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WooTober異世界に立つ  作者: 石の森は近所です
堕天使復活編
154/208

第148話、タケ、海洋生物の討伐を依頼される。

 体の中から血液が吸い取られていく感覚に、めまいを覚える。


 ……気持ち悪い。


 女神像から手を離そうとするが、接着剤でくっつけたように離れない。


 くっ、なんだ……。


『大人しくマナを放出しなさい。抵抗するとつらいだけですよ』


 ちっ、簡単に言ってくれるぜ。普通に魔法を行使する時でも、こんな気分にはならない。第三者にマナを吸われる事がこれほどだとは思わなかった。


『えっ、そんな、私の寵愛ちょうあいを授けたのに……』


 あ゛……。何を慌ててんだ。クソ重くなった体を無理に動かして小女神を見る。なぜかは知らないけど、おろおろしてる。


「まさか、失敗したとか言わねぇよな」


 おっ、今の発言で明らかに動揺した。マジか。本当に失敗してんのか。


『そ、それはありません』


 ウソだろ。誰が見ても分かるくらいにキョドってんじゃねぇか。


『いえ、本当です』


 ホントの本当に?


『ホントのホントの本当に』


 こっちはもう足腰が限界なんだよ。何か問題があったなら言ってくれよ。


『…………………………』


 ちっ、くそっ。もう限界。倒れそうだ。


『きょ、今日はここまでにしときましょう』


 はぁ、何だって……。ここで俺の意識は途切れた。


『それにしてもどうして、まさか、この者の最大値が上がっていない?』


 迷い人の器は膨大だ。だが、この者の器はまだ未熟。どうして。

 ふふっ。そう、そうなのね。この者は経験が浅い。竜を倒すまで、雑魚の魔物しか相手にしてこなかった。だから器が中途半端なんだわ。それにしても、この者どうしよう……。まぁ、しばらくここで寝かせれば良いわね。



 あれ、何だか体が痛ぇぞ。

 それにここは……。冷たい床。白い空間と女神像。あぁ、魔力を吸われて気絶したのか。俺。


 おい、女神様よぉ。


『気がつきましたか……』


 気がつきましたかじゃねぇよ。さっきのアレはどういうことだ?


『ふふっ……』


 笑ってごまかすんじゃねぇ。


『ハッキリ言いましょう。あなたの魔力を見誤っていました。本来であれば、この時代で竜を倒せるほど鍛錬を積んだものは、マナの最大値が上がっているはずなのです。ですが、あなたは最近まで雑魚ばかり相手にしていましたね』


 は? 確かにゴブリンとかスライム、オークしか倒してこなかったけど。それが何か? でも、最近は竜だって何体も倒したぞ。


『それです。本来は徐々にレベルを上げて、竜を倒す頃には器の最大値があがっているはずなのです。それが雑魚ばかりを倒したせいで、最近まで小さかった。竜を倒した事で、やっと五割の器になったと言えば分かるでしょうか』


 えっ、それって俺のせいなの? 俺に寵愛を授けた女神様の責任では?

 あ、今思いっきり嫌な顔したな。女神様ならそのくらい分かるだろうに。


『そ、それは……』


 それはなんだよ?


『知りません。とにかく、あなたはレベル上げが足りないのです』


 レベル上げが足りないだと!

 どーん。さすがに凹むぞこら。これでも精一杯やってんだよ。運営の送り出す部隊と戦ったりさ。文句を言うなら、女神様の力で増やせないのかよ。


『私の寵愛で増加したのはあくまでも二割。本来であればそれで十分なのです』


 で、今の俺は最大値まで何割足りないんだ?


『あと、最低でも二割は必要ですね』


 マジかよ。まさかエルフの里に来てまでレベル上げしろってか。だが待てよ、そもそもここに魔物の気配はないじゃん。まさか、魔物を退治しに大陸まで戻れと?

勘弁してくれよ。どれだけ精神をすり減らして来たと思ってんだ。


『うーん、仕方ありませんね。では私の力で魔物を引きつけますか』


 ちょっと、異議あり! そんな事をしたらエルフから総スカン食らうんじゃないのか。サラフィナの手前、そんな事態は避けたいんだが?


『大丈夫です。今、エルフは海洋生物の影響で船が使えない状態。ならば、それをあなたが解決すれば……問題は解消されます』


 海洋生物だって? それに何、その船って。ここに船なんかあったのか?


『その話は長から聞くといいでしょう。では、器の最大値が上がったらまたここに来てください。分かりましたね』


 ……………………………………………………。


 女神は言いたい事だけ言って消えた。冷笑を浴びせるつもりで肩を見たが、小女神も姿を消していた。チッ。逃げやがった。

 そもそも器って何だよ。最大値だ、そんなもん知るか。

 WooTobeの運営に踊らされて、ポイントであっさり魔法を覚えたツケだとでも言いたいのかね。全く、調子が狂うぜ。

 神殿から出ると、ハイエルフの長とサラフィナが駆け寄ってくる。


「タケ様、どうされました? だいぶ顔色が悪いですよ」


「迷い人様、それで首尾はどうでしたか?」


 はは、サラフィナに心配されるくらい顔色が悪いのか。体内の血液を一気に吸い出されるような感覚だったからな。さもありなん。


「うん、サラフィナ。俺なら大丈夫。んで、女神様から聞いたんだが、この島にある船が今は出せない理由ってのを解決しろって言われた……心当たりはある?」


「はい、御座います」


 あぁ、やっぱり心当たりはあるのか。というか、即答かよ!


「大陸へと渡る方法はそもそも二つあったのです。ですが、近年この海域にシーサーペントやラミア、クラーケンが出没したために、船の航行ができなくなっているのです」


「その数とか規模は?」


「数は確認されているだけで百体。もしかするともっと多い可能性も……」


 はぁ。伝説に伝え聞くような大物ばかりじゃねぇか。ブラッスリーが一緒なら簡単そうだが、それだと俺の器を拡張できない。チッ。一人でやるしかねぇか。


「分かった。女神様がこの島に魔物を引きつけるって言ってたからな。早めに対策するぞ。サラフィナは万一、魔物に上陸された時に備えてくれ」


「タケ様はどうするのです?」


「あぁ、俺は空から魔法で殲滅せんめつする」


「ふふっ、サラフィナ、良かったですね。報告では迷い人様の気を引くのに失敗したとありましたが……ふふ、そうですか」


 いつの話だよ。それってサラエルドで出会った時じゃねぇのか。

 まぁ、俺たち二人の様子からバレてるっぽいけど。

 それにしても一日で終わると思ったのに誤算だぜ。まさかモタモタしてる間に、堕天使の復活とか変なイベント起きないよな。勘弁してほしいぜ。


「あんまり詮索されるのは好きじゃねぇ。それより、海岸線まで案内を頼む」


「では、サラフィナ、エリフィーナを連れて行きなさい。エリフィーナにはこちらから連絡しておきます」


「分かりました」


 さっさと終わらせて家に帰りたいぜ。

お読みくださり、ありがとうございます。

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