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冒険者

 ぐったりとするエリカを抱きかかえて僕は、空に向かい風の力を借りて大きな声で言う。


「神様ーー!! 僕をこの世界に連れて来てくれた神様ーー!! 聞こえていますかーー!!」


 そこは風の音しか聞こえない‥‥‥。


「神様。エリカを‥‥‥日本に転生させてよ‥‥‥エリカはこの世界でこんなにも頑張ったんだ。凄く頑張ったんだよ。だから、今度こそ彼女は幸せにならなきゃいけないんだ。絶対‥‥‥幸せに‥‥‥」


「ねえーーーーーー‼ 神様ーーーーーーーー‼」


 そこで強い風が吹いた。


「‥‥‥まったく聞こえておるわい。そんなにデカい声を出すでないわ」


 ああ、初めに逢った神様だ。


「まあな。彼女には辛い運命を背負わせてしまったからの。今度は普通の日本人の女の子として、幸せに生きてもらおう。そこにいるルシファーと共にな」


 そう言って僕を見る神様。


「ありがとうございます! 僕、ここでの運命に負けません。フレアを守ります!」


「そうか。君ならやれるよ。なんたってこの私がお主を造ったのだからな。“魂を持つシルフィード”をな」


 そう言ってお茶目にウインクをする‥‥‥変わった神様だ‥‥‥。


 そしてまた、強い風が吹く。抱きかかえていたエリカがいない! 倒したルシファーもいない。そうか。‥‥‥‥二人は日本に転生したんだ。




♢♢♢




「んぎゃあー! おぎゃあー!」


「まあ、可愛い女の子ですよ。おめでとうございます!」


 そう言って女性の胸に生まれたばかりの赤ちゃんをそっと抱かせる。隣には涙でボロボロになっている男性がいる。


「良かったなあ」


「もう‥‥‥それだけ? 先生達にお礼は?」


「本当にありがとうございました。諦めないで良かったです」


「君達はまだ若い。次も十分に授かる可能性はあるんだ。とにかく無事で良かった」


 その部屋は幸せな空気で満ちていた。産湯を浸かってベビー服に着替えた赤ちゃんを再び大事そうに抱きかかえる。


「この子の名前は恵理花に決めたわ。めぐむことわりに花よ。花の様に真っ直ぐ理を持って沢山の幸せに恵まれますようにって。いい名前だと思わない?」


「うん! それいいなあ! 恵理花ちゃんかあ。パパですよ~」


「変なの! 声裏返ってる」


 部屋には笑い声が響く。




♢♢♢




 その後、同じようにこの世界に転生したルシファーは、エリカといつか巡り合うだろう。そして‥‥‥。



♢♢♢




 二人の姿は消え。そこにはミュラー達が悲しみに暮れていた。僕はフレアを抱きしめた。


「君は良く頑張ったよ。これは、彼女の運命なんだ。エリカは、次の世界で、きっともっと楽しく幸せに過ごすさ」

 フレアは、うんうんと何度も頷く。


 それまで一言も話さなかっらギルマスの声が聞える。


『皆。良く頑張ってくれた。エリカに関しては‥‥‥彼女の功績は余りにも偉大だ。これからは剣姫エリカではなく『勇者エリカ』とこれからは呼ぶ事としよう。フレア。君が次の剣姫だ。皆と楽しく旅を続けるといい。私はいつもここにいるよ』


「はい! おじ様」


 そこでちょっと疑問に思った事をギルマスに聞いてみた。


「ねえ。ギルマス。ギルマスは何故エリカの名前の苗字が佐藤さとうだとわかったの?」


『ああ、それかあ。以前異世界から日本人だと言う人間が迷い込んだ事があってね。彼は佐藤たくまと名乗ったのだが、どうも、こちらの世界の言葉での発音で「さとう」は言いずらいらしく、サットンと言われていたのだよ。サットン・タクーってね。今はもう居ないがね。この地で安らかに逝ったよ‥‥‥エリカもきっと戻ったのかもなあ、日本って所に』


 そうか‥‥‥ギルマスもそう思っているんだ。僕もだよ。


 僕は大きく深呼吸をした後、大きな声で皆に言う。


「さあ! 色んな景色を、皆で一緒に見に行こう!」


 皆は立ち上がる。其々の顔には決意と希望の光が見える。



 フレア。僕は君の傍で君を見守るよ。この世界を破滅なんかさせたりはしない! エリカが守った大切な世界だ。それにロリアレットに言われた『君の望みは叶うから心配はしなくていいよ』だから、大丈夫だ。


「さあ! 始めよう! 新たな冒険を。僕達は冒険者だ!」


ここまで読んで下さった皆様ありがとうございました。これからもシルフィー達の冒険は続いて行くのです。何処かでまた、お会い出来る事を願っています。長い間お付き合いして下さって本当にありがとうございました。感謝。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっと追い付きました。 日本に転生したエリカとルシファー。 恵理花と……、瑠司葉? 完全にキラキラネームだね、これは(笑)。 どんな再会をするのでしょうね。 そして、これからもシルフィー…
[良い点] 素晴らしいエンディングでした! 朝から、泣かせないでくださいね。 [一言] いつの日か、また再びの冒険譚を
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