エリカとの別れ
エリカは、ごほっと血液を吐くと再び倒れた。オジュマネルの薬は飲んでいるのに何故? ‥‥‥。
「ごめんなさい‥‥‥薬は‥‥‥飲んだのよ。でも噛んだ時こぼれてしまったのかしら‥‥‥」
フレアが一生懸命に回復魔法をかけてくれている。エリカはふっと笑う。こんな時に何だよ!
「金色の剣二本使って刺したんだもの‥‥‥あの剣は特別な物なのでしょう?」
「エリカ! 喋らないで! 今、フレアが回復魔法をかけているから! だから」
僕は悲しくて泣いてしまった。
「‥‥‥シルフィー、そんな悲しそうな顔をしないで。貴方に逢えて本当に良かった」
「やだよ! そんな事言わないで! まだ見てない景色を皆と一緒に見るんでしょう? エリカ!」
ミュラーがエリカに言う。
「‥‥‥クリュサオールの剣って僕もよく解らないんだ。ごめんよ」
エリカはミュラーに、
「貴方のせいじゃないわよ。気にしないで‥‥‥」
「するよ! だってエリカ回復魔法に反応しないんだもん‥‥‥やだよ! やだよ!」
回復魔法をかけ続けているフレアは涙目になっている。
「ミュラー‥‥‥あの小さかった少年が、こんなに大きく強くなって‥‥‥」
「エリカのお陰だよ。僕の師匠じゃないか‥‥‥こんな所で‥‥‥エリカ」
アリーナがエリカに近づく
「エリカ? 嘘よね。私に勝って、魔王も倒したのよ」
「アリーナ‥‥‥貴方と一緒に旅が出来て楽しかったわ‥‥‥女の子の友達って、こんな感じなのねって思ったわ」
アリーナも叫ぶ!
「エリカ! これからも一緒に旅をするのよ!」
今にも泣きだしそうになりながら、ずっと回復魔法をかけているフレアの手に、エリカはそっと触れる。
「‥‥‥もういいわ。ありがとう。フレア。貴方は特級を持つ冒険者よ。自信を持って。皆を頼むわね」
グリーンの瞳から流れる涙、それを堪えながらエリカの手をとって言う。
「エリカ。私を森から連れ出してくれてありがとう」
「ふふ。あの薬効いているじゃない‥‥‥こうやって、皆にお別れが言える位まで何とかもっているもの」
そこにスライムさんが来た。
「エリカ。どうして君みたいな者が魔王と心中なんかしたんだ!」
「‥‥‥喋るスライム‥‥‥そこからよ。私達が目的を持って旅を初めたのは‥‥‥」
「エリカ! 聞いてる? エリカ!」
僕は何度も名前を呼んだ。エリカは空を仰いでこれまでの事を思い出しているようだ‥‥‥。
「シルフィー‥‥‥楽しかったわ。本当に‥‥‥私は帰るのよ。日本に‥‥‥そして‥‥‥」
エリカはルシファーの方を見た後、そっと目を閉じた。
「エリカーーーー!」
僕は大きくなってエリカのその身体を抱きしめる。その身体はまだ温もりはある。だけど、ドンドン冷たくなるんだ‥‥‥。
「‥‥‥エリカのバカ。こんな別れ方をするなんて‥‥‥僕は‥‥‥どうしたらいいんだ」
スライムさんが言う。
「エリカは解っていたんだ。自分の命と引き換えにしないと勝てないと。魔王と闘うと決めた時から‥‥‥それにたぶん。エリカはルシファーの事を愛していたんだ。きっと、ずっと前から‥‥‥彼女が勇者だった時からね。だから、女性に転生したんだと思うよ」
次回の更新は明日7月7日7:00 に更新です。次回が最終話になります。




