その国は召喚術を行った
エリカが召喚される前のその国。今は忘れられた国。
「まだわからないのか! 勇者の名前は!」
「調べておりますが未だにわかっておりません。魔人の妨害に遭って何名かは命を落としております」
「この世界の危機だというのに‥‥‥」
臣下の一人が王に言う。
「国王陛下、ギルドに協力を願い出てはどうですか」
「何を言う。あんなエルフに私が頭を下げろと言うのか! ふざけるな!」
「‥‥‥魔王が復活した事を知る者は私だけだろう。私は予知夢を見る。そして見てしまったのだ。魔王が復活する所をな。あの恐ろしい魔王に対抗出来るのは勇者しかいない。なのに‥‥‥」
国王と呼ばれていた人物は険しい顔をする。
「何としても突き止めるのだ!」
そしてある日、見つけたのだ。勇者の名前をそれはわざと削り取られて、はっきりとは読み取れない。
だが、そこを魔法使い達が修復する。そこには、
『エリカ。。。。』の文字が浮ぶ。後は修復出来なかった。国王は魔法使い達に禁忌の魔法を使わせた。
勇者召喚の魔法陣。この世界とは違う世界から人間を呼ぶ、それは禁忌である。魔法使いなら誰もがその事は知っている。その禁忌を犯してしてでもそれは必要なのだと皆覚悟した。
召喚が上手く行ったとしても、その後どのような事が起こるのかその国の王もわからなかった。しかし、王はそれを行うように命令する。
大勢の魔法使いが魔法陣を描く。そして、それは行われた‥‥‥‥‥‥。魔法陣が輝く‥‥‥。
魔法陣から現れたのはひとりの少女だった。その様子を見た国王は怒る。
「何故だ! 魔法陣は成功したと言ったではないか!」
国王は部屋の中をせわしなく歩く。イライラしているのがわかる。そこで、何故ここにいるのかわからないといった表情を浮かべる少女が、国王に向かって笑顔を見せる。
「失敗だ。この世界は終わる‥‥‥目障りだ! そんな小娘始末してしまえ! 」
その中の、ひとりの魔法使いが少女をその場から連れ出す。手を引かれて歩く少女。
そして、森の中を歩く。魔法使いはひとりごとのように呟く。
「君は勇者だ。間違っていない、間違っていない‥‥‥」
そして、湖の畔に立つ。魔法使いは少女に向かって言う。
「ここに居なさい。迎えは来る」
そう言ってその場を離れた。少女はひとりになった。いつまで経っても迎えは来ない。少女はひとり泣いた。少女の泣き声に哀れと思った妖精達は少女に声をかける、が少女にその言葉は聞こえない。
湖の畔に美しい女性が現れる。ヴィヴィアンだ。ヴィヴィアンは少女を抱えて優しく頭を撫でる。
「一緒に行きましょう。これからあなたに色々教えないとね。私はヴィヴィアンよ。宜しく」
「ヴィヴィアン? 私はエリカ」
少女は泣きやみ、笑顔でヴィヴィアンを見つめる。
「ああ。エリカ‥‥‥貴方は、ここにまた戻って来てしまったのね。我等の創造主は気まぐれね、そして残酷だわ」
いつしかヴィヴィアンの腕の中で安心して眠るエリカ。そのエリカを複雑な気持ちでヴィヴィアンは見つめていた。
 




