①アベリアの改心・30
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驚いた私は声をひそめて喋った。
「どうやってここまで来たの?!てか、迎えに来たって何?!私、逃げる気は無いって手紙に書いたよね?!」
マルクは不思議そうな顔で私を見た。
「姉上は返事を書けない環境にいるけど僕の迎えを待ってるって、姉上の従者の人が教えに来てくれたよ」
「従者ってどんな人?返事はちゃんと書いてテイラー卿に預けたわ」ここまで喋ってハッとした。まさかテイラー卿の仕業では。
そのとき部屋のドアが乱暴に開らく音がし、振り向くと、テイラーが仁王立ちで大声を出した。
「皇太子殿下の婚約者でありながら、不義密通を企てた罪人です!」
テイラーの横に立つ騎士団の隊長が眉を寄せた。
「まさか本当に実弟と密会していたとは」
テイラーと隊長の後ろには、沢山の騎士が立っていた。10人以上はいる。隊長が「捕らえよ!」と命令を下した。
「え?!何!?ちょっと、誤解だから……!」
必死の訴えは誰の耳にも届かない様子で、ドタドタと荒々しい足音を立てながら騎士達が駆け寄って来る。まずい。
マルクを連れ、とっさにレポートをしようとしたが、婚約指輪が青く光り、神力が吸収されて出来なかった。
テイラーを先頭に、騎士たちはバルコニーまで迫っていた。テイラーが私に手を伸ばし、捕まえようとした瞬間、私は指輪を外し、マルクと共に瞬間移動でこの場から消えた。




