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WooTober異世界に立つ  作者: 石の森は近所です
堕天使復活編
159/208

第153話、タケ、アルフヘイムを発つ。

 イケメンオヤジに認められた事で、俺は正式にサラフィナの旦那になった。

 本当ならお披露目をしないといけないらしいが、あいにくそんな時間はない。アルフヘイムでマナ補充が終わったら、一度戻って、今度は獣人の国に行かなければいけないからだ。

 万一、時間を食いすぎると堕天使の復活。いや、考えるのは止めよう。言霊という言葉もあるからな。

 サラフィナの自宅を出た俺たち二人は、真っすぐ大樹の最上階へ。


「おはようございます。今日も頼みますね」


 (おさ)こと人形にそう言われ、神殿の中に入った。この人、俺たちが来るのを知ってたのか? 来るたびに不思議だ。この最上階はただの展望台と神殿しかない。

 タイミング良く待ち構えるにしては出来過ぎている。うーん、謎だ。


「はい。後で竜族の件で話しがあるから時間を空けといてね」


「承知いたしております。ではのちほど」


 さてと、今度は大丈夫だろうな。まさか、まだ足りません。なんて展開はゴメンだぞ。そんな事を考えながら、女神像の前に立つ。


『それは大丈夫です。あなたの魔力は最大値に到達しましたからね』


 おっと、現れたな。

 俺の肩には小女神が座ってた。昨日、サラフィナと俺に祝福を与えて以来か。


「んじゃ、いくぜ!」


 女神像に手を触れる。前回と同様、血液が吸われていく感覚が体を駆け巡る。

でも、それはすぐに収まった。


「あれ、もう終わり?」


『はい。先日もマナを注入してますからね』


「と言うことは、これでアルフヘイムの方は終わりでいいのか?」


『はい。次は獣人の国にあるほこらをお願いしますね』


 何だか拍子抜けだな。でも、一昨日、気絶するまで注入したからと言われればそんなモノか。早く終わるにこしたことはない。


「あぁ。それじゃ、またなっ」




「早かったですね」


 俺が祭壇から戻ると、意外そうにサラフィナに言われた。


「うん。先日もマナを入れてるからだってさ」


「毎回、石像の前で倒れていましたからね。良かった」


「うん」


 神殿から出ると、そこにはテーブルとチェアが用意されていた。空虚な空間に真っ白なテーブルセット。華やかさの欠片も見当たらない。

 テーブルには既に(おさ)が腰掛けていて、俺たちが出てくるのを待ち構える様にカップに紅茶が注がれていた。神殿の中にいなかった癖に、よく分かったな。この人。


「どうぞ、おかけください」


 長に促され着席する。うん、紅茶からは湯気が立っている。やっぱ入れ立てか。まるで先読みの能力でもあるみたいだな。そんな事より要件だ。


「マナの補充は終わりました。で、もう一つの案件だけど……」


「はい。エリフィーナから聞いております。竜族の姫を娶ったとか。そして、姫だけでもアルフヘイムへの往来を認めてほしいといった内容ですね」


「あぁ。そうだ。毎回、陸路と海路を使ってたら時間がもったいねぇ」


「ふふっ。分かりました。では姫様の往来は認めましょう」


 姫様限定か。まぁ、それに関しては文句はねぇな。

 さて、用も済んだし、さっさと帰るか。


「んじゃ。俺たちはこれで」


 椅子から立ち上がり、背中を向ける。そこに長から声を掛けられた。


「獣人の国では気を付けた方がいいですよ」


 はぁ?

 なんの事だ……。獣人の国に行くことは秘密じゃないから知られているとしても。今のは警告だよな。何か知ってんのか。


「どういう……」


 振り向いて問いただそうと思ったら、そこには誰もいなかった。


「あれ……いねぇぞ」


「あぁ。長は瞬間移動でお部屋に戻られたんですね」


 あぁ、なるほど。せっかちだな。じゃねぇよ。今言ってた内容だ。


「今、獣人の国がどうとか言ってたけど?」


「何か悪い事でもあるのかもしれませんね。長には先見の明がありますから」


 先見の明だって。それにしてはやけに意味深だったけど。なるほど、先読みの力ね。道理どうりで俺たちの到着。神殿から出てくるタイミングを知ってた訳だ。

 この世の中には、俺の知らない事がまだまだ多そうだな。


 俺は一度サラフィナの実家に戻り、昼食後、船の用意ができたとの知らせを受けてエレベーターに乗った。中央街から地下へ向かってるらしい。木の根を過ぎると、岩肌のむき出しの空間に出た。感覚では百メートルは下がっただろうか。

 すぐに開けた場所にでた。眼下の中央には水路がはしり、船が浮かんでいる。水路の両端には街があった。


「はぁ? 何で地下に街があんの?」


「ふふっ。ここはアルフヘイムの地下。ドワーフの国、ニヴルヘイムです」


 サラフィナが説明してくれてるが、言葉は耳に入らない。大樹も幻想的ではあったが、ここはそれ以上だ。いくつも洞窟が連なり、そこに街が形成されてる。

 どうやって光を取り入れているのか不明だが、ここはかなり明るい。

 少なくとも、炎の明かりでないことは確かだ。


「さぁ、こちらです」


 案内役のエルフの男性に急かされて、俺たちも続く。タラップのある階まで螺旋らせん階段を下りた。今、目の前には白い船がある。帆船で大きさは二十メートルくらいか。この船でクラーケンに襲われたらひとたまりもないな。


「さっ、お急ぎください」


 案内役のエルフはここまでのようだ。サラフィナと二人で船に駆け込むと、街の方から二人のエルフが歩いて来た。エリフィーナとイケメンオヤジだ。


「もっとゆっくりしていけばいいのに……」


「あなた、そうも言っていられないのは話したでしょ」


 エリフィーナとの別れをしむようにイケメンオヤジが抱きしめる。目の前でイチャイチャしてんじゃねぇ。子供の前だぞ。と、昔の俺なら言ったかもしれない。でも、今ならその気持ちが分かる。

 大陸に渡ったら下手したら数年、長ければ数十年は戻らないと聞いたから。

 現に、サラフィナが実家に戻ったのは十数年ぶりだった。エリフィーナはもう少し短かったが。それでも数年。愛する女性たちが家を空けている間、イケメンオヤジは一人なのだ。そう思うと切なくなる。嫁が四人になった俺でさえそうなのだ。この短い間の見送りくらいは……。


「タケ様、何を考えてるか当ててみましょうか?」


「えっ、何をって?」


「長い別れを惜しむ二人。ここに残される父さんはかわいそうだな。そんな風に思ってませんか?」


 すげぇな。本当に当てやがった。


「うん。違うの?」


「はい。違いますね。全く、全然そんな事はありませんよ。父さんは他にも()()()()の女性を囲っていますから」


 何だって……あの厳格げんかくそうな態度で、人に説教をかました癖に。

 そんなうらやま、あっ、別に羨ましくはないな。俺だって四人も奥さんがいる。 しかし、今朝の説教はなんだったんだよ。

 良い父親だと思った時の、俺の気持ちを返せ!

 穿った目線で二人を見ると、確かにエリフィーナの方が付き合ってやってる感じを受ける。これはあれだ、【くそ亭主、いい加減にベタベタすんの止めろ。どうせその足で他の女の元へ行くんだろ】そんな風に思っていそうな態度だ。


「なぁ、もっと良いじゃないか」


「はぁ、もう行かないと。ほら皆さん見てますから」


 落ち込むイケメンオヤジを残し、俺たちを乗せた船は地下水路を流れていく。

 地下の水脈を利用しているようだ。風はない。でも進んでる。


「海に出るぞぉ」


 ドワーフの船員さんの合図のあと、船は海上へと姿を現した。


「数年ぶりの航行だからな。万一、魔物が出たときは頼むぜ。兄ちゃん」


 俺が魔物を倒した話しは伝わってるらしい。小柄でガタイのいいドワーフにバシバシ背中をしばかれた。おまえはキグナスか!


お読み下さり、ありがとうございます。

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