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第179話、宗っち、魔族を知る。

本日四連投目です。

 この時点でタケは忘れてた。勇者には剣を授けるものだと言うことを。

 そして、宗っちも勇者として召喚された事を失念していた。

 召喚ものの話では、勇者にはチート能力が付与される。それがサンダーとアイテムボックスだけだった事ですっかり忘れてたのだ。自力で魔法を覚えた。だから、ただの神の使者なのだと……。


「勇者でない事は確かだとして、ソウジが強い事にかわりはない。もう一度聞くぞ。魔王軍に入らないか。ソウジには人族より魔王軍の方が合ってる」


「何度言われてもダメだに」


 勇者じゃない。……僕は勇者ではない。どういう事だ。ならどうして神は僕を呼んだ。降り立って、すぐに届いたメッセージは…………あ…………勇者に認定すると書いてあった気がする。あれ、でも、それならなぜ剣はないんだろう……。

 そして、魔王を討伐しろともあった。でも、それもおかしな話だ。勇者の出てくる話では、魔王は殺すモノだ。それを殺してダメ。これに何の意味があるのか。

 まぁ、僕程度では神様のお考えは量れないか……。


 全く、タケもタケなら宗っちも宗っちである。タケは魔王の討伐なんて依頼していない。侵攻を食い止め魔王を殺すな。と指示したのだ。剣を渡し忘れたタケと、討伐する事をクエストと勘違いする宗っち。二人の失敗はこの先どう転ぶのか。それこそ神のみぞ知るである。


「魔王はどんな人なんだ? 侵略を進めるくらいだ。きっと、野心に満ちた血も涙もないヤツなのか?」


「……魔王様な。いくらソウジであっても聞き捨てならん事もある」


 ふぅ、一瞬殺気が膨らんだぞ。そんなに崇拝されてんのか。魔王は。


「分かった。それで、魔王サマはどういう人なんだ?」


「うむ、同族には優しく、気遣いのできるお方だ。だが、人族には特に冷たいな」


 人間的には悪い人じゃないのか。まぁ、神から命乞いを頼まれるくらいだ。きっとそうなんだろうな。でも、人族に冷たいね。それはどうだろうか……同じ人族としては看過できないけど。


「俺も人族だけど? 俺を魔王軍に引き抜いて平気なのか?」


 人族に冷たいなら、仲間にすらなれないんじゃないのか?


「ソウジはアタシを殺せたにも関わらず、そうしなかった。それはなぜだ?」


「質問に質問で返すなよ」


「まぁ、大切な事だ。聞かせてくれ」


「それは、ソウジが優しいからだに!」


 うーん、それはどうかな。

 メイルは自分の家を壊された事を何とも思ってないけど、生活基盤を崩壊された恨みは消えた訳じゃないんだよな。きっと神様からのメッセージがなければ、殺したかもしれないし。殺してないかもしれない。日本人に決めさせるなよ。


「別に、殺す必要性を感じなかった。さっきも言ったが、人が死ぬ所を見たくないんだよ。それだけです」


「ふふっ、まるで初心な小僧の様な事を言うのだな。それだけの力を持ってるのに」


 それを言われてもな。日本人は平和な民族だ。紀元前から数えて令和の現在まで天皇が変わってない事がその証拠と言われてる。小競り合いは何度もあったのだろう。でも、他の国と違い、大元の天皇だけは変わっていない。その系譜は二千七百年近く続いてる。それが僕の生まれた国、日本だ。

 好んで争う民族じゃない。まぁ、海外では大正時代以降の日本だけを見て、侵略国家だと決めつけられてるけどさ。それはウソだし。


「僕は、争いは好みません」


「さっきはアタシ達と戦ってたけど?」


「それは、あなた方が先に仕掛けたからで……」


「先に仕掛けられれば戦うと?」


「まぁ、そうですね。だから、先に仕掛ける様な魔族軍には入れません」


 うん、これだな。僕は僕の戦いをすればいい。よほど、僕を貶める者が現れない限りにおいては、専守防衛を貫く。これぞサムライ!


 タケが聞いたら、『ふざけんな。ザイアークに攻め込んでおいて、どの口で言ってんだ』そう突っ込んだだろう。でも、タケたちとの戦いでも、宗っちは一人の死者も出していない。


「うーん、残念だね。アタシはアンタと一緒に居たいんだけどね」


「ソウジはやらないだに! 私が最初に唾をつけただに」


 あれ、いつの間に……。あっ、あの時か。僕がボコられてメイルの家に転がり込んだ日。確か、『舐めれば早く治るだに』とか、言われて舐められたな。よくよく考えると、そっちの方がばい菌は付くんじゃね? と思ったけどさ。


 まぁ、何にしても、魔王軍に恩は売れた。これは後々僕に有利に働くはずだ。


「唾を付けられたつもりはない!」


「でも、私は唾を付けただに!」


「そんなのは知らない」


「ソウジはたまに忘れっぽいだに!」


「全く、見ておれんな。こんな小僧にアタシが負けたなんて……ふっ」


 魔族の連中とは一週間、一緒に旅をした。一緒に寝起きをともにして分かった事は、魔族も、獣人も、僕も同じ人間だということだ。病気にも掛かれば、悩みもある。家族もいれば、恋人もいる。

 これは、腹を割って会話しなければ分からなかった。

 魔族の家族の話を聞いた夜は、魔族を殺さなくて良かったと心から思えた。


 こうして争う事もなく僕たちを乗せた馬車は、ルイジムス国へと到着する。

 国とは名ばかり。木の杭で囲んだ村を、いくつも繋げた様な小国だ。


「じゃ、世話になったな」


「本当に魔族軍に来る気はないのかい?」


「最初から言ってるだに! ないだに!」


「ふっ。ブロジールもしつこいぞ。僕はもっと見聞を広めたい。だから、今は無理だよ」


「そうか……次に会った時、敵だったとしてもかい?」


「そん時は、またお仕置きしてやるだけだ」


「あーん。それが聞きたかったのよ。それじゃ、期待してるわね」


「変態めッ!」


「ブロジールは変態だに!」


 国境の手前の道で魔族とは別れた。最後まで憎めない性格のヤツらだった。こんなヤツらとこれから戦うのか? いや、戦わなくて済む道はきっとある。だからいろいろ見て回って見聞を広めるんだ。


「それで、これからどうするだに? お金はあまりないだに」


「そうなんだよね……まずは仕事探しからかな?」


「それなら、冒険者組合に行くだに!」


 魔族と別れた場所から、しばらく歩く。ここへの入門もあいさつだけで簡単に入れた。木の柵しか守りのない国だ。万里の長城の様な強固な囲いなら門番にも気合いは入る。しかしながら、どこからでも入る気になれば入れるのだ。

 持ち物検査も、通行証も、入国料も掛からなかった。入国に関しての注意事項すらない。当番だから仕方なく立ってる。そんな感じで、門番はあくびをしながら迎えてくれた。他国へ入る事で緊張している僕の方が、バカみたいだ。


「へぇ。トリアムスの街を広くしただけの国か……」


「たまにソウジの感覚が分からないだに。ここではこれが普通だに。もっとも、魔法国ストロークだけは別だに」


「あっ、メイルは魔法国へ行ったことがあるんだっけ?」


「私はないに……そもそも、魔法国は人族至上主義だに。獣人は見つかれば奴隷にされるだに……」


 へぇ。良くそんな国に行こうって言えたな。もしかして、メイルは僕に気を遣ってるのか……それだと悲しいな。

 もっとも、入国の時に【さよなら】って展開だってあったかもしれない。僕は魔法使いだ。しかも、自分で言うのもなんだが、優秀な。そんな僕の居場所として、魔法国がいいと考えてくれてたのかも。


 もしそうなら……嬉しいような、切ないような、何とも言えない気分だ。

お読みくださり、ありがとうございます。


私はアホな子です。

宗っちを召喚した時に、勇者認定したのを忘れてました。なので、帳尻合わせを組み込んでます。

そして、その帳尻あわせが、今後の展開に尾を引きます。(マテ


ちょっと休憩して買い物したらまた書きます。

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