赤のドラゴン
「僕は人間じゃないんだ」
ミュラーの言葉にきょとんとするアリーナ
「‥‥‥‥‥‥」
そうなるよね……これで諦めるかな……。
「そんなの関係ない」
と、こちらが驚く事を言う。アリーナの表情は真剣だ。
「種族が違ったって関係ないって言っているの」
これは……
「どうして……」
ミュラーも困惑する……
「私が初めて負けた相手……あれからずっと忘れられなくて……悔しいって思わなかった。それより貴方の事が気になって色々な人に聞いて回ったわ……」
「‥‥‥‥‥‥」
ミュラーも言葉を失う……。
「だって、貴方が好きなの! 種族が違う……それが何? 私……貴方の事、本気で好きになっちゃったんだもの……この気持ち……そんな事で変わったりしないわ!」
「でも……」
とミュラーがアリーナに確認する様に見つめ返す、
「……私……」
アリーナがそっと口を開く、皆何も言わず彼女の言葉に集中する。
‥‥‥‥‥‥。
「実は……私も人間じゃないの」
その場に居た皆が固まる。
「君は何者なんだ……そのオーラ……」
スライムがプルプルしている。彼女は立ち上がると
「こっちに来て」
と歩き始める、その後を皆で追う。大きな洞窟の前に着いた。ここは、ヴィーヴルのいる洞窟だ。
僕等に背を向けた彼女が姿を変える。
ドラゴン! それも赤い鱗に覆われた赤のドラゴンだ! エリカは後ろに後退し戦闘態勢をとり構える。が、ミュラーは
「綺麗だ……赤い鱗が太陽の光を反射してキラキラしている……」
おーーーーい! ミュラー! 大丈夫かあぁーー! ドラゴンだぞおぉーー!
僕は気が気じゃない……気性が荒いっていう赤のドラゴンが目の前にいるのに……。
「これが、私の本当の姿よ」
スライムが言う
「そのすざましいオーラはドラゴンの物だったのか……君はそれでもミュラーの事が好きなのか?」
「そうよ!」
「アリーナ……いい事を教えよう……」
スライムがドラゴンの彼女に言う
「ミュラーはテイマーだ、解るだろう?」
「!」
「そうなのね!」
その大きな顔をミュラーに近づけて言う
「私をティムして! 主従関係にあればずっと一緒にいられる!」
スライムさん……この状況でよくそれが言えますね……さすがです……
ミュラーは、はっと我に返った様に
「そんな事をしたら、この土地を離れなくては行けなくなるよ、僕達は冒険者だ。君はそれでいいの?」
ドラゴンの彼女は
「私、外の世界に行きたいと思っていたの。でも、周りの大人達は反対するからここから出る事ができなかったの。ティムされたって言えば堂々と外に行けるわ!」
大きな身体をクネクネさせて嬉しそうに言う……。
「間違えないでね、外に出たいからティムされる訳じゃないんだから。貴方に私は負けた貴方は強い。だから好きになったの貴方にならティムされてもいい、一緒に私を連れて行って!」
ミュラーはスライムを見る
「いいじゃないか、本人が望んでいるんだ。それに、ドラゴンが居たら心強い」
エリカを見る
「こんなに簡単にドラゴンが仲間になるなんて思ってなかったわ。いいんじゃない?」
「皆も構わないと言ってくれたよ、君と主従関係を結ぼう。宜しくアリーナ」
仲間が増えた! ドラゴンだあ! 目的通りなんだけど……何だろうこの……やった感のない達成感は……。
ちょっと変わったドラゴンだけど、ミュラーにぞっこんなのは解る。アリーナは人間に戻るとミュラーの腕を捕まえて
「私のご主人様、嬉しい!」
まさかこんな形でドラゴンを仲間に加える事になろうとは……セルヴァンから聞いていたんだ。赤のドラゴンが人間の女の子になるんだって。その女の子はアリーナだったのか……女の子って言うから……もっと小さい子供だと思っていた。……セルヴァンに後から言っておこうかな……。
【赤のドラゴン】ゲームでは属性は火、炎を吐く事が多く設定されていて、なかなか倒れてくれない厄介なモンスターである。さて、この作品の彼女の能力は…どうしましょうか。
 




