赤の古龍
ふぉっふぉっと笑う、じじ様と言われたドラゴンの話と、ギルマスの言葉が被る……。
「そういえば、ギルマスも二千年生きているって言っていたっけ?」
「ほう、あのエルフの小僧もまだしぶとく生きておるのか」
少し嬉しそう……って思ってしまった。なので、
「ギルマスを知っているの?」
と聞いてみた。
「まあな、宿敵のようなものだったよ。あの当時は最強のエルフとか呼ばれていたが、今はギルドマスターをしているのだったな」
「そうなんだ…‥そのギルマスにも言われたんだ。……変わった魂を持っているって」
このドラゴンなら……解るのかな? 僕の知りたい事が……
「シルフィーよ、お主はそれを知りたいと望むのか?」
ぬっと顔を近づけて聞いてきた。
「知りたいと思う……けど……ギルマスはまだその時ではないと言っていた……僕は……いずれ選択をしなくてはならないとも……」
ドラゴンはふうーっと大きな息を吐く、僕はきっと情けない顔をしていたのだろう……僕はドラゴンの目を見る。
「そうさなあ……シルフも実体を持つ事が出来る……という事を教えてやろうかの、知らなんだろう?」
「うん……でも僕は実体を持っていないよ?」
「だから君は特別なんだよ、今まで実体を持ったシルフがいなかった訳ではないが……何せ四大精霊のひとつだからな、今まで実体を持った者に私は逢った事はない」
「上位精霊とは違うの? 僕等の上位にはジンが居る、地上には来ないけれど……」
「妖精・精霊とは地上と天界の間にあるものだ、上位精霊もある場所にいる、それは天界に近い場所とされているが、私も逢った事はないのではっきりとは解らん。だがな、人間に一番近い存在が君等妖精なのだよ」
「エルフの様に実体を持つのも良いだろう、だが、実体を持てば感情、感覚を持つ事になる、今お主は身体が傷つく痛みを知らない、病というものからも遠いだろう」
‥‥‥‥‥‥。
「何かを得るには何かを捨てなければならない……という事だよ」
……選択……確かに今僕は怪我はしない、病気にもならない……それは、初めに僕が選択をした、丈夫な身体が欲しいと、そう願った……
「実体を持ったシルフと人間の間に生まれたものを“シルフィード”と呼ぶ、とも言われている……が私も詳しくはよく知らないのだよ、もしかしたらお主はそのシルフィードかも知れない、その魂がどういうものなのかは、オベロンしか知らないだろう」
「……シルフィードは沢山いるよ……僕と同じ姿をしている……」
そこまで言って気づく……僕は人間と触れ合える……姿もずっと見せていられる‥‥‥。
オベロンは言っていた。
(私達にとっても君は特別なんだ……)
何となく今まであった胸のつかえが取れた気がした。そうか……その特別や選択は決してこの世界に居られなくなるといったものでは無いのだ……。
「ありがとう……教えてくれて……」
僕はその赤黒くなった鱗に手を置く。僕はその時泣いていたのだと思う、古龍は何も言わず僅かに頷いた気がした。
それから暫くそのドラゴンと話した、ギルマスとはよく戦ったと言っていた。決着は着いていない、と言う。そういう事にしておこう……
「久しぶりに良く話した楽しかったぞ」
満足そうに言う。
「僕も楽しかったです!」
「‥‥‥アリーナを宜しく頼むよ」
「僕は妖精ですよ……その時が来たら僕はアリーナの傍にいる。だから、一緒にここに来ますよ」
そう言ってアリーナが待つ外に出た。僕達はエリカ達が居る街に帰る。
 




