旅立ち
冒険者の1人魔法使いらしき人が、
「精霊使いは見た事あるけど、本物の妖精って初めて見たよ」
「そうだね、僕等は普段姿は見せない。力は貸すけど姿は見せないよね」
僕は、あの女冒険者の傍に行く。
「それにしても貴方の剣捌き凄いね! シャウラみたいだ」
えっと、皆が僕を見る。
「えっと、今なんて言ったの?」
「? シャウラ・アルナイルだよ」
その場にいた全員が驚く。
「その人って! カストルの王じゃない!」
「うん、今はそうみたいだね。彼女は城に上がる前まで、僕のいた森でフェイに習っていたよ」
「成る程。皆がフェイを探している理由はそれなのね」
僕達の会話を聞いていた他のパーティーメンバーはビックリしていた。そうだよね、初めは皆こんな顔をする。何かもう色々慣れたよ。
僕は彼女の周りを飛ぶ。そんな事より何かワクワクする気持ちが押さえられなくなっていた。
「何がそんなに嬉しいの?」
と、聞かれた。他のメンバーは彼女を見る。
「だって、そんなにキラキラ光っているのだもの」
と、今度は僕を見る。キラキラ光る僕を不思議そうに見る。
「だって! 冒険者ってやっぱり凄いよ!」
そう言うとエリカと呼ばれる冒険者の表情が少し陰る。
「前にもそう言われた事があるわ」
「ねえ! 僕、貴方と一緒に行きたい!」
「‥‥‥ちょっと待って突然過ぎない? どういう意味かしら?」
「僕を一緒に連れて行って!」
それを聞いて慌てる。
「そんな事は出来ないわ。貴方を連れて行ったら街の人達に怒られてしまうわよ」
「大丈夫だよ、オベロンからも外の世界に行ってもいいって言われている。それに、街の人達もきっと分かってくれる僕は妖精だよ。自由だ! だから、何処へでも行ける」
僕はエリカと呼ばれる冒険者の周りをキラキラ光らせながら飛ぶ。
「それは有難いのだけれど、……本来私はソロで冒険者をやっているの……今回は規模が大きいからパーティーを組んだけど……シルフィー……そんなにキラキラされたら…もう、……困ったわね。そんな貴方を見たら……断れないじゃない」
大きなため息の後、彼女はキラキラ光る僕を優しく見つめて。
「一緒に来る?」
と、諦めと覚悟と混ざった不思議な表情を浮かべて言う。
「やったー!」
僕は嬉しくて叫んでしまった。だって嬉しいんだ! 外の世界に行ける! 楽しみだー!
「そうと決まればあの街の人達に挨拶をしないと、戻りましょうか。私はエリカよ、宜しくね。貴方は名前は無いのかしら?」
「名前は無いよ。シルフ、シルフィーでいいよ。だって僕は実体を持たないただの妖精だから」
「そう、それではこれから宜しくね。シルフィー」
エリカと街に行く。他のパーティーメンバーは先に依頼のあったギルドへと帰る。
店には沢山の人達が集まる、魔物の討伐完了を報告した。
「凄い‥‥‥あんなにいた魔物を退治したのか」
「シルフィーも手伝ってくれたわ」
エリカは言う。そこで僕は街の人達に、
「僕、このエリカと一緒に外に行ってくるよ」
「……そうか……やっぱり行ってしまうのかい。そんな気はしていたのさ、シルフィーはいつも冒険者との話しを楽しそうに聞いていたからね」
街の人達は寂しそうだ。そんな街の人達に、
「大丈夫だよ。この街には沢山の妖精達がいる。恥ずかしがり屋だから姿は見せないけどね、それにあの森にはオベロンが居る。この街は守られている」
子供達は、
「シルフィーに会えないのはやっぱり寂しいよ」
と悲しそうに涙を浮かべる。
「シルフィーは何処にでもいるんだ。見えないだけいつも君達を見守っているよ。傍にいる」
子供達の頬にキスをする。
「ちょっと待ってて、挨拶したい妖精がいるから」
と、僕はそう言って飛ぶ。フェイに挨拶をする。そして、ドライアドの所に来た。
「そう、行くのね。気を付けて」
「うん、ありがとう。ドライアド。時間は沢山あるんだ帰って来たら面白い話しを一杯するよ。楽しみにしていて!」
街の人達に見送られて僕達は行く。
「行きましょうか。まず、依頼はこれで終わったからギルドへ報告に行くわよ」
エリカはグリフォンに乗った。僕はエリカの肩に乗る。
僕の冒険が初まる! どんな世界が待っているのだろうワクワクする!