ボギービースト
僕は宿の屋根裏で子供部屋だったであろう部屋を見つけた。そこにはボギービーストが居た。
そのボギービーストに聞いてみた。
「どうしてここに居るの? もう誰も居ないのに……」
すると、クルクルと綺麗に回って見せて
「ここで私は子供達と楽しく遊んだの、猫の妖精ケット・シーも居たわよ」
僕は聞く
「貴方は果樹園の妖精でもあるよね?」
「そうよ。だからここにずっと居る訳ではないわ、外に出て人間達が道に迷ったりしていないか、子供が転んだり、溺れたりしないように。そして、寂しい思いをしていないか声をかけたりしているのよ」
と、優しく言う。
「人間達は貴方がそうやって見守っている事をきっと知らないよ。寂しくないの?」
ボギーは、
「そうね、知らないでしょうね。でもいいの、私は人間が好きなの。見返りなんて求めていないわ。私達は人間に寄りそうもの、でしょう? それに私は1人じゃない。妖精の仲間は沢山いるのだから」
それを聞いて僕は言う
「僕も人間が好きなんだ。一緒だね! だから、今人間達と一緒に旅をしているんだよ」
「そうなのね」
と言うと
「……私ここで、ヤヨって名前の人形として、ここの子供達と何世代にも亘って楽しく遊んでいたの。私は大切にされ、綺麗な服を着せて貰ってピクニックに行ったり演劇を一緒に見に連れて行ってくれたりしたわ。実は演劇が気に入ってしまってね、今でも時々外に出て見に行っているのよ。楽しかった時を思い出して懐かしくなる」
うっとりと思い出に浸っているように話す。
「だからここは私にとって楽しい思い出が沢山詰まった大切な場所なの」
僕は、
「貴方は優しいね、そうやってこれからも人間達を見守って行くんだね」
ボギーはフリルの付いたドレスをひらひらさせて言う。
「シルフィー、旅に出るまで、またここに遊びに来てね。こんどは一緒に外に行きましょう?」
「うん! 一緒に遊ぼう! 演劇にも連れて行ってよ。見て見たいなあ……」
「もちろん! 一緒に見ましょうよ」
僕とボギーはその場所で手をとり暫く一緒に踊った。
楽しみが増えた。晴れた日に一緒に遊ぼう、僕達はこうやって楽しい思い出をずっと胸に持って生きていけるんだ。
これからもきっと……僕は貴方を忘れない。心優しい妖精の事を。
色々な地方で呼び名は変わりますが、人間を助ける妖精として知られています。




