表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/206

神の怒りは今

 エリカは瞳を輝かせてギルマスを見つめる。


「その海に沈んだ大陸にはその時の人間の亡骸も、もう残ってはいないだろう。だが、宝は残っている可能性はある。だが、あの大陸は神の怒りを買った所だ。神の怒りに触れるような行動は止めた方がいい」


エリカは明るく言う。


「もう二千年以上経っているのでしょう? 当時の人間も居ないじゃないですか、だったらもう心配ないですよね?」


 そこでずっと黙っていたミュラーが言う


「エリカ‥‥‥神の怒りはなかなか収まらないんだ。許す優しさも持ち慈悲もある、だからなのか、一旦その怒りに火を付けてしまうと収まらないんだ。その失われた大地の欠片が見つかったとしたら、その事で再びその炎に油を注いでしまうかも知れない」


 そのミュラーの言葉を聞いてもエリカは諦めない。


「もう終わった事なのに? 神ってそんなに心が狭いの? 嫌な事をどれだけ引きずっているのよって言っているの」


‥‥‥エリカなかなか言ってくれる。確かにそうだよね? もう時効でいいんじゃないかな? 僕もそう思うけど、ミュラーは違うんだね。ミュラーは、


「エリカには解らないよ! 神って怖いんだ!」


 ミュラーにとって神は恐怖の対象なんだね。エリカは萎縮しているミュラーの背中をバンっと叩き


「そんなに怖がっていたら相手の心は読めないわよ? 本当にまだ怒っているの? そんなの解らないじゃない! そんな昔の話なんか忘れたってにっこり笑って言うかもよ」


‥‥‥エリカ、君ってこの世に怖い物ってあるの? その言葉を聞いたギルマスも笑い出す。


「そうだな! エリカの言う通りかもなあ」


 そう言って再び笑う。ひとしきり笑った後に、


「私だってそんな話すっかり忘れていたんだ。シルフィーに聞かれるまでね。私達の神はきっと笑ってくれるよ」


 そう言って優しくミュラーを見る。ミュラーはそれでも首を横に振って嫌がる。


「ダメだ。ダメだよ!」


 そう言って何処かに走って出て行ってしまった。


「ミュラー‥‥‥」


 アリーナはきっとその後を追って行きたいのだろう。だが、これはミュラーが向き合わないと行けない事なのだと思う。アリーナもきっとそう思ったのだ。だからミュラーを一人にした。




 ミュラーは森の中を走る。木々を飛び越えその山の頂上まで来た。一人遠い空を眺めて考える。


 クリュサオール‥‥‥どう思う? 僕等の神は笑って許してくれるのだろうか? それとも‥‥‥


♢♢


僕達はギルマスに礼を言った。そして、エリカを見つめてギルマスは言う。


「行くんだね」


「はい! 私は冒険者ですから」


 エリカはそう言ってギルマスに笑顔で答える。ギルマスもそんなエリカの笑顔を見て言う。


「良かろう。その場所を教えよう。だが、今もそこにあるとは限らないよ。時間は随分経ったからね、海の潮に流されてしまって宝だってもう朽ちてしまっているかも知れない。それでも?」


 その言葉に同じ様にエリカは答える。

「もちろんです! 見つかったら一番にギルマスに伝えますね」

 それを確認したように机の引き出しを開けて何かを出す。


「では、地図を渡そう。フレア持ってお行き。君も見ておいでシルフィー達と一緒に外の世界を」


「はい! おじ様行って来ます」

 フレアはギルマスの頬にキスをする。


「ここを離れる時は声をかけてくれよ。黙って行かないでくれ」


 少し泣きそうな声に聞こえる。ギルマス本当にフレアを大切に思っているんだなあ。そう言えば僕が外へ行く時、オベロンやティターニアもこんな顔してたっけ、と思い出す。僕も愛されているんだな、何だか嬉しい。


 僕達はギルドを出て家に帰る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ