魔人
ミュラーは終始不機嫌だった。
「ミュラー、どうしたの? 何か気に障った事でもあった?」
「何でもない」
そうぶっきらぼうに言う。どうしたんだろう? 普段から感情的になる事はなく、いつも穏やかなのに。
僕は皆に言う。
「明日、僕と一緒にその子に逢いに行って欲しいんだ」
「いいわよ。ねえ皆」
エリカは笑顔で言ってくれた。ミュラーの様子は気になるけど‥‥‥。
翌朝、僕達はあの家に向かう。ミュラーは昨日はずっと不機嫌だったけど、今日はいつものミュラーだ。良かった。
まず、エリカが家のドアを叩く。中から小さな男の子が顔を出す。
「どなたですか?」
そこへ僕が前に出て
「来たよ! また一緒に話そうよ! 仲間達も連れて来たよ!」
僕の顔を見て安心したようにほっとしている。
「本当に来てくれたんだ! 嬉しいなあ。どうぞ! 中に入ってよ!」
彼に案内されて入る。人の気配がしない。
「君のご両親は不在?」
「うん。仕事に行ってるんだ。今日は遅くなるって言っていたよ」
こじんまりとした部屋だが、キレイに片付けられている。
僕をその子が引っ張る。
「あのさあ。この人達って君と一緒にいるっていう冒険者だよね」
嬉しそうに聞いてくる。
「そうだよ! 紹介するね!」
「黒髪の彼女がエリカで、赤い髪の彼女がアリーナ、金髪の彼女はフレアで白銀の髪の彼がミュラーだよ」
「僕はローレンツ、よろしく」
とモジモジする、その時嫌な気配を感じた。それは皆同じで緊張が走る。その瞬間ドアが破られた!バーン! バキバキと。とっさにエリカは少年を庇い奥の方へ移動する。アリーナがその部屋に入ってきた者の前に立つ。
「あなたは誰? 家にこんな事をして! 随分乱暴な事をするのね。ここになんの用事があるっていうの?」
その者の気配は‥‥‥魔族の気配だ。これが魔人と言われる者か‥‥‥フードを深く被っているので良く見えない。
「その小僧に用があるんだ。他の奴等に用はない! 出て行け!」
アリーナが怒る。
「何よ! 勝手ね。その子は渡さないわ。どうしてもって言うなら私を倒していく事ね。残念だけどここは通さないわよ」
アリーナはブレスレットを外す。ドラゴンのオーラが当たりを包む。魔人は怯む。
「なっ! これは! そうか貴様‥‥‥ドラゴンか。くそう! そんなのとやってられっか!」
逃げようとする魔人にアリーナが叫ぶ。
「待ちなさいよーー!」
逃げる魔人を追うアリーナ。途中人間が倒れているのを発見する。二人の人間は酷い怪我を負っていた。一人の男性は女性を庇う様に倒れている。その男性は息をしていない。女性もかろうじて息はある。だが‥‥‥出血がひどい‥‥‥あの魔人にやられた事は想像が出来る。アリーナは女性を抱き上げる。
「‥‥‥あの子を‥‥‥助けて‥‥‥ローレンツを‥‥‥」
息も絶え絶えに話す女性にアリーナは、
「大丈夫ですよ。彼なら私の仲間が保護していますよ。無事ですよ。安心して下さい」
「そう‥‥‥良かった‥‥‥」
そう言って女性から力が抜けた。
 




