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少年妖精の国に行く

 アリーナが二人の人間を抱えてあの子の家に帰って来た。その人間を見て少年はへなへなと床に座り込む。アリーナは二人を寝かせる。男性はもう冷たくなっていたが女性はまだ温もりはある。だが、もう息はしていない。その女性に少年はゆっくり近寄りしがみ付いて声を殺して泣く。


「‥‥‥僕のせいだ‥‥‥僕が‥‥‥僕が‥‥‥」


 アリーナは少年の肩に手を置き言う。


「彼女は最後まで貴方を心配していたわ。愛されていたのね」


 少年はアリーナにしがみ付く。




 その様子を見て僕も怒りを感じた。何故この少年が狙われたのか、きっとチェンジリングの子供だからだろう。どうすればこの少年を守れるのか‥‥‥そうだ! 元は彼は妖精だ。簡単じゃないか。妖精の国へ連れて行けばいい。オベロンに話して‥‥‥。保護して貰おう!


「僕、妖精王オベロンに会ってくるよ!」


 と、飛ぼうとした時エリカに翼を引っ張られる。


「相変わらずね。もうちょっと落ち着いて考えましょうよ」


「だって!」

 と僕は膨れる。それを見たエリカは、溜息の後、


「まったく‥‥‥ローレンツの気持ちは確認したの? 仮にも今まで人間の子供としてこれまで生きて来たのよ。彼の話も聞くべきなのではないかしら?」


‥‥‥そうだよね。無理やり連れて行ってはさっきの奴と同じになってしまう。


「貴方はどうしたいの?」


 エリカがやさしく問いかける。


「‥‥‥僕は‥‥‥他の子と上手く遊べないんだ。色々なもの(妖精)が見えてしまうから気味悪がられる。それに妖精と話せる人っていないと聞いたよ。だから、僕は変わっているんだってさ‥‥‥。

でも僕を育ててくれた二人は『神から与えられた素晴らしい力だよ』って言ってくれたんだ。シルフィーを見た時、本当に驚いたんだよ。人間に姿を見せてくれるだけじゃなく話も出来るなんてって」


 ローレンツは悲しい表情をして言う。


「僕は人間の所に居てはいけないんだよね。何故僕が狙われるのか解らないけど、僕がこのままここにいたら犠牲になる人が出るって事でしょう? そんなのは嫌だ。こんな悲しい思いはしたくない」


 僕は聞いてみる。


「君を妖精の国に連れて行くのは問題ないと思うよ。僕達の王は寛大だ。でも君が人間の国に未練があったら‥‥‥無理やりつれて行くのは違うと思んだ。それが一時的な避難方法だとしても。君から望んで欲しいな。妖精の国に行きたいってさ」


 にっこりと笑顔で彼を見る。ローレンツも笑顔で返してくれた。


「シルフィー、僕を妖精の国に連れて行ってよ。僕の未練は育ててくれた人に対してだけだよ。その二人はもうこの世にいない。‥‥‥冒険者の皆さん! 二人の敵を討って下さい! 僕を守ってここまで育ててくれたのにお礼も何も言えなかった‥‥‥悔しいよ」


 大粒の涙を流して言うローレンツにアリーナが言う。


「任せてよ! 私達は冒険者の中で一番強いパーティーよ!」


 と胸を張って言う。そしてウインクをして見せる。


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