妖精達の恋
部屋に入るとミュラーが
「メリュジーヌってどんな妖精?」
なので僕は説明をする、
「上半身は美しい女性の姿をして、下半身は蛇、背中には羽がある、その姿は週に1度、そうなるんだ。普段は美しい女性の姿だよ」
それを聞いてスライムが言う、
「聞いただけだと、なんだかちょっとしたモンスターみたいだな」
まあね、そう思うよね、僕は言う、
「半身が動物だったりする妖精は多いよ。鳥だったり、魚だったり、馬だったり、メリュジーヌは竜人とも言われている。物語ではちょっと悲しい話の方が多いかな?」
ミュラーは考え込む、
「もしかしたら……美しい彼女の姿を誰かが見たんじゃない? それで恋しちゃったとか」
僕も、
「まあね、美しい女性の姿をしているから、一目惚れもあり得るけど……」
その話……無いとは限らない、誰かが連れ去ったとしたら……あの時の男性の言葉が気になる。
“あいつのせいだ”
他の妖精に聞いた方が早いかな。
「僕、他の妖精に聞いてくるよ。何か知っているかも知れない」
と、窓から飛んで出て行くそんな僕を見て
「妖精ってあんな感じなのか?」
とスライムは2人に聞いてくる、ミュラーは、
「他の妖精に会った事は無いから分からないよ。姿は見えないから……そこは、いつもシルフィーに教えて貰っている」
そこで、今まで教えて貰った妖精の話をスライムにする。機嫌が悪くなるとシルフィーは姿を消して隠れてしまう事も、
「えっっ! ゴブリンって妖精なのか?」
スライムは驚く。そんなスライムにミュラーも
「だよね。僕も普通にモンスターだって思っていたからね」
という、
「なかなか奥深いじゃないか。妖精って……ふっ面白い」
ミュラーの隣に居るスライムもなんだか楽しそうだ。
「今回も妖精が関係しているからね。多分普通に旅をしていたら気づかないよ。シルフィーがいるから、気づくんだ」
僕は森の妖精達に話を聞くがメリュジーヌの事は分からなかった。そこで、各家の所に行きブラウニー達に聞いてみた。
‥‥‥メリュジーヌの事を知っているブラウニーを見つけた。そのブラウニーから彼女の居場所を聞いて、彼女の所に行く。
暗い部屋の中にメリュジーヌは居た。僕は大きくなってシルフィードの姿で彼女に会う、
「メリュジーヌ。どうしてこんな所にいるの?」
彼女は悲しそうに僕を見て、
「私は人間に恋をしてしまった。夜、仕事をしていたら、人間の若者に見られた。けれど、彼は一緒に仕事を手伝ってくれた。私達は毎夜会うようになって……でも私は……週に1度、鱗に覆われた姿になる。その姿は見られたくない」
彼女は両手で顔を覆って悲しそうに話す。
妖精が人間に恋をする、良く聞く話しだ。だが、いつも、ハッピーエンドでは終わらない。悲しい話の方が多い。
「彼は君の事を何て言ってくれるの?」
彼女の手を取り聞く。メリュジーヌは涙を溜めて言う、
「好きだと言ってくれる……」
美しい瞳から涙が流れる。その涙を僕はそっと吹き、
「なら、簡単じゃないか。ちゃんと彼と話しなよ。週に1度必ずその日は自分を見ないでと、約束すればいい、今までのメリュジーヌ達はそこで人間に姿を見られて、その人間の元から去って行く。知っているよ。それなら、本当の事を話してみたら? それでも君が納得出来ないのであれば、その人間の元を離れればいい。人間の命は僕等より短い、傍に居たいのならそうすればいいじゃないか」
僕は笑顔で、彼女に言う。
「建物が未完成だよ。仕事をしよう、他のメリュジーヌ達を沢山呼んで来るよ。そうすれば、早く完成するでしょう?」
「他のメリュジーヌ達を、逃げてしまった彼女達を? ……」
「僕に任せてよ」
そう言って笑ってみせる。
妖精が人間に恋をする話や人間が妖精に恋をする話は昔から語られています。このメリュジーヌの母親も人間の王と結ばれ、メリュジーヌは三姉妹の長女として育ちます、しかし、父親の王は母親との約束を破ってしまいます、その為、その国から出て、母親と三姉妹は離れた山で暮らします。母親から父親の話を聞いていたメリュジーヌは父親を山に閉じ込めてしまいます、それを知った母親は酷く怒り罰として、メリュジーヌは週に1度蛇になるようにしてしまいました。そのメリュジーヌも人間と結ばれますが、ここでも人間である夫にその姿を見られてしまいます、メリュジーヌは嘆き悲しみ去って行ったのです。
 




