詩人
さて。次はどんな街かな? 歩いていると、空が曇ってきた。雨が降るかもしれないな僕は平気だけど。
「雨になりそうね、急ぎましょうか」
グリフォンに乗る空を飛び上から下を眺める。街までまだ遠いなあ~そこで変わった町? 村? を見つけた。
「ねえ、あそこに寄らない?」
とミュラーが言う、エリカも
「そうね、雨宿り位ならさせて貰えるかしら? 寄ってみましょう」
雨が降って来て、エリカとミュラーはびしょ濡れになっていた。その小さな集落に降りた。家は幾つかあり人影も見える。その1つの家のドアをエリカはノックする。僕は姿を消した。だってここには
『バンシー』がいる。それに……この事はエリカ達には今は言わないでおこう。
ミュラーは僕が姿を消した事を不思議に思ったようだが、エリカのノックの方が早かった。
「すみません、どなたか居ませんか?」
暫くするとドアが開き1人の男性が出て来た。
「雨宿りをさせて頂けないでしょうか?」
その男性は優しく言う
「どうぞ、大したもてなしは出来ませんが、良かったら入って下さい」
その男性は食事まで用意してくれた。その男性は時々優しい眼差しで何処かを見つめる。
エリカはお礼にとダイアウルフの毛皮を渡す。
「こんな高級な物は頂けない……」
と困った顔をする
「私達は冒険者です。ダイアウルフは毎年やって来ますから大丈夫ですよ。貰って下さい」
「そうか、それなら有難く頂こう。今日は遅いから今夜はここに泊まって行くといい」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます」
ミュラーは家の中を見渡す
「それにしても……沢山の本があるんですね、見た事もある本も多いや」
嬉しそうに話すミュラーに
「私はもの書きをしている歌も歌うよ。詩人ってやつだ」
ミュラーは身を乗り出して言う
「もしかしてこの本は貴方が書いたものですか! 凄いやー」
「さあ明日は早いのだろう? もう休むといい」
ミュラーは、瞳を輝かせて言う、
「僕、貴方の歌が聞きた!」
男性は、
「いいよ。寝る前の子守り歌とは違うが構わないかな? それでは歌わせて貰おう」
と、大きめのハープを取り出し弾き語りを聞かせてくれた。
演奏が始まる……美しいメロディーにのせて、美しい声で歌い始める……
『……泉に現れた金髪の乙女シャナに泉に住むドラゴンが一目惚れをした…‥その思いは叶い、2人は結ばれ、乙女は長い時を生きる水の妖精に転生した。今も綺麗な月夜には2人が住む洞窟から歌声が聞こえると言われている……』
演奏は終わる、ミュラーは感動していた。エリカは、
「その話聞いた事があるわ。貴方の歌だったのですか! 知らなかった。素敵な歌をありがとうございます。急に我がままを言ったのにそれに答えてくれて、それに素晴らしい歌と演奏でした」
男性はふっと微笑むと、
「演奏ができるのも、きっとこれが最後かも知れないから……」
と、少し疲れたように言う。エリカは
「すみません。無理をさせてしまったのですね」
「最近どうも直ぐ疲れてしまってね。横になっている時間が多いのだよ。でも今日は気分が良い、久しぶりに歌も歌えた」
ミュラーは、
「ごめんなさい! 僕の勝手なお願いで……身体に障ったらどうしよう……」
余りにもすまなそうにしているのを見た男性は、
「いいのだよ、気にする事はない。私も久しぶりに楽しい夜を迎える事が出来て嬉しいんだ」
とても優しい声でミュラーの頭を撫でる。
「君はとても優しいいい子だね」




