ドラゴンの街
カストルかあ……シャウラの国だよね。元気にしているかな……もう高齢のはずだから……。
(彼女は幸せに暮らしているよ)
ギルマスの言葉を思い出す。
「今日もアリーナの勝ち逃げかあ~」
と周りは言う。
「そういや、ずっとあの若造にべったりみたいだな、ミュラーとか言った冒険者だっけ? 街の女共が悔しがっていたぞ。色男だからな、見た目は華奢で弱そうに見えるが強いんだよなあ。エリカを師匠に持っているんだそりゃあ強いはな、アリーナが惚れるのも解らないでもない」
「でしょう?」
とアリーナは嬉しそうだ。
「さあ今日はこれで終わりよ、シルフィー行きましょう!」
店の客に手を振って出て行く。
僕達は山を登る。ヴィーヴェルの洞窟の前に来てアリーナは姿を変える、ドラゴンへ。
僕も大きくなってアリーナの頭に乗る。
「へえ~、シルフィーってその姿が本当なのね」
「そうだよ、シルフィーは皆この姿だよ」
「綺麗な翼ね、真っ白でふわふわしている、天使のそれとはきっと違うのだと思うけど、私はシルフィーの翼は好きだわ」
「アリーナも綺麗だよ。ミュラーがアリーナを初めて見た時綺麗だって言っていたよね、僕もそう思うよ!」
「もう! シルフィーったら……そんな事言われたら嬉しくなって飛ぶスピード早くなっちゃうわよ」
「あはっ!大丈夫だよ! 僕は風の妖精だよ、スピード比べならよくシルフィー達とやって遊んでいるよ」
アリーナと話していたら
「ほら! あそこよ、見えて来た。降りるわ」
本当だ! あった! あの人がくれた本に載っていたような不思議な街だ。
アリーナは人間の姿になる。
「街ではこの姿よ」
何処から来たのか、1人の男性が姿を現した。
「よう! お嬢お帰り、その一緒にいるのは……?」
「僕は風の妖精シルフィー宜しくね」
「へえ~妖精とは珍しいなあ、人間と一緒に居るって言っていた妖精かい?」
「そうよ、冒険者と一緒なの」
男性は表情を硬くしてアリーナを見る。
「お嬢、その事でお話があります。こちらへ」
その男性の後をアリーナと歩く、長い廊下の先にある部屋に入る。そこには長く生きてきただろうドラゴンが居た。そのドラゴンは赤黒く、色褪せた鱗をしている。きっとアリーナの様な赤の鱗であったのだろう。
「アリーナ、外の世界に行くと言っているようだが、本気か?」
アリーナも負けじと前に出て言う。
「ええ、冒険者と主従関係を結んだわ」
「……まあ、いいだろう、人間は我等より早くその命を散らす……その人間の最後を看取る覚悟はあるのか? いずれ別れは来る、それにお前は耐えられるのか?」
「別れ‥‥‥」
アリーナは少し考えて
「別れは来るものね……覚悟を問われて再確認したって感じかしら……覚悟は……出来たわ、その日まで私は一緒にいる」
「……良かろう雪が溶けたら行って来るといい」
「ありがとう! じじ様! 雪の間人間の街に居る事にするわ、冒険者の仲間になったのだもの頑張るわ」
アリーナはやる気満々だけど……。僕は不安で言ってしまった。
「張り切ってくれるのはいいけど、その物凄いオーラ何とかならない? モンスターが皆逃げてしまう、モンスターを討伐しないと報奨金が貰えないから困るよぉ」
それを聞いた、じじ様と言われたドラゴンはアリーナにブレスレットを渡す。
「それは、ドラゴン特有のオーラを押さえる事が出来る物だ。昔、知り合いの錬金術師が作ってくれた物だ。それならドラゴンだとバレる事はなかろう」
おお! 凄いアイテムが出て来たなあ、何かゲームっぽくなって来た。アリーナはさっきの男性と何かを話している。
「シルフィー外で待っているから!」
と言ってアリーナは外へ出て行った。
すると今度は僕に向かって、ドラゴンが言う。
「そこな妖精、お主、変わった魂を持っておるのだな」
「えっ? 解るの?」
「これでも長く生きているからな」
ふぉふぉっと変わった笑い方をする、機嫌は良さそうだ。
 




