モルガンの民
起動したロボットが僕の方に来る。困った、これをどうしよう‥‥‥。扱い方なんて知らない。でも、声を認証したって事は声で動かせるって事だよね? ロボットが僕の前で止まる。ええーい!
「ここにある柱を持ち上げて」
すると暫く考えて、柱を持ち上げた。わわわ! 動いた! どうしよう! 僕はもう一度言う。
「柱を降ろして」
ロボットは柱を戻す。その様子を見ていた王様は
「おお、そうやって言葉で言えば良いのだな、この国の人間達と言葉は違うがそれでも通じるのだな」
王様は顎髭を摩りながら言う。
「きっと首飾りから言葉を覚えたのでしょう。それにしても凄い技術だ。まさに古代文明だ!」
うーん! 何だかワクワクしてる! 他にもあるのかな?
「こっちにもそれと同じ物があるよ」
とミュラーが指を指す。行ってみると、同じロボットだった。僕は同じように首飾りに向かって叫ぶ。
むくっと起き上がるロボット。王様は
「この二体の人形を使えば農作業も楽になる。良い物を見つけてくれた。感謝する!」
良かったのだろうか? それにこのロボットって何をエネルギーとして動いているのかな? 聞いてみるか?
「君達のエネルギーの元は何が必要?」
するとシュルシュルと細い管が伸びて海面に降ろされる。海水でいいのか! 凄い! これでエネルギー問題は解決だ。それにしても塩分で腐食したりしないんだ、それだけ特別な金属を使っているって事か。
一旦城に戻ろうと王様が言った。僕達はロボット二体と一緒に来た道を戻って行った。丸いドームの壁は魔法の結界で中の国は守られている。僕達は、すっとその壁を抜けて中の街に入る。僕が風の力を使ってそっと皆を地面に降ろす。
「楽しかったね!」
と僕が言うと、エリカは
「まだ足りないわ。もっと見たい」
そう言って瞳を輝かせて言う。そんなエリカに王様は、
「では、暫くこの国に滞在するといい」
皆一斉に
「いいんですか!」
と、上手くハモる。だって他と交流を避けているっていうモルガンの国だよ。そうなるよね。
その理由もそのうちに解ってくるだろう。王様はロボットに向かってあの首飾りを持って話しかけている。王様も持っていたんだな。何だか楽しそうに話している。近寄って聞いてみる。
「そうそう、そっと抜くのだぞ、野菜を傷付けずにな」
どうやら、農作業を教えているみたいだ。他のモルガン達も集まって来る。こんなにいたんだ!
どうやらロボットはAIが搭載されているようだ。学習能力があって教えると覚える。言葉もそのうち覚えていくだろう。役に立てたかな? 喜んでくれるといいなあ。僕はキラキラさせて飛ぶ。
それを見た他のモルガン達も笑顔になる。
「妖精の光なんて久しぶりに見たわ。キレイよね」
王様も笑顔だ。自分の国の民が喜んでいる所を見るのは、王としても嬉しいのだろう。
「我が国の民達よ。古き時代の人形がこのシルフィーによって目覚めた。これらは我々の力になってくれる。これで少しは楽になるであろう」
皆が僕を見る‥‥‥照れる‥‥‥。エリカ達も笑顔で僕を見てる。そうだ! と僕はある事を思いついた。
「王様! クロック・トムテをここに呼んでみてはどうでしょう? きっともっと知らなかった何か見つかるかも!」
そこまで言ってハッと思い出す。そうだった今は他の妖精達とも距離を置いているんだった‥‥‥。
ちょっとしゅんとする。エリカは僕の翼を摘まんで引き寄せて言う。
「全くもう、せっかちなんだから。シルフィー、ちゃんと他の人の話も聞いて、意見も聞いて、それからよ」
「そうだな。シルフィー、君の言いたい事は解る。だが、一人で納得して解決しようとするのは違う気がする。もっと他の人の話も聞いてはどうだ? 何もシルフィーのする事が悪いだなんて思ってはいないぞ」
スライムさんに言われてしまった。そうだよね、皆の話を聞いて答えを相談しよう。




