古代の遺産
僕は飛び回って色々見ていたが、エリカ達は黙って不思議そうに見渡す。僕は独り言のように言う。
「この国にいた住人って科学の進んだ星の人間で、魔法ではない力を持っていた。って事なのかな」
王様は、僕のその言葉に対して、
「そのカガクという物が何か解らないが、私達が使う魔法と似た力を持っておった。それに魔道具の様な物もあった。ここにある物より大きな機械もあった。シルフィーはそれを知っているのか? 首飾りを見てお前だけが他の者と違った反応をしていたからなあ」
わあー! 王様鋭い! 前世で同じ様な物を使っていました。なんて言えないよなあ。
「いえいえ! 僕だってビックリしてますよ。この首飾りって他にも何か出来たりするのかなあって」
「そうだな、これを使って遠くにいても話せるし、さっき見たように姿も映せるようだ。他にも出来るのだろうが、機械は苦手でね」
「そうかあ、クロック・トムテが見たら喜ぶだろうな」
つい名前が出てしまった。
「そうだな、クロック・トムテなら喜んでここに居座るだろうな」
そう言って王様は僕と目を合わせて笑った。
「シルフィーはここにある機械を扱えるのではないのか?」
「無理ですよ! 王様!」
こんな代物、僕が知っている科学技術を遥かに超えている。まあ、あの首飾り位なら‥‥‥と好奇心の虫が顔を出す。そんな僕の様子を見た王様は、フレアに
「その首飾りをまた貸してはくれぬか?」
フレアは首飾りを渡す。王様はもう一つ同じ首飾りを取り出す! そしてその二つを合わせる。重ねた後それを離す、するとその二つの間に映像が写し出される。声や音楽まで聞こえる。当時の様子がそこにあった。ギルマスだろう若いエルフと当時の人間が楽しそうに踊っている。
エリカは口に手を当て
「‥‥‥凄いわ。これって千年前の物よね‥‥‥カメラ、ビデオ‥‥‥ってこの世界にあったの? この世界でいう記録を移す水晶の様な物ね」
「ほう、エリカとやらこれが何か解るのか」
「いえ、解りません‥‥‥シルフィーは前世でこれと似た物を使っていたんじゃないの?」
おおーエリカ、今それを言うかな? んー王様の視線が‥‥‥。
「僕が知っている物より複雑だよ。取り扱い説明書みたいな物でもあれば別なんだろうけど、それでも難しいかな?」
王様は
「そうか、シルフィーは前世の記憶持ちか、珍しいの。転生すると記憶は無くなるのだが、そう言うエリカも詳しそうじゃないか」
機嫌の良い王様はよく話してくれる。エリカはそんな空気をよく解っている。
「私はシルフィーみたいに前世は覚えていません。ただ子供の頃の薄っすらとした記憶があるだけです」
エリカは自分が召喚者である事は言わない。その判断は正しい。召喚者はこの世界に居てはならない存在だから‥‥‥エリカはそれを知っている。
それまで何も話さなかったミュラーが、機械の前で首を傾けながら言う。それってきっと人型ロボットだよなあ。AIみたいな物で動いていたのかな?
「これって今でも動くのかな?」
と話すと、アリーナまで
「そうよね。首飾りが動くんですもの、動くんじゃない? シルフィーちょっと触ってみてよ」
そうなりますか? 皆気になるよね? 僕も気になる! そうだ!
「王様、首飾りを貸して下さい」
僕は大きくなって首飾りを持った。首飾りに向かって、
「電源起動!」「スイッチオン!」
などと、叫んでみた。動く訳ないよな。ピピピっと機械音がする。まさか! 動くの? 驚く僕を余所に王様は大喜びで、
「おお! この国の人間達が使っていた物だ! それで荷物を運んでいたりしておったよ」
‥‥‥首飾りがどうやって翻訳したのか解らないが、音声認識で起動はするみたいだ。
【クロック・トムテ】妖精の中で一番器用で金属加工や時計台を作ったりぜんまい仕掛けの人形や鳥などのロボットも作ったりする。
彼等は自分で作った精密な風車で台風や嵐を起こす事が出来る。
 




