小さな村
大きなグリフォンが二体青い空を飛ぶ。その背に僕達が乗っている。フレアは初めはその高さに怖がっていたが眼下に広がる壮大な景色に次第に魅了されていく。
「空を飛ぶのって気持ち良いのね。自分が鳥になった気分です」
そう言って嬉しそうに瞳をキラキラさせて移り行く景色を見ている。
ミュラーが乗っているグリフォンもエリカのグリフォンの後をしっかり付いて来ている。
♢♢
季節は夏、ミュラーの苦手な季節がやって来た。今は空を飛んでいるので暑さは感じていないようだ。
アリーナも慣れて来たといってもこれが二回目の旅立ちとなる訳で‥‥‥まあ、大好きなミュラーが傍にいるんだ彼女は幸せなんだろう。
次に目指す目的地は海に近い小さな街だ。ギルドはあるのだろうか? 大抵の街に大きさは違ってもギルドはあったが、今回の目的地は小さい。なければ無いで何とかしよう。眼下の景色も変わって緑豊かな森から離れて、小さい街外れの村のような場所が見えてきた。エリカのグリフォンは下降し始めた、その村に降りるんだね。続いてミュラーの乗ったグリフォンも下降して付いて来る。村に降り立つとグリフォンの大きさに驚く村人が集まって来る。
僕達がグリフォンから降りるとこの村の一番偉そうな人間が僕達の所に来た。その人間にエリカが言う。
「私達は冒険者です。暫くこの村に滞在する事を許して貰えないでしょうか?」
その年老いた人間は
「お前さん達は何処かへ向かう途中なのかな?」
その人間にエリカはハッキリと言う。
「失われた大陸を探しています。それでここまで来ました」
それを聞いた人間の表情が強張る。
「あんた達も宝を探すと言うのか?」
エリカは嬉しそうに答える
「まあ! 私達の他にも同じ様に探しにやって来た者もいるのですね!」
大きな溜息を吐いてその人間は言う
「ああ居たよ。だが帰ってきた者はおらん。それでもその宝を探しに行くと言うのか」
エリカは笑顔で答える。
「はい! 私達は冒険者ですから」
そこで、エリカ以外の僕等に目を向ける。そして、僕を見て驚く。そうだよね。普通そう言う反応になる。今までもそうだったからね。
「そ、そこにいるのは‥‥‥妖精なのか?」
僕は集まった人間達に言う。
「僕は、風の妖精シルフィー宜しくね」
人間達が騒めく。
「妖精が我々人間に姿を現すなんてそれも言葉を交わしてくれる‥‥‥あんた達本当に冒険者なのか?」
エリカは冒険者登録証を見せる。キラキラ光るプラチナゴールドのカード。ミュラーもゴールドカードを見せる。それを見た人間達は納得したようだ。
「間違いは無いが‥‥‥まさかここで妖精と特級クラスの冒険者と会うなんて思わなかったよ」
さっきまでとは違った空気になる。何故かここに居る人間達皆がほっとしている。エリカは
「この村で宿を借りられますか?」
それに対して年老いた人間は
「宿という程りっぱな物ではないが、私の家の近くに空き家がある、自由に使ってくれていい」
「それではそこをお借りします」
その人間が案内するように歩き出す。その後を僕達は付いて行く。比較的大きな家の隣に小さな家があった。
「ここだよ。うちの離れとして使っていたが使っていた息子達は大きな街へ行くと言って出て行ってしまったからね。好きに使ってくれて構わないよ」
僕達は今日からこの村に暫くお世話になる事になった。村長さんらしい人間も悪い人間ではなさそうだ。




