ゴブリンの秘密
僕は機嫌が悪かった。それをエリカ達は分かっていた。ミュラーが、
「シルフィーどうしたの?」
「人間の事は僕は大好きだよ。でも嘘をついたり騙したりする人間は嫌いだ! だからあの村人達は嫌いだ助ける必要はない」
「どう言う事?」
ミュラーが聞く。
「帰ってから話す」
いつもならミュラーの頭に乗っているが、今は飛んでいないと気分が落ち着かない。
いつもの街に帰って来た。ギルドの受付のお姉さんにエリカがその依頼書を渡す。
「この依頼人は居なかったわ。だから、ゴブリンを討伐しても依頼料は払えないと言われた。どういう事かしら? 信用性のない依頼を受けた。となると、ギルドの信用を落とす事になるけど」
そう言うエリカに受付のお姉さんは困った顔をして、
「可笑しいですね? どういう事かしら? 依頼の報酬はここにあります。ちゃんと預かっていますが?」
僕は機嫌が悪いと姿が薄くなるようで受付のお姉さんが慌てる。
「えーっ! シルフィー……隠れてしまうのですか? 何か気に障った事でもありましたか?」
「ここでは話せない、人が多い」
と、姿を消す。エリカが
「私達は家に帰ります。シルフィーが隠れてしまったら探せない。機嫌が直るまで待つわ。明日はちゃんと来るから心配しないで」
エリカ達も家に帰る。部屋の中は綺麗に片付けられ食事の用意も出来ていた。
「頂きましょうか。シルフィー、いつまで機嫌を損ねているの? シルキーが心配するでしょう? 貴方の分も用意してくれているのよ」
僕は人間サイズになり、椅子に座る。ミュラーが驚いて僕を見る。
「これが、僕の本来の姿だよ」
ちょっと拗ねて言ってみる。
「天使に似ているね」
? 似ている? まるで知っているような言い方だ。まあいいか。
「普通の人間はこの姿を見る事はないし、見れない。森の中ではこんな姿のシルフィーが沢山いるよ。見せないだけ、こんなに大きいと目立つでしょう? だから僕はいつもは小さくなっているんだ」
「で? どうして機嫌が悪かったの?」
二人が聞く。
「作物を荒らすのはゴブリンじゃない‥‥‥人間だよ」
エリカ達は驚く、
「依頼はされていたわ。その報酬も用意されていた。どう言う事なのかしら」
「話していいのか迷っていたんだ」
僕はまた小さくなった。
「盗賊の類があの森に住んでいて作物を取って行くみたいだ。妖精達が教えてくれた。人間の物を人間が盗んでいる、とね」
「何故ゴブリンのせいにしているのかしら?」
「ゴブリンは居るんだあの森に」
その言葉に再び驚く二人、
「そのゴブリンは静かに暮らしている。人間に危害を加えたり悪戯したりしないと、仲間達が言っていた」
「この依頼はその盗賊ね。ゴブリン討伐に加わりさも、自分達が討伐隊の仲間です。みたいにしてその村を人達を騙して物を取ろうとしてるって事かしら?」
僕は食べながら、
「村人もゴブリンの事は知っているようだよ。仲間が言っていた。悪さをしないのならそっとして置こうと村人は決めているって。それに、ゴブリン討伐は冒険者でも無理だろうって、妖精達が言っていた」
「そんなに強いゴブリンなの!」
また二人の顔色が変わる。僕は仲間達から聞いた話しを続ける。
「違うよ。ゴブリンの村を守る者がいるんだって」
「そんな話し聞いた事ないわ」
エリカが首を傾げる。
「その盗賊達がゴブリンの村を襲って、その守護する者に返り討ちにあったみたい」
「なるほどね‥‥‥その盗賊達はゴブリンとその守護する者が邪魔って訳だ」
ミュラーはふむふむと頷く。僕は二人に言う
「そう言う事。だから、この依頼は受けない方がいい」
「盗賊の方を何とかした方がいいんじゃないかな? でも、それについては何も言われていないでしょう?」
そう言うミュラーにエリカは
「明日ギルドマスターに会うから聞いてみましょう」




