やっぱり人間達との話は楽しい
「シルフィーを呼びましょうか」
窓を開けて呼ぶ、僕は呼ばれてエリカ達の所に来た。
「ここに泊まるんだね。下は食堂? 沢山の人が来るよね! 楽しみだなあ!」
「その前に、シルフィーに会いたいって人が今下の食堂で待っているよ。大きな男の人だよ」
とミュラーが言う。僕は直ぐに下に降りた。そこには、随分前に会った冒険者がいた。
「よう! シルフィー久しぶりだな。相変わらず人間を楽しませているみたいだな」
あれから随分経っている。
「貴方はまだ冒険者をやっているの?」
「まあな、だが引退を考えてはいるよ。身体が思うように動かなくなって来てな、魔物にやられる前に引退した方がいいかってな」
そんな話をしていると店の女将が驚いているのが解る挨拶しないとね。女将に近づく、
「僕はシルフィー風の妖精なんだ。宜しく、エリカ達と一緒にいるんだ。だから、暫くここに居させて貰ってもいいかな? 人間達と話がしたいんだ!」
初めは目を丸くして驚いていた女将も
「本当に妖精なのね。姿を見せてくれるなんて有難い、街の人達もビックリするよ。いつでも顔を出しておくれよ、大歓迎さ」
嬉しい! また話が聞ける! キラキラさせて飛ぶ。
「まあ綺麗!」
女将も嬉しそうだ。大柄な男は、
「シルフィーは喜ぶとそうやってキラキラ光るから、皆それが見たくてこぞってシルフィーと話したがっていたよなあ。俺も久しぶりに見たよ」
その夜から、食堂に顔を出すようになった。沢山の人間達も初めは話しかけにくそうにしていたが、話を始めると皆面白い話を僕に沢山聞かせてくれる。うん! 楽しい!
エリカ達はギルドに何度も行っているが依頼がここ最近集まらないと言っていた。魔物の数が減っているようだ。魔物の討伐だけが仕事じゃないが、受付のお姉さんがエリカにさせてくれないらしい、ミュラーは薬草を採って来たりと細かい仕事を頼まれてこなしている。その間に剣の練習をする。
夜エリカ達と食事をしていると、誰かが僕を捕まえようとした。僕は実体を持たないから捕まらない。エリカ達が怒る
「妖精を捕まえようとするなんて! 何を考えているの!」
店の他の客も女将も怒る
「大切な客になんて事するんだ! 出ておいき!」
と他の客に叩き出された。その男の腰には鉄の鎖が巻かれていた。それを使って僕を縛りつけようとしたのか。残念だったね。初めからそれを使えば何とかなったかもね。姿が見えているから捕まえられると思ったのだろう。確かに僕等は“鉄”が苦手だ。
「悪かったね。機嫌を悪くしないでおくれ」
客や女将は申し訳ないと、色々僕に持ってきてくれる。
「大丈夫だよ。悪意を持った人には僕には触れられないからね」
と、エリカとミュラーに言う。
「僕は実体を持たないから、本当なら人間には触れられない」
「そういえば、私達はシルフィーに触れるわよね」
エリカとミュラーは言う。
「そうだね。実体を持たないから本来なら人間に触れる事は出来ないのだけれど、そこは不思議なんだ。どうしてか僕自身も分からない」
ギルドマスターの言っていた言葉を思い出す『君は魂を持っている』魂を持つと言う事は実体を持つと言う事だ。けれど僕自身は実体は持っていない。オベロンが僕は特別だと言っていた。オベロンなら知っているのだろうが、今それを聞くのは違う気がする。




