次の冒険へ
冬の季節は過ぎて日差しが温かくなって来た。セルシウス達も満足して帰って行く。
雪も溶けて小さな花が咲き始める。花の妖精達が飛び交う。毎年だけどこの季節が一番好きだな。
「この街を出るわよ。違う街へ行きましょう」
エリカが言う。驚く僕達に当然の様に。
「街の人達に挨拶をしないといけないわね。特にシルフィーは皆に愛されているから、急に居なくなって しまうと不安にさせてしまう、それに」
僕の顔に近づき、
「貴方も違った景色を見たいでしょう?」
その言葉にわくわくが止まらない!
「うん! 僕、見たいよ。違う景色! 連れて行ってエリカ!」
街へ行く。沢山の人間が僕の周りに集まる。あの家を貸してくれた人間にも挨拶をする。勿論シルキーにも。
「今まで本当にありがとう。シルキー! 君のおかげでこの街で快適に過ごす事が出来たよ」
シルキーの絹のドレスの布が擦れる音がする。その音はエリカ達にも聞こえた様だった。2人は嬉しそうに微笑む。
ギルドの受付のお姉さんにも挨拶をする。
「シルフィー……行ってしまうのですね」
と、寂しそうに言う。
「僕達妖精は、人間達の傍にいつも居るんだよ。ただ、恥ずかしがり屋だから姿は見せないけど一緒にいるんだ。だから、助けが必要な時は思い出して、今の言葉をその時は僕達妖精は力を貸すから」
そして、皆に見送られて街を後にする。グリフォンに乗って飛び立つ皆に手を振る。ありがとう! と言ってくれている。
僕は楽しみで嬉しくて、2人の周りをキラキラさせながら飛び回る。しばらく飛んだ後
「ここからは歩きましょう」
グリフォンから降りて歩く。春は沢山の花が咲き美しい。その景色を眺めながら歩く鳥達の声も心地いい。ミュラーも嬉しそうだ。勿論僕も!
「少し休みましょうか? 次の街まではまだあるし、この綺麗な景色を見ながら歩くのは気持ちいい。それに」
と、道の脇に座る。
「シルキーから貰ったお弁当があるの」
ミュラーは飛びつく。
「わーい! 美味しそうなサンドウィッチだー!」
と手を伸ばす、皆で食べた。その後は僕は木の枝で昼寝をする。
すると、じゃぼん! と誰かが湖に落ちた。
「うわーっ!」
ミュラーの声だ。
「誰かが足を引っ張る!」
と、ジタバタしている。見てみると、確かに何かがミュラーの足を掴んでいた。その掴まれた足に向かって僕は優しく言う、
「ルサールカ、悪戯はダメだよ」
掴まれた足は開放された。ミュラーは陸に這い上がり息を乱す。そんなミュラーに
「ゴメンよ。温かくなって氷が溶けたから、ルサールカが嬉しくてつい、湖の中に連れ込んだみたいだ」
ミュラーは、
「大丈夫だよ。ビックリしたけど」
ふと、僕は気になったその名を呼ぶ。
「ウンディーネはいるの?」
美しい女性の姿をした精霊が姿を現す。
「ここにいるわよ。貴方シルフィードよね。どうして人間に姿を見せているの?」
美しい顔が歪む。
「僕は人間が好きだから同じ景色を見たいんだ。それにオベロン王からも許しを貰っている」
僕は、ウンディーネの近くに行くそんな僕に、
「変わっているわね。人間に騙されたり、利用されて私達は悲しい思いをすると言うのに……」
「? …その人間は! ……」
とエリカの顔を見ると、その表情が変わる。キッとエリカを見て言う、
「貴方、この世界の人間ではないわね。何処から来たの? それに……何故、私達と同じ匂いを持っているの?」
 




