フレアの願い
翌朝、エリカ達は剣の稽古に出かけた。僕はフレアに逢いに行く。森の奥深く大きな木の根っこに入る。
僕は姿を大きくしてシルフィードの姿でフレアに逢う。
「フレア! 逢いに来たよ!」
ナニーは僕の姿に気づきフレアを呼びに行く。
「ゴメンなさい。まだフレアは寝ているの。夜他の妖精達と遊んでいて遅くなってしまって、皆あの子を甘やかすので困ってしまう」
「ナニー。オルが焼きもちをやいて拗ねていたよ」
「まあ! 困ったものね。あんなに言っておいたのに‥‥‥」
「彼も寂しいんだよ。たまには会ってあげてよ」
「そうね。彼が何をしたのかその時聞きましょう」
おっと。ナニーの表情が変わった。これは‥‥‥オル。ごめんよ! そこにフレアが部屋に入って来た。僕の姿を見つけると嬉しそうに
「シルフィー! ほんとに逢いに来てくれたのね。嬉しい!」
と僕に飛びつく。うん! やっぱり可愛いよなあ。
「ではここはシルフィーに任せて、私はオルの所に行って来ます。フレアお留守番していてね。シルフィー後は頼みます」
「うん! 任せてよ。ナニー、オルは悪気は無かったんだ。それは解ってあげて」
「解っていますよ。シルフィーが彼の行った事を許してくれたように私も責めたりはしませんわ。しかし、言わせて頂きたい事はしっかり話してきます」
オルがナニーからお説教を受けている姿が想像できる。
「シルフィー? オルって誰? どんな妖精なの?」
「オル・フェルム・ルイユっていう人間の子供達に楽しい夢を見せてくる妖精だよ。オーレ・ルゲイエとも言われているんだ」
「シルフィーって妖精に詳しいのね。私もナニーから教えて貰っているけれど、きっとシルフィーの方が詳しいのよね」
サファイアのようなその瞳で僕を見つめる。不思議な気持ちだ。ハーフエルフにはどんな力があるのだろう、恐れるような力を持っているとは思えないのだけど。
他の妖精達が僕達にお茶を用意してくれた。
「僕にまで? ありがとう!」
そこでギルマスの事やこれまでの事を話してくれた。人間である母親は先にこの世を旅立って逝った事を話す。母親とそっくりな自分を父親が見るのは辛かっただろうと語るフレア。ハーフである自分は、この世界から嫌われる存在である事は知っていると僕をしっかりと見つめて話す。
「フレア。君は自分の事を知っているのだね。これからどうしたい? 僕に逢って言いたい事があるんだよね」
「シルフィー。私を連れて行って欲しい。貴方達の旅に私も一緒に付いて行きたい」
「フレア‥‥‥ギルマスはきっと寂しがるよ」
「おじ様もそう言っていたわ。離れたくはないと、行かないで欲しいと」
そうかギルマスも何となく彼女の気持ちが解っていたのか。
「‥‥‥それでも僕達と一緒に行きたいと君は願うのだね」
「もっと知りたいの! ほんとに私はこの世に生まれてはいけない者なのか。自分の目で真実が知りたい」
「それで君が辛い想いをするのだとしても?」
「辛い想いをする事になったとしても、私は知りたい。私には何も出来ないかも知れない。でも‥‥‥」
その瞳は決意を決めた者の瞳だ。
「僕だけでは決められない。エリカ達にも相談してくるよ。ギルマスにはその後話しをして相談をしよう。きっと寂しいと言われると思うけど、フレアの気持ちを解ってくれるさ」




