ギルマスの剣
「そう言えばスライム相談所は大人気らしいじゃないか、よくあんな珍しいモンスターを見つけたね。私も初めてだよこんなモンスターは! 実に面白い!」
僕はギルマスにちょっとドヤ顔で
「ふふん! 頑張って探したんだ! でも僕達が行く時は割と人間達の間では有名だったよ。お土産でスライムの形をしたお菓子を売っていた位。スライムさんのアイデアみたいだったけどなかなか売れてたよ」
そこでスライムさんが
「私の事をおいて話を進めないでくれ、面白いモンスターで悪かったなあ。ギルマスって言うからもっと威厳がある者を想像していたが、シルフィーと変わらない位変わったエルフだ。伝説になっているんだぞ! あんた!」
おおスライムさん。あんた呼ばわりですか‥‥‥
「それは光栄だね。昔はブイブイ言わせていたからね。若い時はやんちゃもするだろう? 街や国の一つや二つを掌握したからといって、どうという事はない」
今、何気にさらっと国って言ってなかったか? この人は何をやったんだ‥‥‥
エリカ達は呆れている。でもこのギルマスが強いっていうのは解る。剣をどうやって使うのだろう? エリカとは太刀筋とは違うのかなあ? そんな僕をちらりと見たギルマスは、
「エリカ。私と剣を交えてみないか? ここの所、書類と挌闘で運動不足なんだ」
「でも、いいんですか? こんな所で‥‥‥私は嬉しいです!」
エリカの嬉しそうな顔ったら。今まで自分より強い相手とは、やり合っていないからほんと! 嬉しそうだ!
その木を出て少し奥へ歩いて行く。とやや広い草が茂っているが、空いているスペースがあった。ここは妖精達の舞踏会の場所だ。フェアリーリングがあちこちにある。
「ここでどうだね? 広さは関係ないだろう?」
とマントを取る。
「はい!」
「おいで、エリカ。どこからでもいいから私にかかって来なさい」
二人の剣の打ち合う音が響く。ミュラーの時とは違う音だ! 軽くそして響く音は音楽の楽器のようだ。エリカが押されている。こんなの初めてみた。でもエリカは楽しんでいる、ミュラーもアリーナもその様子を見守る。
ミュラーの表情が変わる、真剣な眼差しで二人の打ち合いを瞳を瞬やかせながら見つめる。ギルマスの剣の扱いはまるで踊っているかのように優雅だ。でも隙が無い、無駄な動きがないんだ。力でもエリカは押されている。やっぱり力も強い! エリカが息を乱す、これも初めて見る! あのエリカが汗をかいている! 反対にギルマスは涼しい顔をしている。伝説と言われるだけはある。エリカが地面に手を着いた! 肩で息をしている。
「終わりにしよう。エリカありがとう! 久しぶりにいい汗をかいたよ」
ギルマス‥‥‥汗をかいているようには見えませんけど‥‥‥
「お手合わせ、ありがとうございました!」
エリカは深くお辞儀をする。満足そうなその顔を見てギルマスも嬉しそうだ。僕はギルマスの所に飛ぶ。
「綺麗な剣の太刀筋だね! 舞を舞っている様だった!」
「嬉しいねえ、シルフィーにそう言って貰えるなんて。私の剣の使い方はもう今では古いのだろう」
エリカが空かさず言う
「そんな事ありません! 勉強になりました!」
エリカ本当に嬉しそうだ。
「そうかい? それは良かった」
とマントを羽織る。ミュラーはまだ瞳をキラキラさせてギルマスを見つめる。
「君がミュラーでテイマーなのだよね。ティムしたドラゴンはその彼女か、成る程ね」
僕がキラキラしていたのだろう。ギルマスも嬉しそうだ。僕はまたギルマスから手招きをされた。
「何か?」
と聞く僕に
「良い仲間を得たね。シルフィー、良い顔をしている。もしかしたら、君の秘密が解ったのかな?」
なんて鋭いんだ。流石はギルドマスターだ。
「まあね! でも秘密! ギルマスには教えないよ!」
そう言ってエリカの肩に乗る。




