フォレストウルフ
……まだかな?
「申請が通りました! 正式に依頼を出します。請けて頂けますか?」
「もちろん!」
エリカは待ってましたと、申請用紙にサインをする。
「さあ、行くわよ」
そう言ってギルドを後にする、受付のお姉さんは祈る様にこちらを見る。
「かなりの群れの大きさだよ」
僕は、妖精達からの声が聞こえている。『沢山いるよ』『こっちに来るよ』…『森に入って来たよ』って……他のシルフィー達も言う。そこで僕はエリカに言う。
「僕も力を貸すよ」
「それは頼もしいわ。シルフィーの力は見たけど、竜巻の他にもあるの?」
「あるよ。風の刃……って言っていいのかな? 近くにある石なんかを高速の風で飛ばすんだ。シルフィー達とよく遊んでるよ」
「……そ、それは、当たると痛そうだね……」
ミュラーが顔をしかめて言う
「頼もしい助っ人だ……」
スライムも言う
「風の力を借りれるのは、こちらにとって有利だぞ。防御も完璧だ」
そうだね、結界も作れるよ。話をしながら走る。僕は空高く飛んでモンスターの群れを探す……見えた。森の中を走って来る大きな狼……なんて大きさだ……。
「エリカ! 見えた! この先に居るよ……森の中を……沢山の群れが……暴れている……」
森の動物達や弱いモンスターは彼等の餌となっている……悲鳴に似た叫び声、鳴き声が森の中で響き渡る……酷い…‥食い散らかす……その行動に、怒りに似た感情と悲しみが混ざる……。
「エリカ……倒して……」
僕はその時泣きそうな顔をしていたのだろう、
「任せて」
エリカは優しく僕に言う、
「ミュラーこのまま突っ込む! 構えて。行くわよ」
エリカ達は森の中へ入る。
「群れのリーダーの所まで行くわ」
ミュラーが前へ出て、引き付ける
「こっちだ! 来い!」
フォレストウルフは動きを止めミュラーを見る。僕も姿を大きく戻して空で待つ。スライムは大きくなった僕の頭に乗る。ウルフ達は一斉にミュラーを目指してやって来る。
先頭のウルフ達が唸り声を上げて近づく、ミュラーは真っ直ぐにその中に向かって走る。剣を抜きウルフ達を切って行く。僕も竜巻を起こしウルフ数匹を砕き、風の力で石を投げる……それに当たったウルフは後ろにいるウルフと共に吹っ飛ばされる、それを見たスライムは、
「凄い威力だな、あんなに吹っ飛ばせるものなんだ」
「これでも、力を押さえているんだよ。でないと森にダメージを与えてしまう」
「……本当に君は……森を大切に思っているんだね」
「そうだよ。森に生きるものすべてがとても大切なんだ」
エリカが木の上から群れのリーダーを探していた。後ろにひと際大きなフォレストウルフが居た。それがこの群れのリーダーだろう、エリカはそのリーダー目掛けてフォレストウルフの中を進んで行く。
ミュラーとエリカ達によって、フォレストウルフの数は減って行く。そして、エリカはリーダーの所まで辿り着く、エリカとリーダーは睨み合いを続けている。
お互いの力量を測っているようだ、ミュラーもエリカの所まで追いついた。周りには沢山のウルフがいる。そこで、スライムはミュラーに向かって言う、
「ミュラー! ティムだ! 君なら出来る!」
ミュラーは頷く。そして、エリカの前に出る。ゆっくりとリーダーに近づいて行く。当然、他のウルフ達が襲い掛かる。だが、エリカがそれを許さない。ミュラーはリーダーのすぐ前に立つ、リーダーをじっと見つめる。
「我に人間の元に下れと言うか」
「そうだよ。そして、他の仲間達にはここから去ってもらう、もう充分だろう! 遊びで生き物の命を奪うなんて、そんな事は許さない!」
暫く見つめ合った後、ミュラーは大きく深呼吸をしてもう一度リーダーを見つめ、ゆっくりと手を伸ばして言う、
「僕達の仲間になってよ」
「変わった奴だな、我を倒す事だって出来るだろうに」
「リーダーの代わりは他のウルフでも出来るでしょう?」
「……今回の騒ぎを押さえられなかったのは我の責任である……リーダーを交代しよう、そして、貴方と主従関係を結ぼう。貴方は強い、その元に下るのも悪くない」
「ありがとう。では、契約をしよう」
フォレストウルフのリーダー、グランフォレストウルフが仲間に加わった!
【フォレストウルフ】森の狼、ゲームではお馴染みのキャラクターですね。色々な所で登場します、スキルはゲームによって変わってくるのでここでの説明は不要かと…
 




