ディコンキ・ムジークの街(2)
エリカはため息を吐く、
「こうなると、暫くは無理ね。隠れてしまったら探せないもの」
道なりに進むと街が見えてきた。
「ほら、街が見えてきたわ」
街に入り、いつも様にギルドホールを探す。
街に人に声をかける、
「ギルドは何処にありますか?」
「ああ、冒険者の人かい。ギルドならもう少し先に行くと見えてくるよ」
街の人達は親切だ。妖精達とも上手くやっているのだろう。麦の収穫も順調のようだ。
この街の様に上手く妖精達と付き合っているのは珍しい。皆妖精の存在を信じ、それを尊重している。
何故なら、妖精の為の食事を用意しているからだ。
「あそこだね。ギルドホール」
ミュラーがそう言って、走って先に入って行く、いつもの様に登録証のカードを見せる。
「エリカ様ですね。ようこそ! ムジークの街へ」
受付のお姉さんに宿を聞いて出る、
「シルフィーいるのかな? いつもなら、受付のお姉さんに姿を見せては、驚かせて楽しんでいたのに……」
ミュラーは辺りを見回す、
「そのうち顔を出すから大丈夫よ。あそこね宿は、入りましょう」
宿に入り宿屋の店主に空きがあるか確認する。空いているというのでここに決めた。その店主はミュラーの頭にいるスライムを見て言う、
「へぇスライムかい。初めてティムしたのもスライムだったなあ」
と話す。ミュラーは身を乗り出して聞く、
「もしかしたら、冒険者をしていたのですか?」
店主は嬉しそうに、
「そうだよ。私もテイマーだったんだ。シルバーウルフとか、ワイバーンもティムしたなあ、今は宿屋の店主だがね」
それを聞いてミュラーも嬉しそうだ、
「大先輩ですね。そのティムしたモンスター達はどうしたんですか? 主従関係を解約したんですか?」
「そうだね。長い事一緒だったから、別れる時は寂しかったよ」
と懐かしそうに言う、
「私は、宿屋もやっているが、麦畑も持っているんだ。この辺りの連中は麦畑を持っている者が多くてね。この時期は麦を刈るんだ。あんた達も手伝ってくれると有難いんだがな。ちゃんとギルドにも依頼を出してあるから見てくるといい」
「解りました。お手伝いさせて貰います」
その日はその宿に泊まった。
翌日ギルドに行く。あった『麦畑の麦刈り』
「これだね。依頼を受けてくるよ」
そう言ってカウンターに向かい歩く、頭の上のスライムがそわそわしている?
ギルドの受付に依頼を受けると申請してきた。ギルドからの帰り、ミュラーが、
「シルフィー、まだ姿を隠しているよ」
エリカはそれに対して、
「そのうち現れるわ。その麦畑にいるって言う妖精に会っているのかも知れないわ」
とサラッという、ミュラーもそうだね。と返すが……頭の上のスライムが……
そう。僕は、ディコンキ・ムジークに会っていた。彼等は人間達と上手く一緒に暮らしているようだ。人間達がお弁当を分けてくれたり、自分達の為に食べる物を必ず用意してくれていると言っていた。
ディコンキ・ムジークは穏やかな性格だが、人間が彼等の予想を疑ったり、文句を言ったりする事は我慢が出来ない、一度そのプライドを傷つけると二度と戻っては来ないのだ。
この街の人間はそれを良く知っている。何故なら、他の土地で彼等の事を馬鹿にして敬意を払わなった者達は収穫時期の長雨にあったりして、被害が出ていたのを知っているからだ。それは、代々子供達、子孫に話して聞かせて、それらを守ってきた。人間達は、今日も庭先にディコンキ・ムジーク用の食事を置く。
【ディコンキ・ムジーク】
農民と一緒に干し草刈りをしたりする。陽気で明るい性格。仕事は人間より早いが突然仕事を止めて遊びたがる。ロシアの田園地帯に住むと言われる。
 




