ロリアレット
「おお! 任せな! 行こうぜ! おい! 皆を集めてくれ」
とスライムと居た船員に伝える。
「了解! 伝えて来ます」
と走って行く。
「そういや、シルフィーの姿が無いが? 何処か遊びに行ったのか?」
「うーん、良く僕達も解らないんだ。シルフィーが姿を保てないと言った途端に消えたんだ。でも見えなくても傍にいるのは感じるよ」
アランも首を傾げる。
「ここは妖精にとって居ずらい場所なのかも知れないなあ。人間の嫌な悪質な部分が集まっているからなあ、騙す事を良しと思っている人間が多い。荷を盗もうと狙っている奴も結構いるんだよ」
「アラン! 集まったぜ。いつでも出せる」
「では、お嬢様方行きましょうか!」
船には知った顔ぶれが集まる。
「よう! 全く退屈しないぜ、あんたらといると! 今度は何処へ行くんだ?」
エリカは空を見上げて言う。
「空よ」
皆が見上げるその空に幻影に浮かぶ天空の島が浮かんでいた。
「マジかよ! 島が浮かんでる! あんな所に行けるのかよ」
「あそこへ行く」
エリカは真面目に言う。
「シルフィー! 私達をあそこまで運んで!」
そう言った。僕はシルフィー達に頼んでエリカ達を風の力で運ぶ。エリカは魔法は苦手って言っていたけど今のエリカはまるで精霊使いみたいだよ。皆喜んで力を貸してくれている。
僕等は空を飛び不思議な島に着いた。ここは? ミュラーの表情が少し険しくなる。僕の姿は見える様になっていた。
「シルフィーありがとう」
エリカ達に言われる。
「どういたしまして! でも、ここはどうなっているんだろう?」
ミュラーが言う
「ここは‥‥‥元は天界にあったものだよ」
「!? 何故ここにあるの?」
「それは‥‥‥神々が戦った後に欠けてしまった天界の山の一部かも知れない。欠けてしまったそれが空に残されてしまった」
「戦った? ってどういう事?」
エリカがミュラーに聞く
「天界には悪しき神もいるんだ。それら神は自分が正義だと言って戦いを挑んでくるんだ。その悪しき神々と戦う為に他の神達は僕等ペガサスに乗って戦う」
その言葉にエリカは理解したようだ。ミュラーが何故強さにこだわって自分の元にいるのか。
僕はそこに妖精を見つけた。妖精とは少し違うけれど、月を眺めるその妖精に声をかける。
「ねえ、君はもしかしたら‥‥‥ロリアレット?」
「良く私の事を知っているんだね。君は普通の妖精達とは違うようだ」
その姿はエリカ達にも見えている。
「今日は月がキレイだ」
「ロリアレット‥‥‥月に帰りたい?」
「そうだね。この島を見つけてここに来たけど、月まではやっぱり遠い」
「この島を月まで飛ばそうか?」
「それはいい考えだ。だが、それでは足りないなあ、きっとそれでも届かないだろう」
「私は過去や未来を見る力があるからね。解るんだ。私はもう帰れない」
「未来を変える事が出来るかも知れないとこの島を見つけた時思ったよ。でも、それは叶わないみたいだ」
その話をエリカ達も聞いていた。ただ黙って、何も言えない。
「他のロリアレット達は妖精の国にいるのかな?」
「地上にいるロリアレット達もいるよ。屋根裏部屋や高い塔の上で君と同じように月を見ているよ」
ロリアレットは僕を見るとふっと笑顔を浮かべる。
「シルフィー、君は時別なんだね。でも、大丈夫だよ。君の望みは叶うから心配はしなくていいよ」
望み? 何を言っているんだ? 僕は何も望んでいない。
「シルフィーこの島を壊してくれないか? 私はまた地上に行くとしよう」
そう言ってロリアレットは島から地上へ向かって降りて行く。
【ロリアレット】月の住人で月から落ちて来たと言われています。人間と同じ服装をしていて妖精や若い娘達の気を引く為に髪をカールしたりとオシャレである。詩や音楽が好きで夢想する。過去や未来を見る力を持つがそれを使ったりはしない。ただ、ロリアレットが悲しくなったりすると雨が降るのでトンステールと間違われる。




