幸せとは
僕はドラゴンと話した後、エリカ達の所に帰る為飛ぼうとした……その時、アリーナをお嬢と呼んでいた男性に呼び止められる。
「シルフィーよ……お嬢を頼んだ……」
「大丈夫だよ。ティムしたミュラーはいい奴だし、一緒にいる冒険者のエリカなんてもっと凄いんだよ、ドラゴンの力なんて必要ない位、だから、信じてよ僕等を」
「……信じるよ」
今にも泣きそうな顔の男性に手を振る。
「任せて! そうだ! もうすぐ冬が来るよ。ベルシュタが言っていたから雪が降るのも早いかも知れない、準備をした方がいい」
「そうか‥‥‥」
名残惜しそうな男性を置いて僕達は帰る仲間が待っているあの場所へ。アリーナ、君も沢山愛されているんだね。
「お帰りシルフィー? アリーナは一緒じゃないの?」
「またおの店に行って来るってそのまま行っちゃった。終わったらここに来るって言っていたよ」
「そう、どうだった? ドラゴンの街は、その顔だと楽しかったみたいね」
「うん! 本当にあの本に書いてあった通り変わった雰囲気のある街だったよ。そこでね……」
と、その街で古龍と話した事、ギルマスを知っている事……そして……僕の事も……話した。
エリカは何も言わずに優しく笑顔で聞いてくれた。ミュラーはグッスリ眠っているようだ隣の部屋の灯は消えていた。慣れてきたといってもここは高地だ普通の人間ならフラフラになっている。
僕は気になっていた事を話す。
「エリカ。君は今、幸せ?」
と聞いてみた。
「だって、人間は伴侶を見つけて家庭を持つのが幸せだと思っていたから……」
「シルフィー……貴方は私を1人の女性として見てくれているのね……」
僕の顔を覗き込み
「私は今とても幸せよ、そんな悲しいそうな顔をしないで……貴方達と出逢えて良かったと思っているのよ……ずっと私は1人で生きて行くのだと思っていたから……それが、今では大切な仲間がこんなにも出来て、こんなにも心が満たされている。妖精の事だってシルフィーがいるから私達はその事を知る事が出来ているのよ。これからも教えてね」
僕は大きくなってエリカを抱きしめる。
「シルフィー?」
僕はエリカにそっと言う
「良く頑張って来たね……エリカ……君の努力は誰もが真似出来るものではない、それは良く知っているよ」
……僕はエリカを抱きしめたまま
「子供の時に勝手にこの世界に連れて来られて……本来なら、この世界を憎んで当たり前なのに……エリカはこの世界を愛してくれている‥‥‥僕に出来る事はエリカの傍に居てあげる位しか出来ない。だから……」
「シルフィー……その言葉だけで充分よ……シルフィーって太陽の匂いがするのね知らなかった。いい匂いだわ……気持ちが落ち着く……もう少しこのままで‥‥‥もう少しだけ……」
僕は翼を広げてエリカを包む。
夜は更けて行く。アリーナは夜遅く宿に帰って来たと思ったら、直ぐベッドに寝てしまった。
♢♢♢
朝空気は冷たくなって来ていた。
「寒くなって来たね」
ミュラーは僕達の部屋にやって来て、窓を開けて言う。吐く息は白くなる。
「ホレが白の貴婦人を連れて来ているよ」
僕はホレ達に手を振る、スライムがミュラーに抱えられている。アリーナは……まだ寝ている。アリーナあ……ミュラーが部屋に来ているよお……見られているよお……。
「こうやっていると温かいんだスライム、気持ちいいよ」
「魔力を使って温度を上げているからな」
そうなんだ。それってミュラーの為だよね。優しいなスライムさん!
「今日は稽古は休みにしましょう。冬の準備をしましょうか! 私は簡単な生活魔法は使えるけど部屋を暖かくする位しか出来ないから、冬用の服を買いに行きましょう」
服を買う……に反応してアリーナが目を覚ます。
「……ふく……あっ! ミュラー!」
やっと気づいた。
「やだ! 教えてよ! シルフィー……恥ずかしい……」
布団の中に潜ってしまった。それを見たミュラーは
「僕も着替えてくるよ。稽古がないなら普段着でいいよね」
好青年は行動もイケメンです。
 




