ダイアウルフ
地上に出てエリカ達と会う。街の人達も家の中でこの冬は過ごし、日差しが暖かな日に数人で集まって狩りに行くと話し合って決めたようだ。精霊を怒らせた事に対して罪の意識を持つ者も多かった。自分達のせいではないが、人間が携わっていた事に変わりはない。なので今年の冬は冬の精霊や妖精達に場所を預け楽しんでもらい、自分達人間は家の中で静かに過ごそうと言っていた。
こんな事を言ってくれる人間もいるのだ、僕達は大切にされている。
人間は他を騙し、奪う……前世でそういう人間を沢山見てきた、
パワハラ上司の下、身体を休める事が出来ず体調が悪いと言っても病院には受診しているのだろう? 薬だって貰っているだろうに! 自己管理がなってない! と言われ無理をして毎日仕事をしていた……苦しい……苦しい……持っている薬を全部飲んだ。吸入も何度もした。気管支拡張剤は何度も使用してはいけないと言われていた。それでも……とうとう動けなくなった……何とか救急車を呼んだ……酸素マスクをされる……何か聞かれるが答えられない。自分の呼吸音しか聞こえない。それも……次第に分からなくなった……そして、僕は死んだ。先生ごめんよ、
『喘息での死者は今でも少なくない。だから、無理はしないように』夜中発作が酷い時、点滴をされながら言われたっけな‥‥‥入院を勧められたけど上司の顔が怖くて……それで、こうなった。上司を恨んではいない、僕が自分の病気についてしっかり理解していなかったからだ。今はこうして何も気にせず楽しく暮らしている。だから、誰かの為に出来る事があるのなら……僕は何でもやろうと決めた。と言うか……見ていられない、僕の悪い癖だ。
エリカとミュラーはダイアウルフを討伐に行く、他の冒険者も一緒だ。ジャックは本当に居ないのか、僕も行こう。もし何かあったら、今の僕には仲間達がいる。大丈夫だ。
吹雪の中、エリカ達冒険者はダイアウルフと戦っていた。ミュラーは雪のせいで、体勢が上手くとれずよく転んでいた。そんな中エリカは凄い。雪の上とは思えない程に走り回っていた。
「ミュラー! 足元の雪に気を取られ過ぎ、前をしっかり見て!」
と、エリカから声がかかる。そうだなあ、少し助けた方がいいかな? ミュラーに近づく、
「大丈夫?」
ミュラーに言う、
「大丈夫に見える?」
息を切らしながら、辛そうだ。
「そう見えないから聞いてる。助けはいる?」
息を整え直してミュラーが言う、
「欲しい! 雪や吹雪が邪魔でバランスがとれないし、前もよく見えない!」
「解った!」
僕は風で吹雪を和らげ、ミュラーの足元の雪を風で飛ばし、周りを固める、
「後は頑張って! ダイアウルフが来るよ」
「ありがとう!」
と言ってミュラーは走る。
ジャックは居ないようだ。ミュラーもコツを掴んだようで、雪の中でも走れるようになっていた。
へえー飲み込みが早いと思っていたけど、もうバランスがとれるのか。時々転びそうになるけど、まあ合格かな。沢山ダイアウルフを確保出来た。魔法使いがそのダイアウルフを収納魔法で運んでくれた。
街へ帰る。ギルドの前にはダイアウルフが山と積まれる。冒険者達も満足気だ。




