王妃と人間
エリカとスライムさんに言われてしょげていると、ミュラーが
「大丈夫。皆解っているから、シルフィーはこの国の事を思って言ってくれたんだよね。でもさ、この国にも事情はあるから、そこはやっぱり相談しないとね」
相変わらず爽やかな笑顔で僕をみる。やっぱりミュラーの笑顔には癒されるなあ。
王様はそんな僕を見て、
「我等が他の者達と距離を置いている事は知っているようだな。城に帰って話そう」
他のモルガン達はロボットに夢中だ。僕達は王様と城に向かう。
「この国に滞在している間は城の中で寛いでくれていいぞ。また、あの大陸に連れていってやろう」
そんな話をしながら城に帰って来た。今度は王妃様が出迎えてくれた。
「どうでしたか? 何か面白い物でも見つけたのかしら」
王様は嬉しそうに
「そうだな、昔あの国で使われていた動く人形を持って来たぞ。民達がその人形と何かやっておるよ」
「それは凄いですね。民の為になるのなら喜ばしい事です」
王妃様は人間だと聞いた。人間のままなのかな? この場合確かその族長と番になったらその種族と同じになるって聞いた事があったような‥‥‥まあ、モルガンは見た目は人間と変わらないから容姿は問題ないとしても、人間だと命の長さが違ってくる。でも、王妃様って綺麗だ‥‥‥。つい見惚れてしまった。それに気づいた王様が
「シルフィー、我が妻は美しかろう? 私の一目惚れだよ。それに慈悲深い、民を思う気持ちは王妃としてふさわしい」
そう言った王様の表情が一瞬曇って見えたのは、見間違いかな?
「さっきの話の続きをしよう」
「私達は愛し合い、アリアの気持ちを確認してこの国に来てもらった。アリアは王妃としてよく務めを果たしてくれていた。だから、アリアの両親に私は合わせてあげたかったのだ。だが‥‥‥そうすべきではなかった。今でも悔いておる」
王様は渋い顔しながら話し始める。
「アリアは私の妻となり、妖精の国の住人になったのだ。当然その命の長さは人間と違う。人間の国へ帰ったアリアは、人間達から恐れられる存在となってしまっていたのだ。本当はそっと両親の姿を見て帰るつもりだったのだが、見つかってしまったのだよ。私は海岸でアリアの帰りを待っていたが、帰って来ないので迎えに行った。すると、アリアは牢に入れられていた。アリアの両親は他界し居なかったのだ、だが、アリアの事を覚えていた村人はアリアの存在を悪と決めつけた。死んだものと思っていた者が生前と変わらない姿で現れたのだ。仕方あるまい。そこで酷い拷問を受けていた。私は魔法を使いアリアを牢から出してここに連れ帰って来た」
「私は妻を傷付けた人間が許せなかった。だから、私は人間達と距離を置く事とした。外の世界と離別したのだ。私達はこの海底で静かに暮らしていく事にした」
その話を聞いていたアリーナが泣いていた。エリカはアリーナに寄り添い肩を抱く。
「酷い‥‥‥何故、悪だと決めつけるのかしら」
スライムさんは
「人間は弱い生き物だ。エリカの様な人間は特別だ、普通ここまで強くなれない。だから、恐れるのだよ、人間以外をね。ドラゴンなんか人間にとって狩る者、モンスターだ。アリーナも解っているだろう」
 




