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魔法の枝を持つ木

 僕はギルマスの傍に行く。

「ギルマス。その話を詳しく話して欲しいんだ。いいかな」


 ギルマスはフレアの髪を撫でながら、

「そんな古い話を聞いてどうするんだい?」


「スライムさんが気にしているんだ。どうも色々な人間に相談されるみたい。スライムさんって知らない事が自分にあるなんて! って思っているでしょう? だからかな? それに僕達も気になっているんだ」


「そうか、では話そう」


「今から千年前、もっと前だったかも知れないが、それ程大きくない大陸に神殿があったんだ。どんな神を祭っていたのか解らないがその国には沢山の人間達がいて普通の暮らしをしていた。はずだった。その国は神殿への供物で豊かになったんだ。その為なのか彼等は信仰をないがしろにした。それに神が怒り大陸は海に沈んだ。沢山の宝を抱えたままね」


「その失われた大陸の財宝を人間達は探しているのだろう」


 僕はギルマスに聞く

「その沈んだ大陸って何処にあったの? その時ギルマスはその事を知っていたのでしょう?」


 ギルマスは渋い顔をすると

「シルフィー、その大陸には関わらない方がいい。まだ神の怒りは静まってはいない」


「それってどういう事? 神に怒りはどうしたら治まるの?」

「どうしても知りたいと言うのなら、明日もう一度ここに私の所に皆で来なさい。そこで話そう」


 そう言われフレアとギルドを後にした。


 フレアの肩に乗り考える。神か‥‥‥天界についてはきっとミュラーが詳しいと思うが、そんな昔の事を知っているだろうか。うーん‥‥‥。フレアが僕に言う。


「森に魔法の枝を持つ森の妖精がいるの。会って話を聞いてみない?」


「そうだね。その木も長く生きてきた木の妖精なんだよね、知っているかも。フレア、その木の妖精の所に案内してくれる?」


「もちろん!」


 フレアとその木の妖精の元に来た。その木は大きく、目はないのに僕の心の中まで見透かされているような気持ちになる。その大きな木から声が聞える。


「フレア。久しぶりだね。そのシルフィーもまた変わっている、今日はどんな話が聞きたいのかな?」


「僕はシルフィー、風の妖精だ。君に聞きたい事があって、ここに来た。君は海に沈んだ大陸の話は知っている?」


 その木の幹に触れながら聞いてみる。


「知っているよ。私の木はその神殿の柱や屋根などに使われたりしていたからね。その大陸の人間達の様子もここから見えていたよ。神殿が完成した頃は人間達は神に信仰を捧げ、神殿には多くの人間が幸せに暮らしていたよ。


 それがある日、人間の神官に魔の心を持ち人間達を惑わす者が現れた。そこからは転がるように人間達は堕落していった。その様子を神は嘆き、さとしたが聞く者は少なく、正義は正しく行われず、とうとう神の怒りに触れてしまったのだ」


 僕とフレアはその大きな木から悲しみの様な感情の流れを感じ、互いの顔を見る。フレアも感じているのか、これはこの木の記憶だ。その記憶が二人の中になだれ込んでいく。空から雷が沢山落ち海は割れて、荒れ狂った様な大きな津波がその大陸を襲う。流されていく建物や人間が海に飲まれていく。空には幾つもの雷が光る。それが神の怒りだという事が解る。その光景の恐ろしさにフレアは僕にしがみ付く。


「これが、私の覚えている記憶だよ。今のギルマスもこの事はご存じだ。何故こうなってしまったのかそれもきっと解っておられる。知りたければ聞いてくればよいだろう」


 僕達はその木から手を離して言う。


「ありがとう、貴重な記憶を僕達に見せてくれて、君も辛かったよね」

「昔の事だ。今は幸せだよ」

 そう話す木からは穏やかな優しい何かが僕等を包む。



【魔法の枝を持つ森の精】木々の妖精は目立たないが、古代の叙事詩に歌われる英雄の背後で彼等を守ってきた。その樹皮に耳を当てると森の精達の記憶が蘇って見える。

木々の妖精は森の番人でもあり賢い戦士でもある。森へやって来た者に聖なる木立の門を開けるか開けないかを決めるのも木々達の妖精である。

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