アームレスリング
お店のお客達と話していたら、アリーナ達が一階の食堂に降りて来た。
「お腹空いたー」
と少し寝ぼけながらアリーナが言う。ミュラーも一緒だ。
「ちょっと早いけどご飯にしましょう。この店のお勧めをお願いしてもいいかしら?」
「おお。任せな! そこのひょろっとした坊主はもっと食べた方がいいなあ。それで剣姫の弟子だ何て大丈夫か?」
それを聞いたアリーナが怒る。
「今、何て言ったの? ミュラーはゴールドカードの冒険者よ! それに強いわ!」
この流れはいつものあれかな? アリーナがテーブルを動かす‥‥‥やっぱりだ。
「さあ! アームレスリングをしましょう! 私に勝てるかしら?」
ふうー。好きだよね、アリーナ‥‥‥何処へ行っても競技場を作ってしまう。簡単に出来てしまうからね。それに、力比べならこんなに分かりやすいものはない。アリーナはその場に居た男達を煽る。
エリカも半ば諦めて観戦するようだ。こうなったらアリーナは止められない‥‥‥。
好きにさせよう。僕達もそう思う。ミュラーは言われ慣れている言葉なので気にしていない。見た目は細い身体だからね、筋肉モリモリのマッチョからすれば簡単に捻り潰せると思われても仕方ない。というか、これって単にアリーナがやりたいだけなのではないだろうか。
もう、本人はやる気満々だ。男達も、そんな感じでアリーナと向き合う。
‥‥‥‥‥‥うん。こうなるよね、知ってた。床に沢山の男達が倒れている。ショックだよね。女の子に瞬殺されたんだ、こうなるよね。今までも沢山見てきたよ。満足そうなドヤ顔のアリーナとは対照的だ。それを見たフレアは、
「アリーナってスゴイ! 強いのね。カッコイイ!」
そっか、フレアは初めてだったね‥‥‥。僕も初めて見た時はそんな感じだったなあ。フレアの驚いた表情が新鮮だ。そこに食事が用意される。店主はアリーナに、
「お嬢さん強いなあ、さっきは悪かったよ。悪気があって言った訳じゃないから、許してやってくれ」
「分かればいいのよ。私に勝ったのはミュラーとエリカだけだもの」
その言葉を聞いて、床に倒れている男達は絶句する。
「ほ、ほお‥‥‥それは凄い‥‥‥」
と店主まで言葉を失う。
並べられた料理を見てアリーナは興奮する。
「わあー! ここでお魚が食べれるなんて思わなかったわ。嬉しい!」
「ここは商業ギルドもある大きな街だから、大抵の物は揃う。喜んでくれてこっちも嬉しいよ。さあ、食べとくれ」
そこで、クラ―ケンの足を見つけてアリーナは興奮マックスになる。
「きゃー! これってクラ―ケンの足よね! これ美味しいのよ! 嬉しい!」
「よくこれがクラ―ケンの足だって解ったなあ」
「だってそれ、エリカ達が退治したものだから覚えているわよ! 新鮮な足ってもっと美味しいのよ」
床に倒れている男達はもう立ち上がれない。うん! その気持ち解るよ。性別や見た目で判断しちゃあいけないんだ。店主が大きな声で言う。
「お前らいつまで床で寝てやがる。暑いこの時期に、床は冷たくて気持ちいいのは解るがシャキッとしろや」
店主に言われてごそごそと起き上がる男達、エリカ達はもう食事は終わっていた。




