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第176話、タケ、堕天使になる。

 もだえるブロジールに絶句する宗っち。俺もこれには言葉もない。

 と言うか。戦いはどうなったんだよ。まさか、これで終わりじゃないだろうな。

だが、俺の言葉は届かない。

 手を止めた宗っちに、尚も、ブロジールの懇願は続く。


「こんなに気持ちいいの初めてなの。だから続けて……お願い」


「……………………………………」


 この場合の勝負はどうなるんだ。あ、別に侵略戦争だから相手の不戦敗で良いのか。でも、しっくりと来ないな。殺せとまでは言わずとも、ハッキリと分かる形での決着を付けてほしかった。


 身悶えるブロジールを冷ややかな眼差まなざしで見つめる宗っち。ブロジールが土に手を突けている事の意味を、勘違いした街の住民達が二人を取り囲む。


「何やってんだ! 早く殺せ!」「街をこんなにしやがって!」「何を躊躇ってる、早く殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「魔族は皆殺しだ!」「おう、殺せ!」「魔族を殺せ!」「魔族を殺せ!」


 もはや、こうなっては収集はつかない。大勢の住民達に囲まれて、宗っちは困惑しているようだった。さもありなん。

 きっと、俺からは殺すなと言われてる。それに抗うのは、マズい。とでも思っているのだろう。俺が指示したのは、温和な顔を見せる魔王を救えと言ったつもりなんだが……殺すなの意味を、魔族を殺すなと勘違いしているようだからな。

 まぁ、これはこれで面白いから放置してる。むやみに人を殺すと、人だった頃の俺のようになるからな。もっとも、俺が殺したのは殺害を行った者。それに関与した者たちだったが……。

 罪に対しての罰は対等でなければいけない。俺はそう思ってる。

 だから、ブロジールの魔法でこの街の人間が死んだのなら、ブロジールを処刑するのは構わない。そう決断した筈。幸い、死んだ者は居なかった様だけどな。


「この街の人で死んだ人は居ますか?」


 宗っちが民衆に尋ねた。これは、俺と同じ考えかな?


「う゛ッ。死んだ者は確認できてない。だが、街は壊滅した。このままじゃ俺たちの気が済まない!」「そうだ、そうだ!」「俺たちはこれから住む家を失った。この責任は魔族にある!」「殺せ!」「魔族を殺せ!」「八つ裂きにしろ!」「おい、こっちの五人も逃がすな!」


 宗ちが倒した男の魔族達を、全員で拘束にかかる住民達。

 幸い、気を失ってる者が多く、反撃されずに済んでいた。だが、一度目が覚めれば、あっという間に立場は逆転するだろう。だが、そんな事すら、愚かな人族には分からない。


 うへぇ。石神が助けた後で、裏切られたのも分かる気がするな。自分たちが有利になった途端にこれかよ。俺は白い世界でげんなりしていた。人の浅ましさに。


「死んだ者が居ないのに、殺せはないと思うんですけど……。せめて、奴隷落ちとかできないんですか?」


 宗っちは代替案を提案する。しかし、人族の怒りは収まらない。


「ふざけんな!」「そうだそうだ!」「魔族なんて奴隷にできる訳がない。すきを見つけたら殺されるぞ!」「早く殺してしまえ!」


 そして投げつけられる石。石。石。

 住民の意思に背く宗っちにもそれは降り注いだ。


「ちょっと、止めろ。止めろって!」


 一方、宗っちの出方をブロジールはジッと、見つめてる。思慮深い瞳で、宗っちを観察していた。ブロジールにとっては、弱い人族の行動に興味はないのだろう。幸い、自身が張った結界の影響で、投石の影響はうけてない。


 ただ、自分に快楽を与えてくれる希少な存在だけは別。


 宗っちがこの状況下で、どうでるのか。その一点だけ興味はあるようだった。その証拠に、懇願するでもなく黒い瞳は冷静に宗っちだけを見つめている。


「やめるだに! 差別はいけないだに!」


 そこに意識を取り戻したメイルが飛び込んできた。結界の切れているメイルにも石は降り注いぐ。メイルの頭に、顔に、体に石は当たる。

 そして、メイルの濃茶色の髪の間から――血が滴り落ちた。


「メイル!」


 その瞬間、宗っちのマナは膨れ上がった。それは、敵である魔族ではなく、味方である人族に向けて放たれた。ウインドハンマーの範囲版とも言える魔法が住民を襲う。固まっていた住民は後方へと吹き飛ばされた。


「何をする!」「おまえは魔族の味方か!」「裏切り者め!」「コイツも敵だ! 殺せ!」「おぉぉぉ!」


 吹き飛ばされた住民は怒り狂って宗っちへ石を投げつける。しかし、結界の掛かった宗っちへは届かない。


「このやろう! 最初から気に入らなかったんだ。……そ、そうか。おまえが魔族を引き入れたんだなッ!」


 業を煮やした冒険者が、宗っちへ剣で斬りかかった。

 だが、これも結界の前では無意味。剣先は宗っちの手前十センチの所で滑る。宗っちの後ろへ流れていく剣先。体勢を崩し、驚愕の色に染まる冒険者。


「なんだ……コイツは……」


 散々、石を投げつけられ無傷だったのに気付いてないのかよ。本当の魔法師の力を人族は知らないんだな。しっかし、三百年前の人族も、俺の過ごした時間の人族と大差はないって事か……。こんなヤツらによく石神は手を貸したな。

 俺なら、人族以外のエルフ、獣人、魔族に味方してるぞ。うん。多分、こんな殺気だった連中よりはそっちの方が楽しそうだ。まぁ、アロマの事があるから、ココでそんなマネはできないけど。

 そんな事を口走りながら、俺は数多あまたあるモニターで調べ物をしていた。


「止めてください! 誰も死んでいないなら殺す必要はないじゃないですか!」


「そうだに! 無益な殺生はやめるだに!」


 必死の形相で、説得にあたる宗っちとメイル。だが、メイルが加わった事で余計にこじれる結果になる。


「獣人風情がふざけるな!」「そうだッ、獣人は人族に隷属すればいいんだ!」「生意気なコイツからやってしまえ!」


 住民の怒り、憤り(いきどおり)の捌け口にされる。仮にもメイルは、この街で冒険者として生活してきた仲間である。そのメイルに対しての扱いに宗っちの怒りは最高潮に達する。ひそかにメイルに結界を張ると、住民全員を囲う様に魔法を放った。


「サンドウォール!」


 突如、住民達の足元が隆起する。それは、厚さ三十センチの壁を形成し、ぐんぐんと伸びていく。ごく少数の住民はその中からもれた。だが、集まった民衆たちは、土壁の牢屋に閉じ込められた。


「なっ、何をする!」「裏切りもの!」「出せッ。ここから出せ!」


 中からは、宗っちを罵倒する声。恨み辛みが叫ばれる。


「フッ……しばらくそこで反省してください」


 住民達を助けようと、二人の冒険者が壁に剣を突き刺す。

 だが、ビクともしない。それを横目に、宗っちは悪気はないことを告げる。でも、この状況下では逆効果だった。壁に攻撃を与えてた冒険者から罵声が飛ぶ。


「てめぇ、最初に会った時から気に入らなかったんだ! 魔族に加担するなら、この街から出て行け!」


 助けてもらって出て行けかよ。ははっ。見ていてイライラするぜ。


「人族に味方しようと思ったが、やめだ。止めッ。さっき調べたらこの中にアロマへと続く血統はいない。キグナスにもなッ。なら用はない。消えろ! 運が良ければ助かるだろう」


 俺は、天界からこの地に天変地異を起こす。なに、本当に殺す訳じゃねぇ。ただの折檻せっかんだ。夏に雪は降らない。それが降れば……神の天罰だと住民は気づくだろ。


 突然降り出した豪雪で、砂の大地は視界が遮られる。

 吹雪に驚いた宗っちは、メイルと魔族六人を一カ所に集める。次の瞬間、豪雪の範囲外へと転移した。

お読みくださり、ありがとうございます。


話の大まかなストーリーは考えてあるのですが、細かい部分が煮詰まってなくて、昨日は一話だけしか更新できませんでした。今日は書けるだけ書きます。

修正はどうするかな……月時間の表示とか直さないといけない部分は多いのですが。どうせ直すなら、大きく修正したいのでもう少し時間をください。

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