初めて冒険者に会う
僕は毎日あの店に通った。人間達は親切で、僕が居るだけで喜んでくれる。
「やあ。シルフィー、果物は食べるかい?」
「わあ、ありがとう!」
街の子供達も
「わあ! シルフィーだ! また、風の魔法を見せてよ!」
と、希望に答えて、つむじ風を起こす。
「凄いやー!」
子供はいいね。純真だから、傍に居ると元気が出る。
そして、夜になりお店はお酒を呑む客が増えてくる。他所の街から来る客は、僕を見ると一応に驚く、その反応が面白い。
「この店は妖精を飼っているのか?」
酔っ払いが僕の翼を指で引っ張る、初めて見るおっさんだ。僕がムッとしているのを店員が見て、
「止めなよ、妖精を怒らせない方がいい」
と、笑顔のない顔で止める。
「あ~客になんだあ、その態度は~客より、妖精が大事かー!」
と叫ぶ。
「そうだよ」
店内にいる他の客も頷く。
「うちの森は妖精王が治めている、森は何より大切なんだ。その森に住む妖精は普段姿を現さない、だから、このシルフィーはあんたら客より有難い存在なのさ」
皆の視線がその客に無言の圧力をかける。その客はそそくさと店を出て行った。
「悪かったね。嫌な思いをさせてしまった」
とすまなさそうに言う。
「ありがとう。皆が僕達に優しくしてくれるから嬉しいよ」
「これに懲りずに、また、店に来て来てるかい?」
「勿論だよ。僕は人間が好きだよ」
皆がほっとしているのが分かる。
嬉しいなこんなに大切にされているんだ、王が聞いたら喜ぶだろうか?
そんなある日、冒険者だと言う客がやって来た。僕を見ると驚く、そうそういいリアクションだあー
「こりゃビックリだ。妖精か? 何の妖精だ?」
「僕は、シルフィー。風の妖精だよ。あなたは冒険者?」
「そうだよ。なんだ興味あるのか?」
「うん! 色々知りたい! 面白い話しが聞きたいなあー」
「そうだな。ここに来る前だが大きなギルドがある街に寄ったんだが、面白いものを見たよ。スライムだ」
「スライム?」
スライムってあれだよな、よくゲームに出て来るやつ。
「そのスライム喋るんだ、面白いだろう? 俺も初めて会ったよ。あんなの雑魚モンスターなのに、あんなに喋られたら倒せないよな。違う意味で」
ハッハっハと笑う、えー! 会ってみたい!
「なんだ興味深々って顔だな? まあ、そうだわな俺も驚いたからな」
「冒険者の中にもエルフは居るんだよね?」
「まあな。立ち位置は魔法使いが多いな。中には剣を使う者もいる」
そっかーフェイみたいに魔法を使うのかな? そう言えば剣術も教えていたなあ。僕が嬉しそうに話しをしていたので店主や客も嬉しそうだ。その客が
「へえー妖精ってこんなにキラキラしていたっけ?」
と不思議そうに僕を見る。店主が
「妖精が喜ぶと、そうやってキラキラ光るんだ。綺麗だろう? それを見ると幸せな気分になるんだよ」
成る程、だから皆嬉しそうにしていたのか。
「他には妖精は居ないのか?」
と、その客が聞いてきた
「沢山いるよ。僕は王、オベロンから人間に会うのを許されているから、こうやって街に来ているけど、 後の皆は隠れているかな」
「それじゃ君は特別って事になるのかな?」
「そうなるのかなあ?」
「俺はエルフの事も今ひとつ分からんからな」
僕はとても機嫌が良かった。
「エルフも妖精だからね。僕みたいに翼が無いって感じかな? それにエルフは、実体を持つ者が多いかな?」
「実体?」
「そう。一つの魂を持った個体だよ。僕等は基本実体が無い」
「ふーんよく分からんが、君みたいに小さくはないよ」
「僕も大きくなれるよ」
と、初めて街で人間サイズになった。周りが騒がしくなる。
「こりゃあ驚いたなあ。まるで天使だな」
「うーん。ちょっと種族は違うけどね」
と、元のサイズになる。しばらくその冒険者と楽しく話した。店主から
「シルフィーが人間サイズになれるとは知らなかったよ」
「森の中では、あの姿でいる事が多いよ。沢山のシルフィーがこの姿だよ。でも、他のシルフィー達は人間の所に行きたがらないし、普段から隠れているからね」
「じゃあ俺は宿に帰るかな、今日は楽しかったよ」
とその冒険者は席を立つ、
「もう、帰っちゃうの? ここには、来ないの?」
僕はその冒険者に近づく
「ギルドの依頼があるからそれを片付けに行かないとな。ここには、その後にまた、寄らせてもらうよ。またな、シルフィー」
その冒険者と別れて僕も森へ帰る。
「何かいい事があったのかしら? 嬉しそうね」
と、ドライアドに言われた、
「うん、今日は楽しかったよ。ねえ、ドライアド……ううん何でもない。おやすみ」
ドライアドの枝で眠る。




