してきた、雪も降って来るだろう。いつもの様に稽古を終えたエリカ達はギルドへ入る。依頼の内容を見て難しい顔をする。『ヘリオロス』討伐依頼‥‥‥。
エリカは受付に確認する
「ヘリオロスはまだ、来ていないわよね、私も聞いた事はあるけど遭遇した事はない……本当にこちらに向かっているの?」
「はい、目撃情報も入っています、中には被害に遭った者もいるとか……」
「今回の冬のモンスターは手応えのありそうな相手が来るのね、楽しみだわ」
エリカは嬉しそうに受付のお姉さんに言う。お姉さんもエリカには期待しているのだろう、そんな顔をしている。まあ、その期待にエリカは裏切らない働きをすると思うよ。
モンスターか……妖精の方も何とかしないと……妖精の仲間達と協力して人間達を守ろう。
雪がちらつき始めた頃、街の様子も冬に備えて行く。
「もうすぐだね、雪が積もって冬の妖精達が遊びに来るよ」
そうエリカ達に言って僕は嬉しくて街の空を飛んでいた。トンステールもベルシュタも雪を降らせると言っている、そうかあ……これから雪が積もるなあ。
【ホレ】家の掃除を手伝ってくれる娘に褒美を与えたりする。昼間は白の貴婦人や森の女神や狩猟の女神に姿を変えて太陽の光の中で水浴びをしたり、髪をとかす。糸をつむいだり生まれたばかりの赤ん坊をあやす事もある。
【白の貴婦人・婦人】雪に覆われたような白いドレスを着てヴェールを風になびかせて滑るように歩く。踊ったり遊んだり、また、小石や小枝を金に変え人間に与える者もいる。道に迷った人を正しい道へと導き、危険を知らせてくれる。




