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WooTober異世界に立つ  作者: 石の森は近所です
堕天使復活編
153/208

第147話、乙女達の計画。

「ふふっ。今頃タケさんどうしていますかね」


「麗華さん、大丈夫ですわ。きっとサラフィナさんとうまくいきますわ」


「しかし人族は面倒なのじゃ。好いた男なら強引に行けばいいのじゃ」


 タケたちが大樹の神殿に足を運んでいる頃、侯爵家では女性陣が仲睦まじくお茶会に興じていた。執事を排除して部屋にいるのは女性だけだ。


「それにしても良かったんですの」


「えっ、何がですか?」


「サラフィナさんをお嫁さんに加える事ですわ」


 アロマさんに言われて私は、気付いたあの日を思いだしていた。


 私はこれまで親友と呼べる友達がいなかった。日本での学生時代は卑劣な嫌がらせばかりで、我慢していたから。フランスに留学してから同じ寮生の友人と仲良くはなったけれど、日本に帰国してからは忙しくて付き合いは途切れた。


 そんな時に、思わぬ出来事でここへ飛ばされた。不安だらけだった私を最初に温かく迎えてくれたのは、サラフィナさんだった。

 サラフィナさんは、『迷い人様を守るのがエルフの勤め』と言っていました。でも、それだけで私たちの信用は得られません。

 何度となく繰り返したお茶会で、私はサラフィナさんの内面を推し量った。

 その結果分かったのは、サラフィナさんは不器用。日本でいうところのツンデレだったのです。ツンツンしている態度も、気恥ずかしさを抑えるため。

 年齢は私たちよりもずっと年上なのに。見た目も相まってかわいく思えるようになっていました。

 そんな時です。私は気付いてしまった。タケさんを見る私たちの視線とサラフィナさんの視線が同じ事に。それにタケさんは気付いていませんでした。

 そこで、私たちは相談しました。どうすればタケさんに気付いてもらえるか。

 試行錯誤しましたが進展させるのは難しい。ブラッスリーちゃんに対してのタケさんの反応から、幼い容姿では厳しいのだと考えました。


 そんな時に、エルフの特性について知ったのです。エルフは女になると成長すると。そして、母になって初めて成人の女性の外見に変化すると。

 さすがに一線を越えなければ母にはなれません。タケさんに既成事実を作るためにどうしたら良いのか。私たちは毎日話し合いました。

 そんな時に、エルフの里へ行くことが決まりました。これしかない。この機会を逃せばいつになるか分からない。幸い、エルフの里では迷い人を歓待するという名目で、飲み会が開かれると聞きました。


 私はタケさんがお酒に飲まれるのを知っています。何度か寝る前にお酒を飲んだ事があったから。お酒の力を借りるのは卑怯ひきょうかもしれません。でも、妻である私たちが望んだ事ならきっと、分かってくれる。そんな確信もあります。

 ただ一つ気がかりだったのは、エルフの美女たちから迫られた時のタケさんの対応でした。お酒に飲まれた状態で、他の子に手を出さないか。

 そこで、前もってエルフたちに情報を流しました。タケさんは巨乳が好みだと。

 エルフには死んだスライムを使った、偽装のバストを作る秘術があると聞いていましたから。それを利用できないか。迫られている最中に、その計画が瓦解がかいすればきっとタケさんは怒るでしょう。

 ウソとか人を騙すといった行為を嫌う人だから。

 タケさんの会社員時代の話で私はそれを知っている。

 だから――。

 私たちはそれを利用する事にした。

 タケさんを欺くようで、気は引けるけれど。サラフィナさんのために。

 キスまでいけばいい。もし、その先までいってもサラフィナさんなら許せます。

 とにかく既成事実を作る事が大事だいじです。

 責任感の強いタケさんなら、きっと受け入れてくれるから。

 ブラッスリーちゃんの強引な押しですら断れなかったのだから。


 きっと大丈夫。うまくいくはず。


「私はサラフィナさんの気持ちを知ってしまいました。だからこれでいいんですよ。アロマさんも四人の方が楽しいでしょ?」


「それはそうですが……」


「アロマさんには悪いと思っています。タケさんとの披露宴を先延ばしにした状態で、サラフィナさんを優先させたのですから」


「それは今さらですわね。ブラッスリーちゃんにも先を越されておりますし」


 アロマさんは最年長らしくいつも一歩引いてくれる。だからこんなわがままな作戦を立案する事もできた。二度目の結婚だからというのもあるかも知れないけど。いえ、そうじゃないわね。アロマさんは侯爵家の令嬢でありながらも、内気な性格だから。あまり自分を優先した考えをしない。

 良い意味で他人を慮る度量のある人。悪い意味では奥手で行動力に欠ける人。

 でも、大丈夫。そんなアロマさんをタケさんは愛するはずだから。


「ふふっ。強い男は先に手を出した者の勝ちなのじゃ」


「ブラッスリーちゃん、恋愛に勝ちも負けもないんですよ。特に私たち四人に序列はないんですからね」


 そう。私たち四人に序列はない。誰かが飛び抜けて愛情を独占する事のないように、しっかりと私が管理しなくちゃ。


「分かっておるのじゃ。本当に麗華は細かいのじゃ」


「ふふっ。それでいいんですよ。家の中で軋轢あつれきが生じるのはタケさんも望んでいませんからね」


 英雄色を好むというけど、タケさんはそれに当てはまらないと思う。でも、私たち四人で彼を助け、彼の子供を育てていく。そのために皆が仲良くしないとね。

 こんな考え方は、日本にいた時には考えられなかった。

 でも、ここは日本じゃない。

 生まれた子供に爵位を授け、爵位で序列が決まる世界。

 分家も多くなると思う。その時に、家族間の争いなんて絶対にダメだから。

 そのために、(じょせいじん)で力を合わせていかなくちゃ。

お読み下さり、ありがとうございます。


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