アームレスリングの強者
アリーナという娘は、
「今日は調子が悪かったのよ、明日また勝負よ! 逃げないでよね」
言われたエリカはというと全然程気にしていない。
「何度やっても同じよ」
そう言うエリカは笑みさえ浮かべている。
彼女はプイっと後ろを向き何処かへ帰っていく。ミュラーがほっとしている。だよね、あそこで負けたら……エリカからのお仕置きが……ただでは済まない!
「ん? お嬢さん、その肩にいるのは?」
僕はその人の所まで飛んで行く
「僕は、風の妖精シルフィーだよ。宜しくね」
店内に居た1人が叫ぶ
「ぁあー! 剣姫エリカ! 妖精を連れているって聞いていたけど、ほんとだったんだなあ」
そこでまた、店内がざわつく
「剣姫は力も強いんだあ」
あの娘また明日来るのかな?
♢ ♢ ♢
「悔しいわ! 私が負けるなんて!」
大きな体格の男性が声を掛ける
「よう! お嬢どうした? 機嫌が悪いな」
椅子に座っているが両手を握りしめてテーブルに置いている。
「だってアームレスリングで負けた事の無い私が……人間に……それも女に……あり得ない!」
「へえ~凄いのが現れたって事なんだな」
「若い男の子にも負けたわ……立て続けて負けるなんて……」
「そりゃあすげーなー、お嬢本当に調子悪かったんじゃないんですか?」
「ちょっとここに来なさい」
テーブルを挟んだ前の椅子に座らせて腕を組む、睨み合い互いに相手を倒す為に腕に力を入れて行く、
バン! と片方の腕がテーブルに倒された。
「ふう……お嬢強いじゃないですか、そのお嬢を負かせたって女は只者じゃないなあ、相当ヤバい奴じゃないか」
「明日また行って来るわ! リベンジよ、逃がさないんだから」
♢ ♢ ♢
その娘はリベンジを誓っていた。
エリカ達はやっと宿を見つけて入る。街の人達に囲まれて質問攻めに遭い、なかなか離してはくれなかったようだ。エリカとミュラーは珍しくグッタリしている。
スライムが
「あの娘は明日も来るだろうな」
ミュラーは
「僕はもうやらないからね、女の子を虐めているみたいでいい気がしない」
「私に負けたのが気に入らないのだから、私が相手をすればいいだけでしょう?」
エリカ流石だ! 逆に今のエリカに勝てる相手はいるのかな? ギルマス位かな? うーん…ギルマスは置いて置こうかな、あの人は魔法を使うからエリカには不利だ。
でも、あの娘強かったよ、僕が見ていた時大きな身体の男性とやっていたけど、勝っているからね。そう思うとエリカは‥‥‥やっぱり強い。
翌朝、エリカとミュラーは剣の稽古をしていた。街から少し離れた森の中2人は木々を飛び回る。空中で剣が重なりミュラーの剣はエリカの剣に弾かれ地面に落ちる。
「あっ!」
ミュラーは剣を取る為に地面に降りる。そのミュラーに向かってエリカは言う。
「ミュラーそのままこの山の頂上まで走りなさい、帰りは地面を走らず木々を飛びながらここまで戻ってきなさい」
ミュラーは言われた様に山の頂上を目指し走る。やってるやってる、ミュラーが走る横を僕は飛ぶ
「ミュラー! 頑張って!」
と、応援をする。山か……ここは山羊や羊も多いから、セルヴァンも居るだろうか? セルヴァンにも聞いてみよう、寒くなると彼等は冬眠する事もあるから今のうちに聞いておいた方がいい。
「僕、ここに居る山の妖精達に会ってくるよ」
走っているミュラーに言って空高く飛ぶ。
【セルヴァン】山の住人達の仕事を手伝ってくれる。チーズやバターを作ったりする。陽気で社交的とても気のいい心優しい妖精。人間が山小屋を留守にする時、この妖精は家の中に入って片付けをしてくれたり家畜に餌をやってくれる。テーブルや窓辺に花を飾ってくれたりする。他にも、悪い妖精が入って来ないように見張りまでしてくれる。




