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第184話、宗っち、獣人の国を作る。①

「とある嫌疑だって……そこのところを詳しく教えてよ」


 メルクリーゼは五人の配下たちを見回す。

 うん? 配下の者たちには聞かせられない話なのか。


「これは極秘事項だ。だからお主には教えられないのだ」


 ダメだったか。まぁ、今回は形勢が悪い。なら次回に期待するか。そう考え、メイルの体を揺らす。程なくしてメイルは意識を回復した。


「ううん、もっとお肉を食べたいのだぁ。…………あれ、私はいったいどうしただに? あっ、そうだ……魔族は……」


 良い夢でも見ていたのか、口元にはよだれが垂れている。

 再度、大きく揺らすと、やっと目が覚めた。僕のために、メルクリーゼに飛びかかってくれたのは嬉しい。でも、今後は自粛してもらいたいものだ。今回は一刀両断されなかったからまだいい。でも、その一瞬で命を失うことだってある。


「あ、うん。魔族とは和解したよ。ブラッスリーの仲間だからね」


「わらわはブラッスリーと仲は良くないのだ。そこを勘違いするでないのだ」


 あ、はいはい。そうでしたね。ブラッスリーは変態。メルクリーゼは普通でした。見た目はどう見ても、幼児なんだけどねッ。


「立てるか?」


「うん。大丈夫だに」


 メイルを起こして、僕は土壁の魔法を解除する。壁が消えると、周囲の様子は良く分かる。道に倒れている人族。軽傷だったのか、起き上がってる獣人たち。

 そこでメルクリーゼに気になった事を聞いてみる。


「なぁ、メルクリーゼの目的は、人族なんだろ? なら獣人はどうするんだ?」


「獣人はどこへでも行くがいい。じゃが、この国はダメだ。ここは今からわらわの直轄地だ。そして、人族と共存する事はお勧めしないのだ」


 要するに、獣人は国外追放って事か。まぁ、人族に捕まって奴隷にされるよりはマシではあるかな。そうと決まれば、獣人を集めるか。


「メイル、手伝ってくれるか?」


「うん? 何をだに?」


 メイルはここまでの流れを知らないからな。


「うん。獣人はこの国から出て行くことになった。だから、どこか住みやすい場所へ移動しよう」


 メイルは僕と魔族の顔色を窺う。メイルなりに、どうすれば良いのか判断したようだ。すぐに頷くと、呆然ぼうぜんと立ち尽くす獣人たちを集めに駆けていった。


「ふむ、お主はあの獣人とも仲はいいのだな」


「まぁね。アレでも僕の恩人なんだよ」


 メルクリーゼはそのまま、国の中枢へ歩いて行く。

 途中、配下の魔族たちは意識を失っている人族を拘束していた。人族がこの先どうなるのか、僕には分からない。でも、ここで人族に加担するのは何か違うように感じていた。


「集まっただに!」


 僕の目の前には、大勢の獣人たちがいる。兎人族。狐人族。猫人族。豹人族。中には熊人族までいた。体格は二メートルを優に超えている。こんなガタイでも人族からの横暴に耐えていた。以外と、獣人は我慢強いのかもしれないな。


「話はメイルから聞いたと思う。今からこの国は、魔族領です。ここの人族は解放される事はありません。でも、獣人は好きにしていいと確約された。ただし――ここに住むことは許されていない。だから、これから新天地を探そうと思う。異論のある人はいますか?」


 これまで住んできた国を離れるんだ。そう簡単にはいかないだろう。そう思ったのだが、今朝から始まった獣人排斥運動で思う事はあったのだろう。異議を唱える人は極少数だった。その少数というのも、家に置いてある財産、家財道具は持っていきたいという者だ。

 途中、魔族に断りを入れ、それを集める時間を用意した。


 手押し車にたくさんの荷物を積み込んだ獣人を引き連れ、僕たちは東へと歩き出した。東には巨大な未開の森がある。そこなら人族も、魔族もいない。

 途中、現れる魔物は、熊人族、豹人族が主となって退治していく。

 当然、僕たちも討伐に参加した。戦闘に向かない獣人を守りながらの旅は、十日に及んだ。幸いだったのは、この地に強い魔物はいなかった事か。

 なぜかは分からない。

 でも、この森には樹海に生息したような巨大な魔物はいなかった。

 食事は、道中倒した魔物の肉を焼いて腹を満たす。


「随分奥まで入っただに。そろそろ安住の地を決めても良いと思うだに」


 獣人たちの疲労も長い行軍でたまってくる。彼らと意思の疎通を量っているメイルから、食事時にそんな事を言われた。


 できるだけ実りの多い場所を見つけたい。それに一番大事(だいじ)な水源がまだ見つかってない。土を掘り返していけば、地下水脈は見つかるかもしれない。でも、この世界の技術力では汲み上げる技術なんてない。

 僕は、ポンプを使えば地下水を汲み上げる事ができる事は知っている。でも、どんな仕組みなのかは知らない。

 だから、水場のない場所では安住の地にはできない。そう思ってた。

 ここまでは、僕が魔法で雨を降らせて、その雨水で水分を補給して何とかやってこられた。でも、雨が降らなくなったら詰んでしまう。いつまでも、僕が獣人たちと行動をともにできる訳じゃないから。その事は、獣人たちも知っている。


 でも、長期の行軍はそんな彼らの決意を、考えを狂わせる。


「うーん、でも、ここに住処を築いても、また移動する羽目になるよ。それなら、もう少しだけ頑張ってみようよ」


 僕とメイルの会話を聞いている獣人たちも、気落ちした面持ちを浮かべている。 でも、自立した生活を送るなら、僕の魔法に頼るのはマズい。僕には魔王を討伐して、魔族と人族の争いを止める役割がある。


 そして、翌日も朝から森を歩き続ける。


 先頭を歩く熊人族が大声を張り上げるまでそれは続いた。


「水だ! 川があるぞ!」


 ドッ、と沸き上がる歓声。僕もメイルも声の方へ掛け出す。

 熊人族の男は、小川から水をすくって飲んでいる。


「うん。うまい。これなら大丈夫だ!」


 僕も水に手を入れてみる。うん、かなり冷たい。と言う事は、地下水が地上に溢れてできた川だ。これなら水に困ることはなさそうだ。

 それに、周囲を見ると、木々には果実が実っている。ここなら自給自足するのに問題はないように思える。


「ちょっと皆は離れててね」


 僕は、その小川の途中に、池を作ろうと考えていた。

 皆が離れた所で、僕は地形操作の魔法を使う。深さは二メートル。広さは一辺が五メートルの正方形の池だ。上流から流れてくる水が、ドンドンまっていく。


 水量は結構多い。これなら問題はない。


「よーし。ここを俺たちの国にするぞ!」「おぉぉぉ!」「やったぁ。僕たち獣人の国だ!」「人族に邪魔される事もない。俺たちの国だ!」「わぁぁぁぁぁ!」


 歓声は長蛇の列となってる獣人たちへ波及していく。

 僕はできるだけ住みやすくなるように、木をワインドブレードで切り倒す。

 邪魔な凹凸は整地魔法で平らにしていった。そして、整地の最中に人工物と思われる遺跡を発見した。


お読みくださり、ありがとうございます。

また、誤字脱字報告、ありがとうございます。

だいぶ良くはなってきていると思ってたのですが、まだありましたね。


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