第140話、タケ、LIVE配信で報告する。②
「えっと、それで何か用でしょうか?」
『はい?』
もしかして用もないのに現れたのかよ。この女神様は!
「えっと、生配信中なんで、用がないなら消えてくれませんか?」
『………………』
ゲスト:タケちゃん、なに独り言いってんだよ!
ゲスト:それよりブラッスリーちゃんに質問! 何歳ですか?
ゲスト:麗華ぁぁ、俺の麗華ぁぁ! はぁはぁ。
タカト:上の人、ブロック決定だな。さっきのも君だろ。調べは付いてるぞ。
ゲスト:タカトさん。勘弁してあげてよ。
全く何しに来てるんだか……。まぁ、リスナーに見えないならいいか。
「麗華さん、剛人さんに何かあったんじゃ?」
あらら、麗華さん。引っ切りなしに女神様と俺の顔を見比べてるよ。ブラッスリーも一切話さなくなったし。どうすんだよ。これ。
『二人とも、私の事は居ないものと考えて、気を楽にしてください』
それ言うなら消えてくれ!
「はぁ。それでは……お兄様、このたびブラッスリーちゃんと兄妹になりました。ブラッスリーちゃん、さっき教えた私のお兄様ですよ。ご挨拶してねッ」
「ブラッスリーなのじゃ。麗華にはいつも楽しませてもらってるのじゃ」
タカト:ほう、仲が良いようで何よりだ。麗華をよろしく頼むよ。
ゲスト:俺も頼まれてくれ!
ゲスト:俺も俺も。ブラッスリーちゃん守ってほしいのじゃ!
ゲスト:幼児に守られるとか……いいかも?
ゲスト:ブラッスリーちゃん、お姉ちゃんと呼んでいいからね!
はぁ。何だかなぁ。ここ俺のチャンネルだよな?
『あなたも大変ですね』
同情するなら時間をくれ!
『時空魔法は既に覚えているではないですか』
チッ。幅が広すぎてイメージが追いつかねぇんだよ。残念ながら。
「弱い男は嫌いなのじゃ」
ゲスト:おう……orz
ゲスト:竜より強い人間。こっちじゃいねぇから。
ゲスト:確かに。
それはどうだかな……勇者の強さを俺は知らない。ブラッスリーより強い可能性だってあるわけだ。現に、女神様は何も言ってこないからな。
「おっと、大事な事を言い忘れてたぜ。実は、女神様の依頼で、エルフの里へ行くことが決定しましたぁぁぁぁぁぁ!」
ゲスト:えっ、マジ?
ゲスト:やったじゃん。でもタケちゃん、エルフをナンパとかすんなよ!
ゲスト:おぉぉぉーサラフィナ、サラフィナ母に続いていよいよかぁ。
ゲスト:エリフィーナさんだっけ? あれはアニメのイメージから離れてないからな。胸の大きいエルフは居ないのか検証するべきだと思う。
ゲスト:Aカップ萌えにはたまらんのだが……。
ゲスト:そっちの世界ってさブラの普及率少ないじゃん。膨らみがないのはな……。
ゲスト:見せブラってヤツな。
ゲスト:全く男共ときたら。そんなに胸の大きい女がいいなら、彼女の胸にスイカでも入れなさい!
ゲスト:お姉さん、ここに来るヤツに彼女がいるとでも?
ゲスト:僕は既婚だけど何か?
ま、まぁ。人の好みはそれぞれだよな。えっ、何で麗華さんもブラッスリーも、女神様まで自分の胸を見てるの? 麗華さんは巨乳ではないけど、形も色もキレイだよ。ブラッスリーは……見てないからな。というか、服を脱いだ姿を想像するのは犯罪臭がしてチョットな。はうッ、女神様は――。
『私は何も言ってません。口を開いたら殺します。良いですね』
「…………………………」
『いいですね!』
「はひ……」
『分かればいいのですよ。うふふ』
ゲスト:それで、エルフの里にはいつ行くの?
ゲスト:そうそう。今から行け。LIVE配信のままエルフに突撃だ!
ゲスト:それもありだよな。
ゲスト:でも、結構離れてるんじゃないの?
ゲスト:ブラッスリーちゃんに乗せてもらえば余裕じゃん!
ゲスト:OH! その手があったか。
「残念じゃが、わらわはエルフの里には入れないぞ!」
「えっ、そうなの?」
あれれ……ブラッスリーに乗ってエルフの里に行ければ早いと思ったんだが、入れないだと……。麗華さんが残念そうじゃねぇか。まぁ、麗華さんの場合は一緒に旅行できる事を楽しんでる感じだけど。
「うむ。エルフの森は竜族が入れないようになってるのじゃ。迷いの森と言われる由縁でもあるのだが、上空から近づいてもエルフの里へは入れぬのじゃ」
「という事は……地上から行くしかないと?」
「まぁ、そういう事になるのじゃ」
「まぁ。それなら……地上から一緒に行けるんじゃないの?」
俺も麗華さんと同意見だ。上空から入れないのなら、近くまで空路で行ってイムニーを使えば……。ブラッスリーも一緒に行けるんじゃないのか?
「うーむ、それは多分無理なのじゃ。わらわも一緒に行きたいのじゃが……昔の取り決めがあるのじゃ。お互い不干渉というヤツじゃな」
不感症?
『あなたの頭にはそれしかないのですか!』
はい。すみません。
ブラッスリーの話を要約すると、昔、竜族の長とハイエルフが決めた取り決めで、エルフの森へは近づくなといった契約があるそうだ。取り決めができる前、竜同士のケンカをエルフの森で行って森を半壊させたのが原因だとか……。
竜ならやりかねない。碌な事しねぇな本当に。
「そういう訳で、わらわは侵入する事は許されておらぬのじゃ」
「うーん、残念ですね。せっかくブラッスリーちゃんと一緒に行けると楽しみにしてたのに……」
まぁ。そんな理由なら仕方ないな。ハイエルフと話してみて、ブラッスリーの入森許可が出ればいいけど。ダメだと迎えに来てもらう事もできなくなる。森を大切にするエルフだから難しいか……。
ゲスト:話は聞かせてもらった! それならブラッスリーちゃんを異次元に入れて行けば!
ゲスト:おぉぉ、その手があったか。
ゲスト:でも異次元の座標とかどうすんの?
ゲスト:確かに……タケちゃんが移動して魔法を解いた時にどこに現れるかわかんないよね。
おいおい、好き勝手言ってるけどさ。異次元がどんな場所だか知らないから言えるんだぜ。あんな宇宙空間に何時間も待機してろって言うのは……苦痛だ。
そもそも、そんな手がバレたら、余計に竜族とエルフの仲が悪くなるんじゃないのか。いくら俺が女神様の寵愛を受けてるとは言ってもな。
さっきから涼しい顔で俺たちを見てる女神様を見ると。あっ、目が合った。
『私はエルフと竜が決めたことには不干渉ですよ』
ですよねぇ。今回、俺に力を貸すのも堕天使の件があるからだ。だから、これまで一度も姿を現さなかったんだろうからな。
リスナーからお土産頼むぞ! ってメッセージを多数もらったし。全てのカメラを総動員して撮影しないとなッ。そうと決まれば、今晩は早く寝るか。
お読みくださり、ありがとうございます。