転生、シルフィード
ここは? 確か、僕は病院に運ばれた……はず……?
「よう、気が付いたかね」
「あの~ここは、何処ですか? 確か持病の喘息発作を起こして……救急車を呼んで……運ばれて……」
「そうだね、君は死んだよ」
「‥‥‥死んだ‥‥‥そうですか」
「おや、えらい物分かりがいいの」
「やっぱりかあ、って感じですかね。仕事がハード過ぎてストレスって言葉が何なのか、分かってなかった位追い込まれていましたから。その為に起こった発作だし。そうか、自分は死んだんですね。となると、あなたは神様ってことですよね? お決まりパターンの」
「おい、そこいらにいるのと比べないでくれ。これでも、色々な世界を造ってきた神の1人だぞ」
「で? どの世界に行きたい? やっぱりハーレムとかがお好みかな?」
「それも、よくあるやつですよね……ん~転生って事で、ファンタジーな世界に僕を連れて行って下さい。新しい人生をもう一度生きたいです。それと、丈夫な身体が欲しいです。病気ばかりしていましたから」
「良いだろう。行って来るといい」
そして、ファンタジーな世界に転生して……僕は、エルフ? になっていた。
確かに丈夫な身体が欲しいとは言ったが。エルフか、うん! いいかもしれない。ポジティブに考えよう。ここは冒険者とかいる世界なのだよな?
「生まれたばかりで、良く分からないだろうけど。ゆっくり覚えて行くといい」
何処からか声がする……
「貴方は?」
「ドライアド、木の精霊よ。あなたはまだ生まれたばかりなのでまだ、どんな妖精になるのか決まっていません。ただ風の精霊、シルフ、シルフィードとも言われる者の力が強いようね」
「エルフ……とは違うの?」
「同じよ、エルフは翼を持たない。シルフィードには翼がある」
いいじゃないかシルフ、自由に飛べる! この森からも出る事が出来るかも知れない。
その日から、他の妖精達から色んなことを教えて貰った。
この森には様々な妖精達が暮らしている。人間に危害を加える妖精もいる事や妖精の王オベロン、その妻のタイタニア(ティターニア)がいる事、いずれ会えると教えてもらった。思いっきりファンタジーじゃないか。素晴らしい! ありがとう神様! この世界で生きていこう。
妖精なのでまず死ぬ事は無さそうだ。僕は良くドライアドの所に行く。まだ、僕の身体は完成されていないようで、転生したからだろうと言われた。神が貴方に選択を与えているのでしょうと。
「ドライアドはここから動けないんだよね?」
「そう、この木と共にあるからそれを私は選んだ」
「他の妖精から、シルフィードには翼があるって聞いたのだけど」
「貴方が望めば、翼を持つ事が出来るでしょう」
そうか、翼……欲しいな。
毎日、ドライアドから話しを聞き、他の妖精達とも楽しく過ごした。そして決めた。僕はシルフになる。
いつもの様にドライアドの枝で昼寝をしていた。僕の身体は小さく形もはっきりしていなかった。
「ねえねえ、君」
と誰かに起こされた。
「これはオベロン。ティターニアもいるのでしょうか?」
と、ドライアドが言う。
「ああ、いるよ。その妖精は珍しいね。まだ身体が出来ていない」
寝ぼけながら、僕はその声の主に向かって言う
「僕は、翼が欲しい。シルフィードになりたい」
それを聞いた美しい女性の姿をした妖精が言う。
「分かりました。翼を授けましょう。私の愛し子よ」
僕の背中に翼が付いた身体も大きくなり人間位になった。
「ありがとう。貴方はティターニアですか?」
「そうよ、今日はあなたの誕生を祝って皆で踊りましょう」
そう言うと、赤い髪に緑の瞳、ピクシー達が集まる。他の妖精達も集まり皆で踊る。
僕は翼を広げて羽ばたく、そして空高く飛んだ。