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12/18

やっぱり最初が一番

 俺の前には、二人の金髪美少女がいる。


 一人は、可愛らしい笑顔に金髪ショートヘアの夏美さん。

 もう一人は、強気な態度に金髪ロングヘアの蘭。


「なんで私の髪、真似するの?」


「偶然よ。雫は金髪美少女が好きって聞いたからね」

「誰に?」

「あんたによ!」


 夏美さんの冗談は置いといて。


 今日も彼女たちは、仲良く対立をする。

 ……仲良くか?


 それはさておき、俺には嫌な予感がした。

 勘、というやつだ。


 本来ならば、こんな非科学的な現象を信じるわけがない。

 が、そうと思っていたのも昔の話。


 今思えば、実は勘も科学的に証明できるのではないのかと思う。

 俺は科学者でもなければ、心理学者でもない。


 ので、特別調べようとも思わない。

 そもそも、そんな面倒なことは、一部の物好きか天才にでも任せておけばいい。

 残念ながら、俺はこの二種にも属していないので調べる余地もない。


 それもあるが、強気な態度ばかりの蘭は金髪が様になってるが、夏美さんは可愛いことには変わりないが、ギャルっぽさがある。

 俺の中でのギャルとは、アニメやゲームに出てくるキャラが可愛いのだ。


 日常生活、彼女としては清楚な感じていて欲しい。

 それだけでいい、はずだった。

 なのに、嫌な予感、がすることは分かった。


「だったら勝負しましょう!」


 とお馴染みの蘭。


「何の?」

「どっちが似合ってるかの勝負よ!」

「へー、いいじゃん」


 またやるのか……。

 大体、どうして蘭はこうも根拠のない自信があるのだろうか。


 どこから出てくるのか疑問に思う。

 それほどのエネルギーがあれば、くだらないことに使ってないで、もっと有意義な場で使うべきだろ。


 俺がどうこう言おうが言いまいが、蘭にとっては耳が痛くなるだけだろう。


 あえて言う必要もない。

 二人の視線は完全に俺を見る。


「な、何?」


 動揺した俺を見て、はたまた俺の予想が的中したのか。

 彼女たちは、にまー、と目を細めるくらいに笑った。

 これじゃあ、お互いに仲が良いのか分からないし、何故笑うのか。


「俺の顔に何かついてる?」


 と決まり台詞を言って、場の空気を変えようとする。

 変えたかった。


 本当に。

 出来なかったんだ。


「審査員は雫ね」

「賛成」


 はい、予想通り。

 悪い意味で。


「いや、俺はちょっと……」


 人の頼みが断るのが壊滅的に下手な俺が、一発かます。

 これでも精一杯なんだ。


「やってくれるんだ! ありがとう!」


 と蘭は、目を見開いてオーバーリアクションした。

 誰もやるとは言ってない。


 けど、仕方ない。

 やるしかないよな。


「……分かったよ。で、俺は何をするの?」


 俺は首を斜めに傾げる。


「どっちの方が可愛いか決めてよ」


 夏美さんが微笑む。


「勝った方が、雫と付き合う!」


 と蘭は堂々と言う。

 またかよ。

 夏美さんもさすがに、前と同じルールじゃ駄目と言うに決まってる。


「いいよ」


 いいのかよ!

 夏美さん、もっと俺を大切にしてください、と言いたくなった。


 言わないけど。

 ……悲しい。


「「さぁ、どっち!」」


 と言われましても。

 二人が髪色を変えてから、ずっと思っていたことがある。


 金髪の夏美さんは可愛い。

 蘭も悪くない。

 けどな。


「正直、前のままの方が良かったよ」


 率直な感想だった。


 ◯


 蘭の自宅。


 (雫に気に入ってもらえると思ったのに……。でも、前の髪の方が良いって。ふふ、それは似合ってるってことよね! 雫も意外と褒め上手じゃない。まぁ、それと私のことを好きかは別だけど。雫といつか付き合えたらな、なんて。だけど、目の前にするとついつい緊張してからかっちゃうの。ごめんね)


 ◯


 夏美の自宅。


 (雫くん、金髪美少女が好きじゃなかったのかな……。まぁ、私も金髪なんて普段しないことしないで、自然が一番良いのかもね。もう、素直に可愛いって言えば良いのに。照れ屋の雫くん! なんて)


 ◯


 次の日の学校。


「「どう? 似合う?」」

「え!? 戻したんだ」

「何その反応」


 蘭が言う。


「いや、かわ、似合うなって」

「かわ?」


 夏美が言う。


「な、なんでもない!」

「可愛いなって?」


 と、また夏美が言う。


「本当になんでもない!」


 やっぱり、黒髪が似合っていた。

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