表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/208

第178話、宗っち、黒歴史を刻む。

「それでアンタはどこの生まれなんだい?」


「それは……ノーコメントで」


「コレもかい。なら、アンタはどうやって魔法を覚えた?」


「それも……ノーコメントで」


「アンタの好みの女はどんな女だい?」


「はぁ。その時好きになった子がタイプですよ。さっきから何なんですか。何度も質問攻めにして」


「そうだに。そんな事をしてもソウジは魔王軍には入らないだに!」


 ブロジールの馬車に乗り、ルイジムス国へと向かう。その車内では、ブロジールによる僕への追及は後を絶たない。本当にいい加減にしてもらいたいものだ。魔法を覚えたのは書の力が大きい。だが、僕の魔力が普通と違う。コレの最大の要因は神からの贈り物だから、軽率には話せない。それを知ってか知らでか、この女は根掘り葉掘りと質問してくるのだ。


「良いじゃないか。強い男はどうして生まれるのか。遺伝じゃないのは解明されてる。なら、どうしてアンタは強くなった。それを知りたいと思うのは……当然だろ」


「そう言われても……自分でも知りませんよ。魔物を多く狩っただけです」


 よし、ウソは言ってない。実際、この一週間、かなりの数の魔物を倒してる。メイルと一緒に……。そして気づいた事もある。この世界で魔物を多く倒せば、筋力も、魔力も少なからず上昇する。そう、まるでゲームの様に……。だからなぜ強くなると聞かれたら、魔物を多く倒した。そう答えても間違いじゃない。


「アタシも多くの魔物を屠ってきた。でもね、属性ってヤツは決まってるんだよ。普通の生物は使えても二種類だ。エルフでも、魔族でも数千、数万人に一人は三種類の属性を持つものは生まれる。けどね、アンタは水、風、土を使った。そして結界もね。アタシの使う結界は水の膜を張ってる。だが、アンタの結界は光だ。この意味はわかるだろ。アタシは火と水の属性を操る。アンタのは四属性だ」


 へぇ。そうなんだ。この世界でも稀なのが三属性。僕は恐らく全属性使える。そうなると、このアドバンテージを軽はずみには話せないな。と言うか、無属性を使える事もバレたらマズいのか。それは……困った。この数日の道中、僕のアイテムボックスの食料は当てにできないと言う事になる。


「ふん。ソウジはアイテムボックスだって使えるんだに!」


「バカッ!」


 っち――。ブロジールの視線がギラついたじゃん。今、隠そうと思ってた所なのに。メイルってやっぱり天然かよ。


「へぇ……それじゃ五属性という事になるんだね……」


 ほら見ろ。怪しさ通り越して、ロックオンされてんじゃないか!


「何の事かな?」


「ソウジは謙虚だに!」


「ふーん。アタシの知る限りでは、そんな属性持ちは一人もいない。多分、この世界中探しても……見つからないだろうね。それをアンタは持っている。本当にアンタ……何者だ!」


 ブロジールは威圧を掛けてる訳ではない。でも、ねっとりとした視線に思わず尻込みする。これは迂闊に口を開けない。神の使者だとバレれば、一生狙われる。あの街での情報収集で、魔族は独自の神を自分たちで作ってると聞いてる。

 そんな中に、本物の神の使者が現れれば――あれ? 別に問題はないんじゃないか。逆に、崇め奉られる可能性だってあるか。

 悪魔崇拝なら支障がある。でも、別の神を信奉する者なら、いやいや。その可能性は閉まっておこう。


「僕は刺さればケガもするし、血も流れる普通の人ですよ」


「それは間違いないだに。実際、最初にあった時は冒険者たちに打ちのめされてたに」


 本当に、メイルはペラペラと良く喋るな。ギルド解消するぞ!


「へぇ。その話。詳しく聞きたいね。獣人の娘。名前は何ていった?」


「私はメイルだに!」


「そっか。それでメイル。それは何時の事だい?」


「うーん、私と出会った時だから一週間前だに」


 あぁ、バカ。本当にお喋りだな。ブロジールから向けられる視線は完全に人を見る目じゃなくなってるよ。きっと、ほぼ、確信に近づいてる。そんな眼差まなざしだ。


「ふーん。メイルはそれから一緒に魔物を狩ってるのかい?」


「そうだに。ソウジはスゴいに。あっという間に、私より強くなっただに」


 あぁぁー終わった。完全に終わった。僕と一緒に狩りしてきたメイルにブロジールは圧勝してる。なのに、たった一週間でブロジールよりも強くなれば――。これはもう人外の力が働いてるってバラしてる様なものだ。

 はは、メイルを置いて逃走したくなってきた。まぁ、仲間だし、僕の大恩人だから見捨てないけどさ。


「へぇ……たった一週間で、メイルより弱かった者がねぇ。普通に他人から聞かされた話なら、アタシは信じなかっただろうね。だが、実際にアタシは負けた」


「分かればいいだに」


「ちなみにメイル達は何ランクなんだい?」


「私はCランクに上がったばかりだに。ソウジはEランクだに」


 はぁ。もういい加減に口を閉じてほしいな。確か、そんな魔法があったはず。でも、それをここで使えば、闇属性も使える事がバレる。それで詰む。

 全属性なんて勇者しか思い浮かばない。あれっ、今まで気付かなかった。でも、よく考えると……もしかして僕は勇者なのか?


 そもそも、神に召喚された僕は選ばれし存在。と言うことは、僕は勇者!


 おぉぉ。これLIVE配信者より稼げるんじゃ。最初は文句ばかり言ってた気がするけど、これは、神に感謝しないといけない展開だったのか。

 LIVE配信でお金を稼いで、実家の両親と弟に仕送りはできなくなった。

 でも、ここで成り上がれば、ハーレムも夢じゃない! 

 これはチャンスだ。神が与えてくれた保証付きの。

 あははは。もうなるようになれ。


 ふふ、まるで崇拝するように僕を見るブロジールとメイル。

 少なくとも、僕にはそんな風に見える。

 僕の口から何を語られるのか、今か今かと待ち構えてる感じがする。


 ふふ、この際全てバラすか。


「実は、メイルにも黙ってた事がある。僕はきっと勇者だ!」


 一瞬の静寂が訪れる。しかし、メイルの爆笑で霧散する。


「あはは、あは、はははっ。ソウジが強いのは本当だに。でも勇者はないだに」


「ふふっ。本当だ。一瞬、ドキッとしてしまったぞ」


 はい?


 どういう事だ。全属性の使える僕は勇者のはず。何か問題でもあるのだろうか。


「えっと、僕が勇者だと不都合でも?」


「あははは、いや、そういう訳じゃない。ただな、勇者は剣が得意だ。神から与えられるエクスカリバーを生まれながらに内包すると聞くぞ。だが、ソウジは剣は使えないじゃないか。五属性を使えるのは大したモノだが……勇者ではない」


 あれ……おい、神様。どうなってるの?


お読みくださり、ありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ