妖精の国で
ミュラーにスライムが言う、
「これで貴方は私の主人だ」
「宜しくスライムさん」
エリカはそう言って微笑む、
「妖精を連れた剣姫か、悪くない。これからが楽しみだ」
僕達の会話を聞いていた人々は、いつの間にか店からはみ出る程、沢山増えていた。街の人達にスライムが言う、
「ここに居る。分身も私だ、今までと変わらない。本体は……オリジナル……と言った方が分かりやすいかな? はここで暮らす」
街の人達も安心している、スライム目的で来る人は多いので観光スポットになっているようだ。なので居なくなると、街の人達も困ってしまうのだ。
「さて、いつ出発するかな?」
皆で考える、んーー……
「ねえ、僕オベロンに会って来てもいかな?」
「ここに妖精の国に行く扉はあるのか?」
スライムも驚く、
「僕は、何処に居たって妖精の国に行けるんだ。扉は直ぐに見つける事が出来る」
エリカは、
「そうね。暫く会っていないわよね、行って来るといいわ、ティターニアに甘えていらっしゃい」
「うん! ありがとう、行って来るよ」
そう言って森の奥へ飛ぶ、
「うん、変わった妖精だ」
スライムは言う、ミュラーもそうそうと頷く、
「でしょう? でもね、シルフィーは言うんだ、妖精は人間の傍にいつも居るんだよって」
「ほう、私達モンスターとは違う考え方だ。面白いじゃないか、興味が沸いてきたよ、……人間はモンスターを敵として見ている。だから、私達モンスターは人間と共存は出来ない。あの妖精の考え方とは正反対だ」
そこに、常連だろう人間が店に入って来て中を見渡す、そしてため息を吐く。
「悪いが、誰かうちの亭主を知らないかい? 朝早く森へ行ったきり帰って来ないんだ」
店の中はざわつく……が誰も知らないと首を振る。
その時、僕はオベロンと会っていた。僕を見るとオベロンは翼を撫で、
「ん~久しぶりだね。相変わらず君の翼は美しい。君も元気で何より、それで? 私に聞きたい事が会ってここに来たんだよね」
翼を撫でていた手が止まり、僕を見る。
「うん、ギルマスに僕は魂を持っているって言われた。でも、僕には実体はない……それは僕がダメな妖精だから? 人間に姿を見せているから……なの?」
そこにティターニアが現れた、
「シルフィー貴方はダメな妖精ではないわ、人間に姿を見せていいって私達も貴方に許可した。それに、今まで沢山の人間や妖精達を助けてくれた。これからも、その旅は続くのよね。では何も問題は無いわ」
ティターニアも僕の頭を撫でる……
「ギルマスが、僕はいずれ選択を迫られるだろうって言っていた。それは、この世界に居られなくなってしまうって事? 僕はこの世界が好きだよ……この世界でずっと生きていたいよ……」
泣きそうな僕に、オベロンは、
「君はこの世界にとって特別だと言っていた事は覚えていると思うけど、まだその時期ではないのだよ。もっと沢山の経験を積んでおいで、その時が来たら君にも分かるはずだ‥‥‥私達は君が成長していく姿を見ているのが、とても、楽しいんだ。シルフィーはこれからも私達の愛しい子供なのだよ。だから、困った時はいつでもここに来るといい、私達はずっとここに居る」
2人は優しく僕を抱きしめてくれた。
【オベロン】妖精王:シェークスピアの「真夏の夜の夢」(「夏の夜の夢」)に登場するのは有名です。妻ティターニアと夫婦喧嘩をするが、仲直りすると言う話。その姿は色々で、小人の様に小さく背には蝶の羽を持つと言う、どちらかと言うとこちらの方が、良く知られているかも知れませんね。
 




