メリュジーヌ
翌日、いつもの様に街を旅立つ、皆に挨拶をして。
僕は思い出す…‥ハーフエルフか……ナニーがきっとその子供を守っているのだろう。
いつか、会えるかな?
「今度は何処に行くの?」
とミュラーがエリカに聞く、
「そうねこのまま、北へ向かいましょうか」
グリフォンは飛ぶ。いつもなら僕がミュラーの肩に乗るのだが……ミュラーの頭にはスライムが乗っている。まあね……ティムしたのだからそうなるのは分かる……なんだか居場所を取られた気分だ。
エリカの肩や頭が嫌という訳ではない、が……ティムしたモンスターを移動する事も出来て、必要な時に呼び出す魔法陣、というのもあるらしいが、ここでは、今仲間であり、同じ景色を一緒に見たい。が、目的の1つでもある訳だから‥‥‥複雑だ……
「街が見えて来たわよ」
エリカの肩越しから、街が見えて来る。
グリフォンから降りて街へ入る。そして、いつもの様にギルドホールを探す。
街の中を歩いて街の様子を見る。何だか街の様子に違和感を感じる。良く見ると、建物が途中までで未完成な物が多い……これは後から街の人に聞いた方がいいだろう。とにかく今はまず宿を探さないとね。
ギルドを見つけた。そのギルドに入る。受付のお姉さんは、
「まあ! エリカ様ですか!」
うん! いつもの反応だ。僕の姿をじっと見つめる。これもお決まりだ。僕はにっこりと笑顔を見せる。
「宿はやっぱり森の近くがいいですよね? 案内させて頂きますので、少しお待ちを」
「教えて頂いたら自分達で伺いますよ」
エリカはそう言うが、
「私が案内します!」
と、受付のカウンターから出て来た。と、受付にもう1人のお姉さんが受付に後ろから出て、こちらに向かって、手を振る。
街に中を歩く、僕達は何度か二度見される。僕が居るだけじゃなくスライムも居るしね。ざわざわと周りが騒がしくなる。
「お気になさらず、行きましょう」
と歩いてると、僕達の前に誰かが出て来る。
「貴方が妖精を連れた剣姫エリカで間違いないですか……その肩に乗っているのは妖精ですよね」
エリカが歩くのを妨げてまで、この人は何かを話したいのだろう、何となく解る。僕に用事だよね。
「私達の足を止めてまで言いたい事は何?」
エリカは機嫌が悪くなる。この人の言いたい事が何なのか、分かるから…その人は言う、
「お願いだ。妖精に嫌われてしまって建築が進まない、悪かったと思っている。後悔しても遅いのだが、あんたなら何とか出来るんじゃないかって思って来た……頼む! 妖精達に戻って来て貰えないか頼んでくれないか?」
エリカは、
「嫌われるような事をした貴方達が悪いんでしょう? なら、自分達で何とかしなさい。妖精に頼ろうなんて、勝手ね」
「メリュジーヌを見てしまった? 彼女達はそれを嫌う、嫌われたらもう戻っては来ないよ」
と僕が言う。
男は黙ってしまう。その男性に向かってエリカが言う。
「あちこち中途半端な建物が多いのは何故? 妖精にやらせようとしていたのでしょう? 本来は人間の仕事よね。妖精はお手伝いしているだけなのよ。それを、貴方達は利用しようとした。違う?」
男は地面に両手をついて項垂れ《うな》る。両手で土を握りしめて言う、
「あいつのせいだ……」
「自分達でコツコツやる事ね」
エリカはそう言って歩き始める。受付のお姉さんも気まずそうだ。僕はあの男性の言葉が気になった。
“あいつのせいだ”
「本来とても働き者なんですよ。妖精が手伝ってくれるようになってから、仕事を増やすようになって……」
ミュラーが、
「妖精達はお手伝いをしてくれるんだ。それを当てにするのは間違っているよ」
そんな話をしていたら、目的の家に着いた。
「ここです。森も近くにあります」
「ではここを貸して貰います」
僕達は部屋に入る。
【メリュジーヌ】建物の妖精、月明かりの下朝まで働く。
仕事をしているメリュジーヌを捕まえようとすると途中でも仕事を止めてしまう。フランスではいたる所で見かけられるという、ベルギーでも、自分の立てた大きな建物にも姿を見せるとも言われている。
また他にも、神話学者は出産をつかさどるローマのマーテル・ルチーナやもっと前にいたケルトの蛇の姿の神と同じ者だと考える者もいる。




