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第180話、宗っち、ワームを狩る。

 ルイジムスの国は、人族と獣人の割合が七対三で住んでいる。

 基本的に、獣人は主に樹海で狩りをして、人族は森で狩りをする。

 この違いは、樹海では足の遅さが致命傷になる事が影響してる。獣人の身体能力は、人より一段も、二段も上だ。だから逃げ足の一点だけで見れば、獣人の方が樹海に向いている。一方で、人族のように足は普通、筋力も普通では樹海の奥へすらたどり着けない。


 トリアムスの街を歩いた時よりも、メイルの足取りが軽く感じられる。

 獣人のいない街といる街では、やはり居た方が気は楽なのだろう。

 僕が日本から海外へ行った時、日本人のいる街、いない街で警戒度は変わるのと同じだ。


「何だか楽しそうだな」


「そんな事はないだに。あっ、ここだに」


 そうして冒険者組合に入る。説明は遅くなったが、僕とメイルのギルド名はザイアークだ。キルドでボコられた時に、僕が最悪だ。最悪だと言っていた事から、メイルが命名した。変な名前だが、でも、僕はこのギルド名を気に入っている。


 この組合では、樹海の討伐を推薦された。断る理由はないのでそれを受ける事にした。Bランクの魔獣、ワームだ。僕はまだ見た事はない。でも、メイルはただの蛇だと言ってたから問題ないだろう。


 宿代を前払いで銀貨四枚支払った。貨幣価値は金貨一枚で日本円にして一〇万円。銀貨で十枚。銅貨で五〇枚。鉄貨で百枚。その他に、金貨一〇枚で白金貨というものがあるらしい。だが、大都市でなければ流通もしていないので、見た事のある人は珍しい。


 宿で部屋を確保した後は、樹海へ向かった。


 ちなみにこの国は、トリアムスの街から東に向かった場所にある。

 樹海はかなり広く、トリアムスの街の先にある魔法国ストロークよりももっと先まで伸びている。樹海はトリアムスからだと北にあったが、ここからだと西北にある。ややこしいが、樹海は、国が三つも四つも入るくらい広いのだそうだ。


 初めて入る場所だ。迷子にならないように、木々に傷を付けて進んだ。三十分ほど奥に入った場所で目的のワームはいた。


「メイル、ただの蛇だって言ってなかったっけ?」


「そうだに、大きな普通の蛇だに」


 思わず僕の瞳は細くなる。別に眩しい訳じゃない。ただ、あまりの大きさにシラけただけだ。全長二十メートル、太さ一メートルの蛇は普通とは言わない。


「いつか倒してみたいと思ってただに!」


「これを倒せると思うの?」


「ソウジの魔法なら……倒せるに! 大丈夫だに!」


 ウソだろう……。デカい口で丸呑みされそうなんだけど。いくら勇者だからって、剣もなしにアレを倒せと? まぁ。空気を読んで倒すけどさ。


「あれを倒すといくらだっけ?」


「アレは……」


「あれは?」


「金貨五枚になるだに!」


「もしかして、金貨に目が眩んだ?」


「そうとも言うだに……」


 おいおい、僕はギルドメンバーの選出を間違えたんじゃないだろうか。

 ギルドに行った時に、何かコソコソしてるなとは思ったけど。こんな事かよ!


「さぁ、ソウジ行くだに!」


「いや、俺行かないよ……だって食われるじゃん。食われたら死ぬよ。痛いよ」


「ソウジなら大丈夫だに。アレはブロジールより格下だに!」


 えっと……人型のブロジールと、大蛇を天秤てんびんに掛けないでほしいな。大蛇にウインドハンマー食らわせても、吹き飛ばせるとは思えないんだけど。しかも、近づけば絡め取られる未来しか浮かばない。


「アレがあるに。ソウジは確か風の刃が使えただに。それを使えばイチコロだに」


「本当かよ。ワインドブレードで倒せるって?」


「本当だに。まずは試しに撃ってみればいいだに」


 僕は、メイルに言われたとおりにワインドブレードを放つ。風の動きに反応して、ワームは大口を開ける。僕の放った風の刃が上顎うわあごに突き刺さった。

 しかし、ワームの首は落ちない。それどころか、口腔内に傷を付けられ怒り狂ってる。ワームが地団駄じだんだを踏んだ拍子に地面が大きく揺れた。


「うおっ……」


「ぐらぐらするに。ソウジ、頑張るだに!」


 頑張れと言われてもね、今の見てなかったのかよ。風の刃は貫通したけど、かすり傷じゃんか。あんなデカブツ、倒せるイメージが湧かない。


「あっ、あれがあった。炎魔法」


「言い忘れてたに……炎で焼いたら、素材の皮が台無しになるだに」


「ダメじゃないか!」


 そうしている内にも、ワームは僕たちに気付いて接近してくる。思った以上に俊敏だ。体をくねっと動かすだけで五メートルは進んでる。それをくねくねすればもう十メートルだ。攻撃圏内に捕らわれる僕たち。ワームが大口を開けた。


「いまだに!」


「くそぉぉ、何でこんな事に……アイスペリオン! アイスペリオン! アイスペリオン! アイスペリオン! アイスペリオン! アイスペリオン……あれ?」


 僕は、ワームが完全に動きを止めるまでひたすら氷魔弾を撃ち続けた。

 だが、六発目を詠唱した所で、魔法が発動しなくなった。どういう事だ……。

 体内から凍らされたワームの動きはかなり遅くなってる。それでも、完全停止に至らない。ジワジワと距離は縮まってくる。


「どうしただに? まだ死んでないだに! 早くするだに!」


「いや、それが……魔法がでないんだけど」


「……………………に」


「に?」


「逃げるだに!」


「ここまでやって逃げるのか? それならもう一発、ファイアペリオン! ファイアペリオン! おっ、行ける。ファイアペリオン!」


 半開きの状態の口腔内へ炎魔弾を撃ち込んだ。よく見ると、外皮がボコボコと膨れ上がってる。ワームの体内で炎が膨張しているようだ。


「あっ、皮が……焼けてるだに……」


「いや、どうせ逃げるなら皮なんてどうでも良いじゃないか!」


 蛇の巨体のいたる場所で、ボコボコと凹凸ができる。しばらくすると、完全にワームは沈黙した。外皮は無事に見える。


「やっただに!」


「はぁ。一気に疲れた。もう、こんなの相手にするなら先に言ってくれよ」


「仕方ないだに……それより回収が先だに。仲間が来ると危ないだに」


 へぇ。やっぱいるんだ……仲間……。

 メイルの指示で、アイテムボックスにワームを収納した僕たちは、急いでルイジムスへ戻った。そして、冒険者組合での出来事だ。


「確かに素材は焼けてますが討伐を確認しました。ですが、ワームの皮は主に外套や鎧に使われます。内側が焼けただれてると強度が著しく下がるのですよ。なので、買い取りは金貨一枚ですが……それでも売りますか?」


「仕方ないだに……それで頼むだに」


 あれだけ苦労して金貨一枚とは、金持ちまでは遠そうだ。


お読みくださり、ありがとうございます。


すこし疲れてきましたね。ちょっと休みます。今日中にまだ書く予定ですが、書けなかったらすみません。

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