エルフ
朝起きてフェイの所に行く。女騎士シャウラを探す。
「では‥‥‥フェイ、ありがとう。行ってきます」
「その書状があれば、人間の王にも伝わるはずだから。気を付けて行っておいで」
「はい! 師匠」
僕はシャウラの周りを飛ぶ。
「ねえ、今日も街に行こうよ」
「シルフィー、私はこれから城へ上がる。お別れだ。今まで楽しかったよ」
「そうなんだ……途中まで一緒に居てもいい?」
「勿論」
街へ行く、皆が声をかけてくれる。シルフィーと。
「ここまでだ、シルフィー」
街外れに来た。僕は人間サイズになる。僕の翼の羽を彼女に渡した。
「これで、仲間の妖精シルフィーから力を借りる事が出来る。だから、何かあったら頼って。シャウラ……気を付けて行って来て」
「ありがとう」
そこでシャウラと別れた。
僕達は人間達とは時の長さが違う。初めて街に来た時に会ったあの子供達も、子供を持つ大人になっている。今日も人間の街の空を飛ぶ、皆僕に手を振ってくれる。
そして、今日もあの店に行く。今は代替わりをしてあの小さかった子供が店の後を継いでいる。冒険者の中でも、この店に妖精がいると言う事は伝わっているようで、僕に会いに来る冒険者も増えた。
「君がシルフィーか、本当に居たんだ」
と、客の冒険者に言われた。
「旅先でここの事を聞いてね。風の妖精シルフがいるって」
と、帽子をとる‥‥‥エルフだ。
「冒険者やっているの!?」
「そう、冒険者をやっているよ。いいのかい? 君達は人間に姿は見せないはずだが……」
「僕はオベロン王から許しをもらっているから大丈夫なんだ。それに、この街の人達は森を大切にしてくれている」
「そうか……君にお願いがある……私をオベロン王に合わせてくれないだろうか。今私には妖精の国に行く扉が使えないのだよ」
「? いいよ行こう」
その冒険者と森に向かう扉を開けてオベロンの所の行く‥‥‥オベロンは怪訝な顔をする。
「……君、人間と交わったね」
「はい、そうです。人間を愛した。けれど時間は違う……彼女は逝ってしまった」
「で? その汚れた身で何の用かな?」
「この命を終わらせてもらいたい」
「‥‥‥‥‥‥」
そこで、ティターニアが現れた。
「可哀そうに、そんな風に言わなくてもいいじゃない。ねえ」
とそのエルフの肩に手を置く。
「貴方の望みを叶えましょう。長い時の中を生きて疲れてしまったのね。いいわ、その代わりに貴方は魂を持たないただの妖精になる。解かっていますね」
「はい、解かっています。その妖精達の力を借りてきましたから」
「いいでしょう」
と言うと、そのエルフの姿は次第に薄れて行く……その顔は笑顔だ。そして‥‥‥消えた。
「シルフィー、辛い所を見せてしまったわね」
「いいえ、辛くはないです。永遠は無いと分かっています」
「私達王はその永遠の中にいます。王の務めであると思っていますよ」
「……貴方はいい子ね……貴方は外の世界に行きたいのよね。分かっていますよ……長い時の中、そんな事を望んでも構わないのよ‥‥‥でも、私は寂しい」
と、辛そうな顔をする。
「ティターニア……」
「私達はここにいます。愛しい子よ、旅に出るといい」
「ありがとうございます」
「ほんとにティターニアは子供達に甘いよなあ」
とオベロンは言う。そして、
「行っておいで、時々は顔を見せておくれよ。君は特別なんだ、私達にとっても……だから、本当は行かせたくないんだ」
と、困った顔をする。
「ありがとうございます! オベロン。顔を見せに来ます。僕も貴方達に会いたいから」
ティターニアはそっと僕を抱きしめる。