トゥーマンティーとパリゼット
「オベロン、ティターニア、ありがとう」
2人の温かい体温を感じて気持ちが落ち着く。
「新しいお友達にも宜しくね。モンスターには会えないけど、シルフィーがお世話になるのだもの、何か渡しておきましょうか……そうね」
そう言った後に何かを渡された。瓶?
「それは妖精の秘宝の1つだよ。旅で食料が足りなくなったら使うといい。これは、妖精が管理する果樹園で採れた果物をジャムにした物だよ。永遠に無くならないから食べ物には困らない。それと、このジャムには秘密があるんだ。それは、これから分かるよ。食料事情は安心だ! さあ行っておいで皆が待っている」
「はい! 行って来ます」
僕はエリカ達が待つお店に行った。が、店の中が騒がしい、皆の顔も厳しい、
「ただいま。ねえ、何かあったの? 人間達が困っている様に見えるんだけど……」
ミュラーが、
「どうやら、森の中に出かけたきり帰って来ないって、奥さんが心配しているんだ。もう夜も遅いから、夜行性の動物やモンスターに遭遇する可能性もある。だから、今から森に入るのは危険だし……どうしようって、話していたんだ」
森ねえ……
「僕が行ってくるよ。妖精の僕には森の皆は優しいから、大丈夫だよ」
帰って来ない旦那さんを心配している奥さんが、
「有難い……あの人は羽のついた緑の帽子を被っている。名前はジミーって言うんだ」
「解ったよ。ここで待っていてね」
僕がそう言うと、エリカが
「危険なモンスターは夜活発になる、私も一緒に行くわ。ミュラー達は、ここで待っていて。はぐれてしまうと大変だから」
ミュラーは
「解ったよ、待ってる……」
寂しそうに言う、
僕とエリカは店を出て森へ行く。
「もしかしたら……」
僕はエリカに言う、
「トゥーマンティンを踏んでしまったのかも知れない」
「それは……どういう事?」
エリカが僕に聞く、
「真夏の夜、妖精達の踊った後に“妖精の輪”が出来るんだ。その妖精の輪に生える『トゥーマンティー』を踏んでしまうと、魔法がかかり自分が誰か忘れてしまう。“わすれ草”とも言われている。それに同じ道を行ったり来たりして、森から出られなくなってしまうんだ」
エリカが、僕に言う、
「もし、そうだとしたら‥‥‥どうすればいいの?」
「パリゼットを呼ぼう、彼女は、その魔法を解いてくれる」
僕は呼ぶ、
『パリゼット!』
そこへ、パリゼットが現れる、
『なあに?』
エリカには見えていない。
『森から人間が帰って来ないんだ。トゥルーマンティーを踏んでしまったのかも知れない』
『そうねえ、確かピクシー達が遊んでいたわね。あそこかしら?』
と、飛んで行く、その後を僕達は追って行く。すると、1人の男性が、ウロウロと行ったり来たりしていた。その頭には羽の付いた緑の帽子を被っていた。エリカが言う、
「間違いない、あの人だわ」
『パリゼット、お願いだよ。助けてあげて』
『解ったわ』
そう言って彼に近づきそっと触れる。男性は、はっと顔を上げ、エリカに気が付くと、
「俺は何故ここにいるんだ? どうして森から出られない……」
エリカは聞く、
「貴方はジミーさん?」
「そうだ。何故名前を知っている?」
「良かった……貴方の帰りが遅いから奥さんが心配しているわよ。私達は貴方を探してここに来たの」
とエリカの肩に乗っている僕を彼が見る、
「妖精を連れた剣姫……」
僕はパリゼットにお礼を言って別れた。そして、彼に言う、
「貴方は『トゥーマンティー』を踏んでしまったんだ。それで森から出られなくなっていた」
「そうか……よく解からないが、助けてくれたのか……」
僕はにっこりと微笑んで言う、
「妖精が助けてくれたんだよ。これからは足元を良く見てね、“妖精の輪”を見つけたらそこは、踏んではいけないよ。森から出られなくなってしまうからね」
僕達は森から街へ帰った。街の皆も僕等を見て安心しているのが解る。良かったね。
【トゥーマンティー】妖精達のダンスの痕に出来る“妖精の輪”に生える、それを踏んでしまうと魔法がかかり、自分を忘れる“わすれ草”とも言われる。森から出られなくなってしまう。
【パリゼット】トゥーマンティーの魔法にかかった人間の、その魔法を解き助けてくれる、遊ぶのが大好きで、いつも飛んだり跳ねたりして笑っている、彼女のお気に入りは木こりで、彼等が森で居眠りをしているとそっと頬を撫でたりする。




