乙女の恋心
「ちょっと貴方ミュラーから離れなさい!」
と、エリカが引き剥がす。
「貴方には関係ないでしょう、私達の問題なのだから!」
エリカとアリーナはここでも睨み合う。
「ミュラーは断ったでしょう! 貴方聞いてなかったの!」
「迷惑をかけるからって言う理由なら、何も問題ないわ。貴方の邪魔にならない様にする、練習の邪魔になる様な事は絶対しないから!」
ミュラーを見つめる。
「えっと……僕……女の子と付き合った事ないから……こう言うのは……解らないんだ」
ミュラーは困った顔をするが、アリーナはミュラーから目を逸らさない。
「貴方の邪魔はしない……だから……私、貴方の事をもっと知りたいの……」
その様子を周りも見守る……これは…本気だ……。
それにしても何て積極的な娘なんだろう、ミュラーが完全に押されている。
アリーナはミュラーから手を離し、クルっと後ろを向く。
「……今日はこれで帰るわ」
と彼女は店から出て行く。えーーーーっ! これって……どうなるの? 勢いで告っちゃったってやつかな? 昨日も顔を真っ赤にしてたし……。まあね、自分より強い相手にグラっとくる事はあるだろう、それに、ミュラーは爽やか青年だ! 街の女性の視線を集める位にね……だからね……その気持ちは解かるよ……。でも……
彼女が出た後、店内はまた大騒ぎになる。あのアリーナが告った!! それも人目を憚ず、大勢の前で……この話題はちょっとしたニュースになり街中に知れ渡る……。
店を出て僕等は宿に向かう。
「僕……どうしよう……」
ミュラーは困っている、どうしたもんか……彼女は諦めないだろうなあ、だって初めて見たよ目がハートになる所……
宿に着いてもミュラーはため息ばかりだ、スライムがそこで言う
「いっそ言ってしまうか? 人間じゃないって」
おお! スライムさんミュラーの事知っているんだ! いつ気づいたんだろう?
そんな皆を置いて僕はセルヴァンの所に行く。山羊達も静かに寝ている。そして僕はセルヴァンから話を聞く。
「そうか、赤のドラゴンがよくこの辺に来るんだね‥‥‥ん? ええーーーーっ!! どうしよう……そうだよね……教えちゃまずいよね‥‥‥」
聞いてしまったからには伝えるべきなんだろうけど……悩むなあ……。
翌日、剣の稽古に森にやって来た。エリカとミュラーと……何故かアリーナも居る。
「危ないから離れていて」
と爽やかな笑顔をアリーナに向ける。
「邪魔にならない様にするから見てていいかしら?」
エリカは
「見世物じゃないわよ……」
と冷たい……アリーナはスライムを抱えて木の陰に隠れる。
「ミュラー、来なさい」
エリカ達はそんなアリーナに構わず稽古を始めた。アリーナはずっとミュラーを目で追っている! それって凄い事だと思うよ、なかなかに2人のスピードに付いて行けるって。
お昼になり休憩すると、アリーナが
「はい! お弁当、皆で食べて」
と色々並べる。
「大丈夫よ、変な物は入れていないからお店で買って来た物よ……私、料理下手だから……」
ともじもじする。そんなアリーナにエリカは
「代金は後で払うわ、タダで貰う理由はないもの」
食べ終わるとスライムがミュラーを突く。ミュラーはアリーナに言う
「アリーナ、気持ちは嬉しいけど君の気持ちには答えられない」
真剣にアリーナを見つめて言う
「僕は人間じゃないんだ」
 




